16話・雷魔法、隠してる理由がダサい? それがどうした、俺は隠したいんだよ!!
如月家の屋敷内にある16畳の客室。
座布団の上に座るトバリは、対面に座るシオンへ目を向けた。
「あくまで俺個人の意見として聞いてくれよ」
「わかっている! それでお前はなんで雷魔法や金眼を隠すんだ?」
「ああ。まず目の話をする前に俺の体感として『出る杭は打たれる』の同調圧力を強く感じるんだよ」
トバリの呟きにシオンが首を傾げた。
「……トバリは何を言っているんだ?」
「んー。言いづらいんだけど、中学校で異物をハブったり、イジメの対象にしたのを見たんだよ」
「いじめて来たらぶちのめして先生に突き出せばいいだろ」
「解決案が物騒すぎる!?」
唖然とするトバリにシオンがため息を吐く。
「トバリは考えすぎなんだよ。それに力を見せつけたら、相手も下手に手を出さないだろ」
「一理あるけど、それをやったら今度はクズどもが絡んできそうなんだよな」
「それはある。わたしが通うお嬢様学校でも、陰湿なマウントの取り合いやイジメはあるぞ」
「なるほど……。って、話をずらしてごめん」
トバリは申し訳なそうに謝り、シオンが真面目な表情を浮かべた。
「別にいい。それで、さっきの話的にトバリは『周りから浮かないようにしたい』んだな」
「そういうこと。後は金色の目で覚醒者とバレたら、嫉妬されたり、変なやつに絡まれるだろ」
「あのな、そっちを先に言えよ!」
「ええ!?」
戸惑うトバリにシオンがジト目を向ける。
「お前は考えすぎだし、もっとストレートに要約して話せ!」
「あ、はい」
シオンがキレ気味に叫ぶと、トバリが頭を下げた。
「ったく、で! トバリが金色の目を隠すのはわかったが、どっちにしようが強くなったら目立つだろ」
「ああ、実はな……。最初は雑魚のフリをして、いじめてきた奴らを隠れてフルボッコにして徹底的に潰す裏の実力者に憧れていたんだよ」
「性格悪すぎるだろ!?」
「まあでも、あくまで俺個人の厨二妄想で実際の理由は別だけどな」
「お、おう! 貴様はたまにおかしくなるよな」
軽く息を吐くシオンにトバリがニヤリと笑う。
「俺だってガキらしくしたいんだよ」
「おい! わたし達は14のガキだろ」
「確かに……。それで話を戻すけど、俺が鍛えているのはやり込み勢の自己満だな」
「は? どういうことだ?」
トバリの発言にシオンが固まった。
その姿にトバリが頬を引きつらせながら、メガネを触る。
「シンプルに、能力がある、やりこんでレベル上げしたい、強くなったら金を稼いだり気持ちに余裕ができる、以上!」
「ゲームみたいな考えなのは理解できるが、さっぱりわからん!」
「だろうな……。ちなみにやり込む過程のレベル上げが特に大好きだぞ」
「現実をゲームみたいに言うなよ!?」
〈ああ、この世界がまだゲームの世界に近いと思い込んでたところがあったかな〉
シオンのツッコミに、トバリが考え込むように口元へ手を置いた。
「まあでも、俺は努力は大嫌いだけどやり込みが好きなんだよ」
「え? トバリ、貴様がやって来た訓練や実戦は努力じゃないのか?」
「うん。一般的には努力かもしれないが、俺にとってはやり込みなんだよ」
「そ、そうか。やっぱり貴様は変人だな」
「お前には言われたくない」
互いに苦笑いを浮かべ、同じタイミングにお茶を口にした。
ホッと胸を撫で下ろしたシオンが、真剣な目でトバリを見る。
「トバリのことが少しわかってよかった」
「そうかい。で、俺にだけ語らせるのは不公平だよな?」
「まあな。で、トバリはわたしに何を聞きたいんだ?」
「別に何もない!」
「貴様ぁ!? 急にスカした発言をするな!」
シオンが叫び、トバリがため息を吐く。
「いやだって、お前はかなり単純でわかりやすいだろ」
「トバリが複雑なだけだ! って、貴様はもう少しわたしを丁寧に扱えよ!」
「やだ」
「よし、戦争だな」
キレ気味に立ち上がったシオンに、トバリがジト目を向ける。
「雷魔法を使うぞ」
「ごめんなさい!!」
トバリが右手にバチバチと雷魔法を纏わせると、シオンが土下座した。
「これで解決だな」
「ひどい解決方法だけど! って、なあトバリ、さっきの努力とやり込みの違いってなんだ?」
「あー……。俺としては努力は『自分で選んでないけど必要なこと』で、やり込みは『自分で選んで好きだから続けること』だな」
「そういうことか! それとトバリはわざと複雑に話していたのか?」
「さあな」
軽く微笑むトバリに、頭を上げたシオンが不機嫌そうに頬を膨らませる。
「貴様は性格が悪いぞ」
「お互い様だ。なあシオン、風呂に行きたいから着替えを用意してくれない」
「それはいいんだが、わたしも一緒に入っていいか?」
「……ルナさんが泣くぞ」
「たぶん母上なら問題ない」
シオンが満面の笑みで胸を張り、トバリがドン引きする。
「悪いが、俺は年上好きだから断る。てか家族以外の異性と風呂に入ろうとするなよ変態!」
「悪い悪い。本気だったけど今はやめとくよ」
「そこは冗談にするところじゃない?」
楽しそうに笑うシオンをよそに、トバリが頭を抱える。
〈やばい、シオンがガチで怖くなって来た……〉
7月なのに寒気を感じるトバリは、顔を真っ青にする。
「なあトバリ、抱き枕にしてもいいよな」
「そのネタはもういい! 俺は1人で寝かせて欲しい」
「やだ」
「お前……」
シオンの拒否にトバリが頭を抱えた。
〈コイツはもうダメだ。こうなったら明日の日曜日は、どっかに逃げるか?〉
トバリは現実から目を逸らしながら、明日の行動プランを考え始めるのだった。




