↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/40

13話・シオンさん、なんで強敵に突っ込むの?

 如月訓練施設内にあるシミュレーション施設。

 鉄筋コンクリートで作られた建物は5階建でショッピングモールくらいの広さがある。  

 3人は1階のエントランスで受付した後、セキュリティカードをもらい割り当てられた305号室に向かった。


「マジで如月家は金持ちだな。てか、部屋も広くない?」

「まあね! それで河原さんはここでどんな訓練をするんだ?」

「一応考えているのは、魔物のホログラムを相手に戦闘経験を積むことだね」

「戦闘経験なんて殴り合えばよくない?」

「「よくないわ!?」」


 シオンの疑問にトバリと河原が突っ込んだ。


「お前はどんだけ模擬戦が大好きなんだよ!!」

「いやだって、殴り合いってテンションあがるぞ」

「あ、うん、トバリ君。シオンさんのことは置いておこうか」

「そうですね」


 ドン引きするトバリ達は、荷物カゴにリュックを入れて部屋の中にある待合所のソファーに座る。


「あのな、その言い方だとわたしが頭のおかしい人に見えるだろ」

「いや、実際そうじゃないか?」

「うぐっ!? よ、よし、河原さん、まずはわたしがやってもいいか?」

「念のために聞くけど、模擬戦じゃなくてシミュレーションだよね」

「当たり前だ!」


 バツが悪そうに目を逸らすシオンに、河原が苦笑いを浮かべた。

 シオンが木刀ではなく、真剣のアイアンカタナを左腰に装備してから待合所を出てフィールドに上がる。


〈待合所にウォーターサーバーがあるのは便利だな〉


 トバリは紙コップに水を注いで飲む。

 そんな中、シオンが壁際にあるタッチパネルを操作し始めた。


「これでよし!」

「ん? シオンは何をしているんだ?」

「ああ! わたしが戦う魔物を選んでいたんだよ」

「なるほど……。それで何を選んだんだ?」

「ゴブリンソードマンに決まっているだろ!」

「は?」


 シオンの選択にトバリが固まった。


「いやいや!? お前、また死にかけるぞ!」

「トバリ君。シミュレーションだから攻撃を受けてもめっちゃ痛いだけで済むよ」

「それなら安心か……?」


 河原の説明にトバリが首を傾げる。

 魔物選択を終えたシオンは部屋の奥を見ると、ホログラムでゴブリンソードマンが生成されていく。


〈シミュレーションのソードマンが青月山と同じレベルなら、原作の負けイベレベルのヤバさだよな……〉


 待合所のソファーに座るトバリは姿勢を直す。

 フィールドにいるシオンがアイアンカタナを引き抜き、中段に構えた。


「こい!」


 ホログラムが実体化したソードマンの咆哮。

 特殊な強化ガラスが少し震え、外の待合所にいるトバリが冷や汗を流す。


「大丈夫なのか?」

「シミュレーションは安全装置もあるし大丈夫なはず……。ただ、オレでもソロなら苦戦するソードマン相手にシオンさんが挑むとはな」


 トバリの隣に座る河原が、興味深そうに笑う。


「グオオォ!!」

「面白い!」

「ええ……。なんでアイツは元気なんだ?」


 ソードマンは右手に片手剣を持ち、切先をシオンに向けた。

 対するシオンは頬を吊り上げ、刀を中段に構えながら突撃する。


「はああ!!」


 障害物が何もない白いフィールド。

 シオンがダッシュで突っ込み、刀で横薙ぎを放つ。

 その一撃をソードマンが片手剣で軽く受け止め、力任せに弾き飛ばした。


「がっ!? や、やっぱり、こいつは強いな!」


 地面に転がったシオンはすぐさま顔を上げた。

 ソードマンはドスドスと足音を鳴らしながらシオンに接近する。


「グオオオオォォ!!」


 叫び声を上げるソードマンが、片手剣のグリップを両手で持ち振り下ろす。

 シオンは振り下ろしを自分の右側に転がって回避した後、反撃の横薙ぎをソードマンが籠手でガードした。


「ゴッ!」

「相変わらず、その籠手は硬いな!」


 刀の刃と籠手がぶつかり合いガンッと鈍い音がフィールドに響いた。

 待合所でシオンの戦闘を見るトバリは、口元に手を置く。


「アイツ、押されてはいるけどソードマンに瞬殺されてないな」

「たぶんだけど、ソードマンはまだ準備運動中で遊んでそうだね」

「そこまでシミュレーションで再現できるんですか?」

「最近バージョンアップしたおかげで、さらに本物に近くなったよ」

「な、なるほど……。技術の進歩ってすごいですね」


 苦笑いを浮かべるトバリに、河原が息を吐く。


「まあな。っと、そろそろ舐めプが終わりそうだ」

「え?」


 河原の一言にトバリは口を大きく開けた。

 するとソードマンは容赦なくシオンを蹴り飛ばした。


「ぐっ!? やっぱりこいつは強い!」


 腹を蹴られたシオンが床に尻餅をついた。

 そのまま立ち上がったシオンが、お腹を左手で抑えながら後ろに下がる。


「グオオオオォォ!!」


 ソードマンの気合の入った叫び声に、シオンの頬を汗が伝う。


「まずいな……」


 シオンが刀を中段に構えた瞬間、ソードマンが片手剣に赤い光を纏わせる。


〈ゲームの時は便利な練習施設と思っていたけど、リアルのシミュレーションって技術がすごいな……。ってあれは武技の光だよな〉


 ソードマンがニヤリと笑い、床を踏み締めた。

 その瞬間、ソードマンの体が高速で動き、シオンの前まで到達する。


「チイイィ!」


 シオンはタイミングよくしゃがんで、ソードマンの武技・ソードストライクを避けた。

 だがソードマンは容赦なく、追加の蹴りでシオンをもう一度吹き飛ばす。


「あがっ!? ま、まだ終わってないぞ!」


 なんとか受け身をとったシオンが、歯を食いしばりながら立ち上がった。

 その姿にトバリが目を光らせる。


「アイツ、バカだな」

「トバリ君、君もたまにはシオンさんみたいにバカになるのもいいかもね」

「ええ」


 どこか嬉しそうにトバリが微笑んだ。

 トバリの目にはソードマンにボコボコにされても、気合いで立ち上がるシオンが写っている。


「シオン! 1発くらいはソードマンに攻撃を当てろよ!」

「わかっている!」


 シオンの力のこもった返答に、トバリがニヤリと笑う。

 

「グオォ!!」

「こいよデカブツ!」


 2メートルほどの筋骨隆々のソードマンに対して、シオンは真剣な顔で斬りかかった。


〈いけシオン!〉


 トバリは内心で応援していると、シオンが気合のこもった斬撃を放った。


「戦華!!」


 シオンが刀に青白い光を纏わせ、振り抜く。

 強い光を放つ強力な斬撃が相手に届いたが、ソードマンは余裕そうに戦華を片手剣で受け止めた。


「「……え?」」

「やっぱりこうなったか」


 固まるトバリとシオンを見た河原がぎこちない笑みを浮かべた。

 ソードマンはシオンの顔面へ左ストレートを直撃させた。


「へぶし!?」


 顔面を殴られたシオンは鼻血を出しながら地面に倒れる。


「「ええ……」」


 待合所で見ていたトバリと河原が唖然とする中、決着がついたのでソードマンはいい笑顔で消えていった。


「ゴブッ!」

「アイツ、無傷で帰っていったな」


 戸惑うトバリの目には、地面に沈んだシオンがいた。


「く、悔しい!! もう一度、やらせろ!」

「待って待って!? お前は鼻血の手当てをしろよ!」

「トバリ!?」


 トバリはフィールドに入って、暴れるシオンを強引に引っ張りだした。

 その後、怪我をしたシオンの手当てを2人がしていく。


〈こいつみたいにバカになるか〉


 トバリは、河原に言われたことを頭の中で考えるのだった。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。