↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/27

第26話 小さな酒盛り

 「準備出来たぞー」


 テーブルに所狭しと盛られた、色鮮やかな料理が食欲をそそるわね。


 凜ちゃんは、待ってました、と言わんばかりに、ダッシュで席に着くと、まあるいミートボールを一口頬張り、


 「パパ、すっごくおいしい!」

 「おっ、それ、俺の自信作なんだ」


 この手の食材は、今なら冷凍食品でも、しっかりした物があるのに、考君は、一から作っちゃうなんて、主夫のスキル、高すぎ、ふふ。


 考君は、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、専用のグラスへ上手に泡を立て、


 「お疲れ様、ってか」


 一口、喉を潤すように飲んで、一気に飲み干すと、


 「かー、悪魔的だぜ!」


 もう、漫画の影響かしら。


 今にも、顎が尖るような顔しちゃって。


 「いいなー、僕も、僕も」

 「凜には、これな」


 そう言って、炭酸が入った、瓶ビールを一回り小さくした、子供向けの、泡ビール風のジュースを渡すと、凜ちゃんは嬉しそうに、アルミキャップを取り、考君を真似るように、綺麗にコップに注ぐと、


 「プハー!」


 可愛らしい声で、上機嫌になると、


 「ヨッ、大将、いい飲みっぷり!」


 考君が囃し立てると、凜ちゃんテンションマックス。


 身体を小刻みに動かして喜んでいる。


 ふふ、将来が楽しみね、ちょっと心配だけど。


 二人の夕食は、賑やかで、あっという間に過ぎていった。


 食事が終わり、二人で後片付けを終えると、ソファに腰掛け、最近出たばかりのゲーム機を起動する。


 ゲームは一日一時間なんて、昔、何とか名人のオジサンは言ってくれたけど、約束を守る子なんていないわよね。


 考君は、対戦型ゲームを起動すると、メンバーが集まるのを待っていた。


 「パパ、今日は新しい武器、使えるんだよね?」

 「おお、ちゃんと買ってあるぞ」


 買う?ああ、ゲームのこと。


 これ、今、すごい人気があるわよね。


 考君、凜ちゃんにせがまれて、ゲームキャラクターがプリントされた、お弁当箱とお箸、揃えるのにも苦労してたし、大人も熱中するゲームかぁ、私も、やったら嵌まったかしら?


 代わり番こに、コントローラを渡して、対戦を楽しんでいると、一時間は短いくらいね。時計を見て、考君が、


 「じゃ、凜、次は宿題だな」

 「もうちょっと、やりたーい!」


 凜ちゃんは、プーッと頬を膨らませるが、考君は、


 「約束、だろ?」

 「うー」

 「凜が勉強してる時は、俺もゲーム、やーらない!」


 そう言って、電源を切ると、凜ちゃんの頭をポンと、優しく撫でて、宿題のドリルを、ソファの前に置かれたテーブルに広げると、凜ちゃんも納得したのか、素直に問題を解いていく。


 ふふっ、子供を説得するには、見本となる大人が、態度で示さないと納得しないって、ちゃんと解ってるのね、あなた。


 一度集中すると、凜ちゃんは、出された宿題を、もの凄い速さで終わらせていく。


 すごいわね、ホント。


 「終わったー」


 全ての宿題を終えると、凜ちゃんは嬉しそうに考君の顔を見る。


 「よく出来たな、寝る一時間前まで、やってよし!」

 「わーい!」


 寝る前まで、楽しく遊び、一日は終っていく。


 ベッドで仲良く、川の字、あっ、私が居ないから、川じゃないか。


 う~ん、ハの字?仲良く寝息を立てる、二人の顔を見ながら、私も静かに目を閉じる。


 西暦2018年 7月21日 土曜日 日本


 祭りの初日、早朝5時から、旗揚げの為、地域の氏子達が集まっていた。


 考君と凜ちゃんは、朝が早いというのに、目がパッチリとして、近くにいた、同じ組のオジサン達と、楽しく話している。


 「凜坊、朝から元気だな」


 そう言って、煙草を吹かしながら、色付きのサングラスを掛けた、厳つい強面の中年男性が、無造作に、凜ちゃんの髪を撫でると、


 「正男(まさお)オジチャン、おはよー」

 「おお、おはようさん」


 恰幅がよく、どう見ても、その筋の人間にしか見えない男性に、凜ちゃんは、臆することなく、満面の笑みで応えた。


 「正男さん、お世話になります」

 「ああ、こっちも頼むぜ、孝太郎」


 なんてね。


 正男さんは昔から、この地域を仕切る、最古参の纏め役で、その風体もあって、ヤンチャな子達からしたら、本物以上に怖がられる存在だけど、とっても懐が広くて、温かい方なのよね。


 私も随分、お世話になったもの。


 「オジチャン」

 「おっ、どうした、凜坊?」


 凜ちゃんが、正男さんの、大きな足にしがみつき、


 「僕も幟揚げ、手伝って、いい?」

 「……」


 流石に、子供が手伝うには、危険を伴う作業の為、正男さんは、困った顔をするが、少し考えて、


 「幟揚げには、身長が、な」

 「えー」

 「それ以外なら、いいぜ」

 「ホント!」

 「手先が器用な凜に、打って付けの仕事があるぜ」

 「いいんですか、正男さん?」


 本来は、祭りの見学の為、凜ちゃんを連れて来た考君は、申し訳なさそうに、正男さんを見ると、


 「次の世代に、物を教えるのも、年寄りの仕事だぜ」


 正男さんは、ニカッと笑うと、口から煙草が落ちそうになり、


 「おっとっと」


 慌てて煙草を掴む。


 その何とも言えない、愛嬌と人となりは、この地域を守る、無くてはならない存在です。


 「んじゃ、始めるかね」


 正男さんの号令で、西組の氏子が一斉に集まると、旗を揚げる前の段取り作業を始める。


 効率良く旗を大きな旗竿に通し、準備を終えると、立て掛けた旗竿に、氏子達が一列に群がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。