↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/27

第19話 議会招集

 全員がロビー中央のポッドに集まると、フレンはシステムを起動する。


 激しい点滅と共に、視界がぼやけ、真っ白な世界に包まれていく。


To be continued


◆◇スティーブ・F・バーゼル◆◇


 西暦2XXX年X月X日 某所


 「所長、議会の招集メールが」

 「ああ」


 サーシャは自分の端末から、スティーブの端末へ、指をスワイプすると、立体映像の手紙が、スティーブの頭部を透過して、端末に表示される。


 サクッと、刺さったような感覚に、


 「遊ばないの」

 「ふふ」


 たわいのないやり取りを済ませ、スティーブがフォルダを開けると、難解な議題内容と、分析データ、それに付随する、大量のテキストが開示される。


 「おっとっと」


 複数のウィンドウが、引っ切りなしに開かれ、整然とされた空間を埋め尽くす。


 スティーブは強制スクロールで、最小限、必要なページだけを残すと、


 「相変わらず、膨大なデータですね」

 「え?ああ、そうだね」


 サーシャは、議会に出席するための、ライセンスを持ち合わせていなかったが、スティーブが、これも勉強の一環だと、本人以外には、決して閲覧が許されない情報を、コッソリと、いや、我関さずと言った、セキュリティ意識の低さで開示していた。


 指のリングと連動する腕輪が振動した。同時に、電話の着信音のようなメロディーが流れる。


 「スティーブ所長。議会の時間、過ぎています」


 よく通る声だが、少し冷たい印象を与える女性の声が、急かす訳でもなく、事務的にそう言うと、サーシャが、頭に指で鬼の角を作ると、スティーブが笑いを堪えている。


 「見えてるわよ、サーシャ」

 「え!お、お姉ちゃん!?」


 サーシャの姉のリーシャが、眼鏡をクイッと直し、若干、眉毛をピクッとさせ、


 「早急に、お出で下さいね」


 一言、釘を刺すように念を押すと、通話が切れた。


 「……やってまった」


 頭を抱えて、サーシャは、地方の方言を発すると、


 「それじゃ、行ってくるね」


 スティーブはマイペースに、身支度を整えると、玄関の扉を開けようとすると、


 「ま、待って下さい、所長」


 サーシャは半ベソになりながら、縋るように、スティーブを見ると、


 「大丈夫だよ。リーシャ君の好物の和菓子、転送しておくから」


 姉には逆らえないサーシャは、般若のようなリーシャの形相を想像して、震え上がっていたが、スティーブの一言を聞いて、


 「出来れば、それにあったお茶も……」


 と一言、


 「はいはい」


 手を振って扉を開けると、ニコニコしながら部屋を出て行った。ハァッと、深いため息をして、サーシャは、スティーブの後ろ姿を見送った。


 スティーブがいる研究所から、議会が開かれる場所へは、直線で、相当な距離があったが、この時代では、各ステーション毎に、物質転送装置『ノア』によって、瞬時に移動することが出来た。


 本来は、主立った公共施設や、軍用施設などの、特定の場所でしか、設置が許可されない装置だったが、スティーブの研究所は、特例的に、ノアの私的使用を許されていた。


 「さて、と」


 手早く、所定のアドレスを打ち込むと、機械的な音声で、


 「ソレデハ転送シマス」


 アナウンスと同時に、スティーブの姿は、一瞬にして消え、その肉体は、議会場前のステーションへと降り立つ。


 身体が原子レベルまで分解される感覚は、この時代の人間には、差して違和感などなかったが。


 議会場の入口には、屈強な警備員と、その後ろには、セキュリティ軍用ロボットが、門を護る、仁王像のように鎮座していた。


 若い警備員の一人が、


 「所属と、IDの提示をお願いします」


 スティーブが、リングを差し出そうとすると、


 「結構ですよ、スティーブ様」


 もう一人の、白髪の老齢の男性が、そう言うと、


 「いいのかい?」

 「もちろんです」


 男性は機械を操作して、ゲートを開けると、


 「いってらっしゃいませ」


 と、深々とお辞儀をした。


 「あ、あの」


 若い警備員が、大丈夫かと、心配そうな表情をしていたが、


 「お前さん、あの御方を知らんのかい?」

 「え、その」


 今年、配属されたばかりの新人で、関係者の顔を覚える余裕がなかった男性は、困ったように、視線を泳がせていたが、


 「あの御方は、スティーブ・F・バーゼル様。この国の根幹を担う、最重要人物の一人じゃよ」

 「え!あの!」


 男性が驚くのも無理はない。


 自分の年齢と同じ、いや、年下ではないかと思えるほどの容姿に、


 「ほほっ、お前さん、今、自分より年下だと思っとったじゃろ?」


 と、面白そうに笑うと、


 「あの御方は、儂よりも、ずっと年齢が上じゃぞい」

 「え、ええ!」


 思わず、素っ頓狂な声を上げて、新人は目を丸くした。


 「で、でも」


 アタフタと、スティーブの後ろ姿と、先輩の顔を交互に見て、


 「ナノテクノロジーは知っておるな?」


 この時代の人間の寿命は、二十一世紀の人間よりも、遙かに長命だった。


 それは、医学と、科学技術の発展による、恩恵に他ならなかった。


 先程の年代の終わり頃に、著名な数人の研究者により、それまで、不治の病と称される、例を挙げるならば、癌などの、疾病の根治の為の特効薬が生まれ、さらには、ナノテクノロジーと呼ばれる、技術の実用化が承認され、人類から、病気と呼ばれる悪魔は消え去った。


 その後、ナノテクノロジーを発展させた技術により、細胞の老化抑制、生活の質を落とさず、健康な状態を維持することも可能となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。