第18話 偉人の血を継ぐ者
「俺、アイツと知り合いか?」
ボソッと一言、そう呟くと、アーチェよりも早く、フレンが、
「ははっ、キング、面白い冗談を言うね」
「!」
フレンは笑顔で、しかし、少し小悪魔な表情で応えると、キングは、その聴覚に驚きながら、アーチェは特段、驚きもせず、
「フレンの前で、ヒソヒソ話なんて、出来ないってのっ!」
と、芸人張りのツッコミを入れると、アーチェは、簡単に、キングの置かれた状況を、フレンに説明した。
「それは大変だね。父が経営する病院で精密検査をするかい?」
サラッと、フレンの家庭環境を垣間見ると、
「ヘッ、大丈夫だっての」
と、何故か、突っ慳貪な対応をするが、フレンは我関さず、と言った様子で、
「うん、解った。気が変わったら、何時でも声を掛けてね」
キランッと、フレンの周りに、星のようなエフェクトが現れたような気がした。
「さっすが、フレン、気が利くね」
アーチェは感心し、
「宜しくお願いします」
シフォンが一礼すると、
「よっ、フレン君、カッコイイー」
最後にクラインが囃し立てる。
一連の振りを見て、ムムッと、何故か、イライラを隠せないキングは、
「バトル、勝ったのかよ?」
話題を変えるように、フレンに尋ねると、
「ああ、なかなか手強かったけどね」
と、謙遜して答えると、後ろにいた、クランの一人が、
「よく言うよー。一度もリスポンに戻らなかったクセにさー」
「クレア」
クレアと呼ばれた女性は、悪戯っ子のように、ニヤニヤと、おちょくるように、フレンを見ると、
「無闇に武威を誇らない、謙遜は大事ですわ」
と、オットリとした口調で、もう一人の女性が、クレアの頬を抓ると、
「あたた、痛いってば、ミント!」
大した力など入っていないのに、大袈裟なリアクションを取ると、
「お主は子供か、まったく」
呆れたように、一際、大柄な男性がため息を漏らすと、
「レオンってば、相変わらず堅いなー」
クレアはブーッと、口を尖らせると、
「仲が良いですね」
シフォンがクスッと笑うと、
「まーね」
クレアが、フレンの背中に覆い被ると、
「熱いよ、クレア」
幼い子供をあやすように、身体を上下させる。
何とも、ほんわかとした空気が流れるなか、キングは、フレン達の風貌を見て、改めて、疑問に思ったことを脳裏で考えていた。
(敵対するキャラクターが、自然と同じフィールドにいるなんて、この世界は、俺の知っているゲームの世界と、少し違うかもしれないな)
キングは考え込んでいると、疑問に思ったことを、素直にフレンにぶつけた。
「フレン、少し、聞きたいことがあるんだが」
「うん?何だい」
フレンは真摯に、キングと正対し、
「俺の記憶が間違っていたら謝るが、その、俺達とお前達の種族は、太古の昔から、争ってきた関係だったよな?何で普通に、俺達と一緒の世界でバトルしてるんだ?」
直球だが、的を得た端的な質問に、フレンは臆することなく、
「ホントに、記憶が欠如しているみたいだね」
フレンは心配そうな表情をするが、キングの疑問に答えようと、掻い摘んで、
「確かに、僕達と君達との種族間では、争いは絶えなかった。けど……」
「けど?」
確信を突く答えを前に、キングは固唾を呑んで、フレンの言葉に耳を傾ける。
「僕の祖父である、ローエン大統領と、君の祖父の、ガイアス首相が、種族間の関係修復に尽力、和平条約を締結して、その戦いの歴史を終わらせたのさ」
「え!」
この世界に於ける、自分の祖先が、まさか、歴史を変えるほどの偉人だと解ると、キングは、素直に信じることが出来なかった。
(お、俺が、この国のトップの血を受け継いでるってことかよ、オ、オイ!)
チート級の待遇に、キングは思わず身震いした。
何とか平静を取り戻そうと、深呼吸をすると、フレンは付け加えるように、
「僕達の先祖が保有していた技術と、キング、君達の先祖が蓄えていた知識は、とても相性が良くてね。和平を機に、両者の技術研究者が手を取り合うことで、技術のブレイクスルーが起きると、人々の生活は、飛躍的に向上したんだよ」
「……」
最早、その言葉を疑問に思うことは無かった。
キングは放心しながら、しかし、とんでもなく、イカした世界に来たことに、心の底から歓喜したいた。
フレンは、キングが納得したことを確認すると、
「これから、どうだい?」
と言って、銃を構えた、ハンドサインを送ると、キングは、
「いいねぇ!いっちょ、やりますか!」
フレンと同じサインを送ると、
「待ってましたー!」
やっとバトルが出来ると、クラインは、その場で飛び上がると、
「プライベートルームを用意するよ」
フレンがスマートに、バトルの準備を進めると、キングは自分の装備を確認した。
「え?」
先程から、キングの装備を見て、違和感を覚えていたフレンは、その装備を見て、
「まさか、その装備で戦うつもりかい?」
「あん?」
やる気満々のキングは、水を差す、フレンの言葉に、
「当然だろ、悪いかよ」
「え、いや、でも」
流石のフレンも動揺する、キングの出で立ちに、困惑しながらも、
「武器は、君が得意な『アレ』でなくて大丈夫かい?」
心配げな、フレンなど関係無く、今すぐにでも、生のバトルをしたくて、我慢出来ないキングは、鼻を鳴らして、臨戦態勢のイケイケなテンションとなっていた。




