広島県:前編 広島のお好み焼きと牡蠣と婚約者候補:天草里緒菜
<登場人物>
名取界
名取一郎
名取撫子
名取雄一
名取佐那
白金クロエ
狛犬霧子
真柴百合子
真柴(母)
真柴(父)
新庄暮葉
天草里緒菜
「いらっしゃい、じいちゃん・ばあちゃん」
「元気そうね、界ちゃん」
「活躍は聞いてるぞ!メイド隊をコテンパンにやっつけたようじゃのう?」
広島県の拠点である森のコテージにおじいちゃんたちが遊びに来た。新幹線で広島県広島市にやってきて4日、Xでも呉の軍艦カレーや厳島神社の写真を乗せているので雄一さん側も俺が広島に来てることは気づいている。さらに前回エキスパートランクのメイドたちがコテンパンに返り討ちにあったので東京の別荘に在中しているマスターランク2名が参戦。最初は他のメイドたちに経験を積ませようとしていたみたいだけど。
「お待たせしました。本日の夕食は美酒鍋」
夕食時クロエさん・ロアが作ってくれたのは美酒鍋。美酒鍋は広島県のグルメで鶏肉、砂ずり、豚肉、野菜などを塩こしょう、日本酒のシンプルな味付けで食べる鍋。日本酒を使っているが熱でアルコールは完全に吹き飛ばすので未成年の俺でも食べられる。
「あれ?二人は座らないの?」
「いつもは3人で食べてるのかい?」
「うん」
「なら、二人とも一緒に食べましょう」
「わかりました」
クロエさん・ロアも椅子を用意してテーブルに座りお鍋を食べ始める。
「!おいしい。この風味が日本酒?」
「うむ、まさにそうじゃ。味も塩コショウだけだが中々うまいのう」
「こちらもお試しください」
クロエさんが差し出してきたのはポン酢・そうめんの出汁と柚子胡椒の2セット。
「ポン酢は鉄板だよね・・うん、日本酒の風味と相まってご飯が進む進む」
「柚子胡椒もまた味が変わりますね。日本酒の風味も柚子胡椒も和風なのでそうめんのつゆがマッチしますね」
おじいちゃんたちに岡山県での出来事を話しながら夕食は進む。
翌日
「おおお」
「わかるぞ。わしも何度も見たことがあるが見るたびに圧巻される」
「そうですね。世界が広いといえどこの建物はここだけですから」
おじいちゃんたちと一緒に来たのは広島県のTHE観光地原爆ドーム。崩れた建物は今もなお原爆の怖さを俺たちに伝えてくれる、よく見ると崩れているだけでなく高温で焼け黒ずんでいる。中学校やテレビでは聞いたり見たりしてるけど実際に見てみると全然違う。のんびり原爆ドームを見回っているとクロエさんが囁いてくる。
「界様・雄一様・鞘様。霧子たちがここにきているようです」
「ばれたの?」
「いえ、たまたま探索に来ていたようです。案内いたしますので次の場所に向かいましょう」
「わかった。お願い」
クロエが説明しながら、ロアが持っていたiPadを操作して付近の監視カメラの画像を見せてくれる。そこには確かに狛犬さんと明日香さんの姿が写っている。メイド服だからすごく目立ってるね。
二人の案内で原爆ドームから次の目的地に向かう。
ジュ― ジュ―
目の前の鉄板では豚肉とキャベツの焼けるいい匂いと音が響く。そこにソースが刷毛で塗られ、マヨネーズ・青のり紅ショウガが乗せられ
「はい、お待ち。熱いので気を付けて食べてくださいね」
俺たちの目の前にあるのは広島県のお好み焼きである広島焼き。薄く引いた生地に千切りキャベツ・中華麺・豚肉・天かす・生地の順で載せて行き、両面焼いた後ソースなどを塗って完成。ソースの焦げるにおいが食欲を刺激する。
ここはお好み焼きをメインに提供する店。店内はテーブルごとに鉄板が設置されており、注文すると店員が焼いてくれる。自分たちでも焼けるけどやはり本職のひとに焼いてもらった方がおいしいからね。
「ホフホフ、これが本場の広島焼き。内部の中華麺もしっかり味がついててキャベツもシャキシャキ。うまい」
「そうね。生地も薄いけどモチっとしてて美味しいわ。これは山芋かしら?」
「そうですね。おそらく自然薯を使ってるのかもしれません」
「お、姉ちゃん、よくわかったな」
店員のおじさんが答えてくれた。
「出汁の味もいいですね」
「自家製のあご(トビウオ)出汁使ってるからな」
「おじさん、お道焼きって何ですか?」
「尾道焼きは広島焼きの豚をいか天と砂ずりをいれたもんだね。いか天の海のうまみと
ずりの触感がいいアクセントになるだよ」
「海のうまみってことは味は日生カキオコに似てるのかもしれない」
「お客さん、岡山のカキオコ食べたことがあるんですね?私も勉強のために食べたことありますがあそこまで海鮮の味は濃くありませんね。でもカキオコにも負けないほどおいしいですよ」
「ならそれを一つ」
もう一つ商品を頼んで出来上がるのを待つ・・・
翌日
「お待たせしました。一応焼き方マニュアルは置いてありますがわからないことがあればお聞きください」
「ありがとうございます」
テーブルの上にたくさんの牡蠣料理が並ぶ。広島は牡蠣生産量1位、牡蠣専門店のお店も多い。今日来たのは個室でよっくり料理が食べられるお店。クロエさんとアロが金網の上に岩ガキを乗せてくれる。焼ける間に本化の料理を食べていこう。まずは定番のカキフライから。
「うまい。衣は少しパリッとしていて中身の牡蠣はふっくら。このトンカツソースがメインのソースにも合う」
「界ちゃん、こっちのポン酢につけて食べてみな。すこし七味のピリッとした辛味があるけど美味しいよ」
「こちらの里芋やカボチャなどの野菜の揚げ物もおいしいですよ」
次に食べるのは小ぶりの牡蠣・ほうれん草・エノキなどを使った和風パスタ。
ズルズルズル
「牡蠣は塩胡椒でしっかり味が付いてて、全体の味付けは醬油かな?でも何か違うような」
「これはオイスターソースも入ってますね」
俺の疑問に同じくパスタを食べていたクロエさんが答えてくれた。さすが料理のためにいろいろ味見してるだけあるね、一口で当てるなんてすごい。
「これがオイスターソースの味なんだ。この味付け他の具材とすごく合ってるね」
ジュ―
「岩ガキ、焼けたよ」
ロアが最後に網の上で醤油を岩ガキに垂らし、トングを使ってそれぞれのお皿に乗せてくれる。牡蠣は大きな貝の中で美味しそうに煙を出している。その香りは塩としょうゆのにおいが混じってとても美味しそう。おはしでつまんでみると牡蠣はプリプリ、
パクッ
口に含んでみると牡蠣のうまみとしょうゆの味が口全体に広がる。身は大きく二口で食べ最後に界の中にある汁も飲み干す。牡蠣のうまみや塩の風味・醤油の味などが染み込んですごくおいしい。もっと食べれそうだ。
「ここが宮島水族館ですね」
私の名前は天草里緒菜。今広島県の宮島水族館にやってきました。慣れないバス移動でしたが界様を探しましょう。
それは一目ぼれでした。私のおばである撫子さんは雄一さんと結婚して一人息子である界様を生みました。しかし雄一さんをよく思わない人たちが界様の誘拐を何度も企て、このまま身近に置いとくと危ないと感じ、親友である真柴家に界様を預けました。それから誕生日や行事などの映像が定期的におばさまたちの元に送られてきて、たまたま私が名取家を訪ねた小学3年生の頃初めて界様を見ました。その時の映像は遊園地で由利さんと遊んでいる時の映像で、由利さんの口についたソフトクリームをぬぐっている姿にドキッと胸が弾みました。
それ以降撫子さんに頼み界様の映像を見せてもらい、このドキッとした感情が恋だと知りました。実際に会ってみたいと思いましたが撫子さんが我慢しているのに会いに行くのは悪いと思い我慢しました。そして中学3年生の時やっと敵対勢力の処理を終えた雄一さん・撫子さんが界様を引き取りました。
そして界様の婚約者を探す大会が開かれました。この大会が開かれることは私含め一部の名取グループ関係者には早期に伝えられていました。もちろん大会のルールとかではなくこのような大会があるということですが。
名取グループは歴史も実績もある有名グループ。その一人息子である界様の婚約者には様々な能力を持っている人が必要ということでこの大会は開かれるようです。参加者には玉の輿や様々な目的で参加している参加者もいますが私は界様の恋心を自覚してから様々な花嫁修業を行い努力し続けました。無事予選をクリアして本戦にたどり着いたのですが界様が名取島の屋敷を脱出し行方をくらませてしましました。
どうやら何か雄一さん・撫子さんに不満があるらしく名取グループに向けて全国規模の鬼ごっこを企画してきました。大多数の人は驚いていましたが確かに界様は今までの映像からもどうしても我慢できない時は行動に移してました。なので私自身としてはこの行動に驚きはありませんでした。
界様の鬼ごっこの説明として名取グループの関係者なら参加していいと言われたので私も参加することにしました。しかし両親からこれも人生の経験として宿泊地の予約や井戸手段の確保など探索にかかわる事柄は私自身で行うことと言われました。電車やバスなど移動手段の予約やホテルなどの予約などは天草家の従者の方に今までしていただいていたのでこれらすべて初めての経験でした。おそらくお父様・お母様も私がこれらの事柄について知らなかったのでこのような制限を付けたのでしょう。
細かいやり方についてはアドバイスは聞いてもいいと言われたので、まずは最初に界様がいるであろう岡山県の岡山駅に向かうための交通手段から。使用する交通機関・乗り換え時間・乗り換える番線・もし乗り遅れた時の対策などいろいろ考えることがあります。ネットで買う方法や実際に券売機や受付で買う方法など見えないところで従者に人々は支えてくれていたんですね。
岡山駅までは電車と新幹線を乗り換えて向かいます。初めての一人での旅行ということで仮に一本乗り遅れても大丈夫なように計画を立てていきます。一応GPSや遠くから家の者が警備してくれますが基本一人で行動します。
それから幾度か失敗を繰り返しながら何度も界様を探す旅行に出向きどうにか電車・バス・タクシー・飛行機などの交通機関の使い方は学びました。ホテルの選び方や予約の仕方・料金プランの味方なども学びました。
現在界様は広島県に滞在している模様。前回の岡山県の滞在期間を考えるとまだいるはずです。Xのツイートからまだ行ってないである場所を探しており、今日は廿日市市の宮島水族館で捜索することにしました。ですが
「うえーん」
泣いている女の子を目の前に困り果てています。水族館の入り口で泣いている女の子を発見し
「どうしたのかしら?」
「うわーん」
話しかけるとより泣いてしまいました。ここは受付から視界になっており、店員を呼ぶこともできません。あたふたしていると隣から女の人が出てきて座り込み犬のぬいぐるみを右手にはめると
「僕の名前はワン吉。君の名前はなんだワン?」
とぬいぐるみの手足を動かし会話を始めます。女の子は突然現れた犬のぬいぐるみに興味津々で泣き止んで名前を教えてくれました。突然現れた女の人の名前は戸締孤世さん、大学一年生で岡山の観光をしているそうです。今日は水族館を見に来たところ泣いている女の子と私にあったそうです。
私と孤世さんは女の子を親御さんの元に送り届けた後、一緒に水族館を見回ることにしました。
「これがスナメリね。大分大きいわね」
「イルカなのに背びれが無いんですね?」
「そうね。ジュゴンに似たネズミイルカ類という分類で小型のクジラなんだって」
「イルカなのにクジラなんですか?」
「そうよ。だって分類上はイルカはクジラ類に含まれるからね」
「知らなかったです」
「でもこの水槽、さっき見たいやしの海に比べて質素ね」
「そうですね。美ら海水族館のジンベエザメや他の大きい魚の水槽も質素でしたね」
確かになぜでしょう?海藻やサンゴを設置していると壊されて汚れるからでしょうか。スナメリの水槽を後にして次に向かったのは海の神秘。ここでは部屋全体を暗くし日中は砂やサンゴに隠れている夜行性の生物や発光性生物などが展示されている。その中でもひときわ異彩を放っているのは
「何かすごいわね」
「はい。こんなにきれいに立つんですね」
私たちが見ているのは水槽に垂直に立つ銀色の魚:太刀魚。体を揺らしながら直立を維持しているのはなぜなのでしょう?
「太刀魚にとってはこの体制が楽なのかもしれないけれどね。それかこの姿が太刀魚界ではトレンドなのかもしれない」
孤世さんの答えにちょっと笑ってしまいました。他の展示物を見ながら周囲を確認してみますが界様の姿は確認できません。携帯を確認しても名取グループから界様発見の連絡はありません。どうやらここには来ていないのかもしれません。
「どうしたの?里緒菜ちゃん」
「いえ、次はボルトペンギンを見に行きましょう」
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