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瀬戸内ロワイヤル  作者: アマテン


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4/8

岡山県:後編 婚約者候補:新庄暮葉と明かされる界の実力

<登場人物>


名取界

名取一郎

名取撫子

名取雄一

名取佐那


白金クロエ

狛犬霧子


真柴百合子

真柴(母)

真柴(父)


新庄暮葉

私の名前は新庄暮葉。今年から高校一年生になるんだけど中学3年生の秋ごろ両親にある大会に出てほしいと頼まれたの。その大会は名取グループの婚約者を全国規模で見つけるというやつ。私の親は日本を中心に世界でスポーツ専門店を展開している新庄グループの社長と社長秘書。世間でいうお金持ちなんだけど両親からは恋愛は自由にしなさいと言われ婚約者などは決められていなかった。じゃあなんでこの大会に出てほしいと言ってきたかというと面白そうだしいい経験だからだって。父さんたちこういうところがあるんだよね。


 一応大会のこと調べてみたんだけど

・大会は4つのステージに分かれており、すべてクリアすることで名取島で行われる本線に参加できる

・いつでも参加を取り下げることは可能で、大会の参加・不参加で仕事の関係性は変わらない。例えば不参加だからと言って仕事の契約が減ったり、本線に参加したからと言って仕事の契約は増えたりしない

・第一ステージをクリアすると希望するなら婚約者となるであろう名取界の名取島での生活の動画を見せてくれる。


 他にも細かいルールはあるけど重要なのはこのぐらい。大会パンフレットには名取界君の写真も載っていた。第一印象は優しそうだしそこまで嫌悪感はない。それにいつ参加を取りやめてもいいらしいし、確かにいい経験にはなりそうだから参加してみようかな。


 そして大会に参加することを決めた私。いろいろあったけどなんと本戦に参加することに。本戦なんだけど名取島で1年間過ごし、その間の生活やイベントで界君にPRして彼の心をゲットした人の勝ちだって。もちろん風紀やモラルは守ってね。本線参加中学生の参加者は特別カリキュラムを進めることで、もともと通う学校で一年間授業を受けたものとして記録されるサポート付き。ここら辺はさすが名取グループ。いろいろ準備を進めてたんだけど・・・


 なんと界君が名取島から家出しちゃった。すぐに私たち婚約者候補の面々は名取雄一さんに呼ばれ事情を説明される。界君は婚約者候補の話を聞いた夜、監視の甘い橋の整備用の通路を抜けて家出した。名取家の屋敷の部屋に残された手紙には全国規模の鬼ごっこをしようと残されていた。手がかりとして界君が用意したXのアカウントに立ち寄った場所のヒントをツイートするんだって。


 大会だけど界君がいないと進まないから彼が捕まるまで予定は中止。もし彼の捜索に協力してくれるならクレジットカードを渡すので移動費や宿泊費などに使ってくださいだって。候補者の中には財政に差があるので、お金が無くて捜索ができない状況にしたくないのね。おそらくお金の使い方なども婚約者の適正として見られているのかもしれない。

  

 私はもちろん捜索に参加。基本的に月~木までは学校で授業を、金~日曜日は界君の捜索へ。Xの情報から界君は岡山県の観光をしながら逃げているみたい。ただ名取家の調査隊が岡山県内のホテルなどの宿泊施設には聞き取り調査をしているが目撃情報は全くなし。私も界君が立ち寄った場所をマッピングしてみたけど完全にランダム。ひとつわかるのは一度食べた料理はXに登校しないみたい。ならそれを狙っていくしかないわね。


 今日狙うのは牡蠣を使ったお好み焼き『日生カキオコ』を食べられるお店。備前市日生町にあるから岡山駅からJR線に乗り換えて日生駅まで行かないと。昼頃新幹線で岡山駅に着き、日生駅への路線を探していると


「おばあちゃん、大丈夫?」


 通路で座っているおばあさんに話しかけている女の人がいる。あ婆さんは女の人の質問に時々うなづいているがその場からは動けないみたい。女の人は立ち上がると周りの人に声を掛ける。


「すみません。だれか手伝ってもらえませんか?」

「どうしたんですか?」


 私が声を掛けると


「おばあさんの体調が悪そうなの。駅員さんを呼んでくるからここで様子を見ててくれない?」

「わかりました」



 それから駅員が来ておばあさんを頼むと女の人に改めてお礼を伝えられる。彼女の名前は戸締孤世さん、大学一年生で岡山の観光をしてるんだって。今日は私と一緒で日生カキオコを食べるために来たんだって。これも何かの縁てことで一緒に食べに行くことに。お店につき日生カキオコを待っていると孤世さんがふと思い出したように話かけてくる。


「そういえば暮葉ちゃん、どこかで見たことがあるのよね」

「多分テレビの企画だと思いますよ。婚約者を決める」

「ああ、名取グループの奴か」


 実は婚約者候補を決める大会なんだけど総集編がTVで放映されていて、勝ち上がった私もそこそこTVで知られてるの。これも名取グループの婚約者になるための練習なんだって。孤世さんは大会の話はそこでやめて、今まで岡山県の観光で立ち寄った場所について話してくれた。ほかの人は大会のことを聞いてくるんだけど、気を使ってくれたのかな。もう何度も同じこと応えたからね。


「お待たせしました。熱いので気をつけて食べてください」

「お。来たわね」

「ほんとに牡蠣がお好み焼きの上に載ってますね」

「牡蠣って焼いたり上げたりすると二回りほど大きさが小さくなるんだけど、それでこの大きさならこのお好み焼きに使ってる牡蠣どんだけ大きいのかしらね。食べる前に携帯で写真撮っていいかしら?」

「いいですよ。私も撮ろうっと」


 二人で撮影会を終えると早速実食。店員さんから届けられた日生カキオコはテーブルの鉄板におかれてるからヘラを使って切り分ける。日生カキオコだけ牡蠣を使ってて食中毒が怖いからお店側が調理してくれるんだよ。


フーフー ぱくっ


 少し冷まして口に含む。もぐもぐもぐ。


「おいしいですね。キャベツのほくほく感と牡蠣のエキス・ソースの味がマッチしてますね。食べる前は海鮮お好み焼きと似ている味だと思っていましたが」

「これはソースの味を変えてるのね、牡蠣の味に合うように」


 二人とも味が気に入ったみたいで黙々と日生カキオコを食べ進め


「おいしすぎて一気に食べちゃったわね。まだ少しお腹がすいてるからホタテやエビの姿焼き頼むけど暮葉ちゃんはどうする?」

「私も頼みます」



「今日はありがとうございました」

「こっちもごめんね。いきなり観光に付き合わせちゃって」

「こっちも楽しかったので。誘ってもらってよかったです」


 日生カキオコを食べた後、二人でほかの観光地を見て回って夕方5時ごろ岡山駅で別れることに。私は岡山市のホテルへ、孤世さんは新幹線に乗って家に帰る。ホテルへ行く途中名取グループで共有されている快君の捜索状況を確認したけど、今日も収穫無し。いったい彼はどこにいるんだろう?


戸締孤世視点


私は彼女を送り出し新幹線のホームへ行くふりをする。


「彼女が婚約者候補の一人、新庄暮葉ね」


 ブルルルル


 一人彼女の名前をつぶやいていると携帯に連絡が来る。




 岡山県に来て10日、動画以外にXで他の料理や観光地の写真をツイートして、雄一さん達も俺が岡山県にいることはわかっただろう。でもまだ俺の場所は全然ばれていない。まあこちら側にクロエとロアがいると知らない時点で無理だけど。


 今日向かうのは満奇洞、岡山県の天然記念物で歌人の与謝野鉄幹・晶子夫妻が詩を詠んだことでも有名らしい。洞窟なんて普段通らないし、似たようなものだとトンネルぐらい?


「ここが満奇洞ですね」

「おお、これぞ洞窟って感じ」

「そうね。内部は通路に沿って歩く感じね」


 洞窟内部をなるべく壊さず保管するため、通路は木材・金属で作られ明かりも外観を壊さないように配置されている。


「これ鍾乳石っていうんだよね。ゲームで見たことあるけど実際はこんなにヌルヌルなんだ」

「鍾乳石って洞窟内の石灰岩が大気中の二酸化炭素を吸収して弱い酸性になった雨水によって溶けて垂れてできたものらしいわね」

「ここまで立派な鍾乳石へと成長させるには非常に長い年月がかかっていますね。自然の歴史を感じます」


 様々な形・大きさの鍾乳洞・水滴がたまった水たまりに反射する光などが相まって、通路を進むたびに景色が変わっていく。これは人生で一度は見ておきたいかもしれない。景色を楽しみながら進んでいくと大きな湖にたどり着く。湖には大きな橋がかけられている。


「この橋は竜宮橋と呼ばれ、地下水がたまってできた湖を見渡せるように掛けられたそうです」


 クロエの説明を片手に竜宮橋を渡る俺達。確かに湖の中が良く見える。湖は透き通っており魚や貝などの生物も見える。


「秋になると外の遊歩道には紅葉が咲き乱れ非常に絶景だそうです」

「ならまた秋に来てもいいね」


 

狛犬霧子視点


 界様が家出してから1か月後、名取グループの捜査力を持ってしてもまだ界様の足取りさえつかめていません。Xのツイート傾向から岡山県に滞在しているのはわかっています。Xを運営している会社に協力を要請し発信元をたどったが外国のサーバーを経由しておりわかりません。まさか界様にこのような技術があるなんて思いませんでした。様々なな企業にも協力を要請し、ライブで監視カメラを確認していますが映りません。


「霧子様、界様いました」


 監視カメラを確認していたメイドの一人が声を掛けてきます。すぐにメインモニターに界様が写る映像が流れます。界様は自動販売機で飲み物を買っており、片手にはビニール袋を持っています。界様はそのまま近くのベンチに座り、ビニール袋から何らかのパックを取り出し食べ始めました。


「あれはたこ焼きですね」

「直ちに旦那様・奥様に報告。現地に近い人員は直ちに集合。私の指示がない限り監視に努めなさい」


 完全に界様は油断しています。ここで鬼ごっこ終わりにしましょう。界様はそのまま港の方に向かっています。私たちが車で到着した段階で界様は駅の近くの堤防で海を見て佇んでいます。この堤防出口は一つ、仮に海に飛び込んだとしてもスキューバー装備は準備しているので逃がすことはありません。堤防の入り口に数人待たせ他のメイドを連れて界様の元に向かいます。


カチィ


 ある程度近づくと界様は手に持っていた懐中時計を閉じると私たちに目を向けます。


「遅かったね、狛犬さん」

「お久しぶりです、界様。抵抗をやめて捕まってくれませんか?何か不満があるなら旦那様たちも聞いていただけると思います」


 約1か月ぶりに界様と会話しますが、何やら空気が違います。これは一郎様やクロエ様などから時折感じる威圧感?


「不満ね」


 界様が一言もらすとさらにその威圧感は増します。私たちはすぐに身構えます。なんでしょう、この寒気?


「まだそんなこと言ってるんだね。大方考え方が子供だから言いくるめれるとか考えてるんだろうね。もっとまじめに考えてほしいよね。こっちは名取島にいる時からこの計画を考えてたというのに」

「え?」

「何を驚いてるの?突然連れてかれたのにあの対応。それに周りの使用人は全員監視するような視線。それに携帯・PCにはGPSなど周りは敵だらけ。だったらいざ家出するために準備は進めるでしょ?」


 ばれてたんですね、監視やGPSのこと。


「まさか気づいてないと思ってたの?それは舐めすぎでしょ?まあ、来月からはもっと真剣に探すことだね」

「まるでここから逃げれる話しぶりですね?」


 明日香が界様に話しかけます。彼女は私と同様名取島で界様を世話(監視)していたメイドの一人。今回連れてきたメンバー10人すべて名取島のメンバーです。明日香の言葉を聞いた界様はこちらを見下すように


フッ


 と笑います。それを見た明日香ともう一人のメイドが界様を捕縛しようと突っ込みます。雰囲気は違いますが界様では逃げられないでしょう。と考えていましたが


「「え?」」


 二人の伸ばした手を捉え、空中で回転させる界様。


ビリッ


「「きゃあ」」


ドサッ


 空中で動きの取れない二人の首筋に界様が両腕を伸ばした瞬間、二人は意識を失いその場で倒れます。あまりの手際の良さに驚いて動きを止めていると


「どうしたの?来ないならこちらから行くけど?」


 二人を下ろした界様はこちらを挑発するように話しかけてきます。その声に反応したメンバーの一人が駆け出します。左手にはスタンロッドを装備して、意識を刈り取るようです。


「武器を振るう時、攻撃する箇所を見る」


 界様は何かをつぶやくと彼女の軌道を読んだかのように突きをかわし利き腕と胸元のメイド服をつかみ突きの勢いを利用して地面に倒し


バチバチバチ


「きゃあ」


 スタンロッドを当て彼女を倒します。しかしもう一人界様の隙を突くように背後からスタンロッドを降りかぶるメンバー。


「腰が入っていないので振りに重みがない」


 しかし界様がスタンロッドを一閃すると


ガンッ


「きゃ」


 彼女が振るうスタンロッドと衝突し、スタンロッドごと弾き飛ばされたたらを踏む彼女。界様はその隙を見逃さず、彼女のおなかにスタンロッドを当て無力化する。どういうことですか?まるでこちらの動きを呼んでいるよう。それにここまで界様戦闘技術があったのですか?


「時折みんなの訓練風景見学してたでしょ?みんなは女の子が運動している姿が見たいのでしょ?とか勘違いしてたけど、あれは敵情視察してたんだよ。時折格上のメイドと本気で戦ってた時もあるでしょ?あれもいいサンプルだった」


 たしかに界様は時折戦闘訓練を見ることはあった。女の子の戦ってる姿が見たいだけと不満に思っていたけど。でもクロエ様や他のマスターランクの方は何か観察されてる感じがしたと言っていたわ。


「名取島ではそこまで動けなかったはず」


 界様には護身術の一環として合気道なども習っていただきましたがあまり得意ではなかった。なので護衛術の訓練もしなくなったのに。


「敵の目の前で実力を見せるわけないじゃん?それに調べたらわかるはずだけど真柴家のおばあちゃん・おじいちゃんは護衛術の達人で長期休暇で遊びに行ったときいろいろ教えてもらってたんだ。一応筋はいいて褒められたんだけど」


 それを聞いたメンバーは本気で襲い掛かるけど次々に意識を飛ばされその場に倒されていく。残りは私一人。でも私も伊達に(MRが)エキスパートランクではない。愛用のレイピアを取り出し構える。


 私の構えを見た界様もその場でスタンロッドを構える・・・


ダッ


 私は一気に駆け出しレイピアを振るう。しかしことごとくスタンロッドで弾かれる。でもこれは読んでいたわ。私は界様の周りを動きまわりながら下半身を集中的についていく。これで意識は下半身に集中するはず。私も界様の戦闘を見ていたけど一つパターンを発見した。左ももへの攻撃はスタンロッドで弾かず体をそらしてかわしてくる。そうするとワンテンポ動きが止まる。そこを突けば倒せるはず。


 私は左払いで界様の左ももを狙う。予想通り界様は体をそらし避けようとする。よし、かかった。払いを途中で止め、全力で踏み込み界様の右肩部分を突く。よし、これで捕まえられる。


「え?」


 私の突きは正確に界様の右肩に当たろうとするが、直前で界様の体私の懐に潜り込んできて私の突きの手首を捉え視界が一転。


「視線で狙いがバレバレ」


ドン


「きゃあ」


 私は背負い投げで地面に叩きつけられ、痛みで顔をしかめる。


「隙じゃないの?」

「ブラフだよ。もっと人を疑わないと」


ビリリリリ


 スタンロッドを当てられ意識を失う。


界視点


 ふぅ、無事制圧完了。これで本気になってくれるだろう。彼女達をその場に放置し防波堤の出口に向かう。そこには驚いた顔で身構えるメイドが3人。


「俺は電車に乗るから彼女達の回収をお願い。それとも戦う?」


 俺の質問に彼女たちは顔を見合わせ少し悩むがすぐに気絶したメンバーの元に。うん、いい判断。彼女体の実力じ返り討ちに合うだけだからね。そのまま駅に向かうと女の子が一人立っている。そうか、今日は土曜日。彼女間にあったんだ。彼女はこちらに近づいてくると


「初めまして。私の名前は新庄暮葉、名取界君あなたの婚約者候補の一人よ」

「初めまして。知ってるよ、雄一さん達が勝手に決めた婚約者候補の一人でしょ?親に決められたのか玉の輿を狙ってるのか知らないけど、今のところ捕まる気ないから(婚約者は)解消されると思うよ」

「そうなの・・・」


 暮葉は少し考えるといきなり手を伸ばしてくる。でもその動きは素人同然。軽く腕で軌道をずらす。


「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・。正面からは捕まえられないわね」


 しばし攻防を繰り返していると暮葉は息を整えるため呼吸を繰り返しつぶやく。そして手首の時計を見ると


「そろそろ電車が来る時間ね。ねえ、この家出問題が解決したあと次に会ったら連絡先教えてくれない?君に興味を持ったから婚約者関係なく友達になってみたいの」

「ふーん、いいよ」

「だったら私のこと知ってもらうために家出期間中挑戦し続けるわね」


 暮葉の目に強い意志を感じる。へぇ、まだあきらめてないんだ。


「ほら、電車が来るわよ。またね名取界君」

「ああ。またね新庄暮葉さん」


 そのまま電車に乗り無人駅まで向かい降りる。


「お疲れさまでした、界様」

「予定通り進んでよかったです」


 一台の車が停まっており、その前では二人が立って出迎えてくれる。二人のお礼を言うとそのまま車に乗り別の県へ。


「雄一様達、緊急会議を開いていますね。やっと界様の実力に気づいたようです」

「まあ、今更ね。界様、次の目的地は広島ね?」

「うん。次は何が待ってるかな」

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