岡山県:前編 最初の投稿とデミカツ丼
<登場人物>
名取界
名取一郎
名取撫子
名取雄一
名取佐那
白金クロエ
狛犬霧子
真柴百合子
真柴(母)
真柴(父)
翌日4月2日10時ごろ
「ここが岡山駅か。あ、桃太郎のパネルが置いてある」
「規模団子が有名ですからね、岡山は。界は岡山に来るのが初めてですか?」
「うん。だから楽しみにしてたんだ」
「まずはレンタカーを借りて動画を撮るお店に行きましょう」
俺達3人は新幹線に乗って岡山駅に到着。名取家の力があれば様々な場所の監視カメラの映像を手に入れることは可能なのですでに変装済み。俺は茶色の長髪のかつらと帽子をかぶる。これで印象は変わるから当分大丈夫でしょ?クロエ(さん付けはやめてほしいと頼まれた)とロナもメイド服から私服に着替え、髪型も変えている。
「ロナ、条件に合った駐車場はあったかしら?」
「ちょっと待ってね・・合ったわ、ここなら監視カメラないわよ」
クロエが運転して、後部座席でロアがパソコンを操作して様々な立地を確認している。なるべく3人・車で移動していることはばれたくないので目的地から徒歩10分ほどの圏内で監視カメラがない駐車場で車を止める。車内で変装を解いて目的地に向かう。
向かった先はホテルにあるレストラン。席は窓際の景色が楽しめる席で昨日予約してある。さて、X用の動画撮影しようか・・・
東京にある名取家の屋敷ではモニターで界が示したXのアカウント『逃走情報局』が常に表示され動向を観察されている。界の手紙の通り4月2日12時『逃走情報局』のツイートが更新される。
『今日頼んだのは小さいフルーツがたくさん載ったアイスクリーム。3つの小さいガラスの容器に入ってきれい。それぞれ赤・緑・黄色の果物をテーマとしたデザートみたい。
パク
アイスの甘さは控えめだけど口に入れたらすぐ溶けるね。舌触りもいいし、果物もみずみずしくて、果物の糖度もすごく濃い。甘さ控えめのアイスと一緒に食べたら・・・うまい。ここは外の景色もいいんだよね』
最後に外の光景が3秒ほど映り動画は終わる。
「Xの発信先は?」
「外国のサーバーを経由していて特定不可能」
「場所の特定完了しました。岡山県岡山市にあるホテルの内のレストランです」
「直ちに岡山周辺に配置している隊員に連絡。レストランの監視カメラを見せてもらえるように交渉しなさい。作戦通り探索隊は私たちと一緒に岡山に行くわよ」
撫子の指示で動き出すメイドたち。その中には名取島の界の別荘で働いていた狛犬霧子の姿もある。彼女は雄一・撫子からの指示で界を監視していたがこの家出に関しては察知できず責任を感じて探索隊に手を上げ、探索隊のリーダーとして動いている。
「よし、送信終わり。外国のサーバーも経由しているからどこから送ったかは分からないわ」
「ロア、ありがとう。ロアがいなかったらどこかのネットカフェで送ろうと思ってたんだよ」
当初の予定では携帯も名取島の別荘において、真柴家から持ってきたPCで送信しようと考えてた。今の時代無料Wi-Fi探せば見つかるからね。真柴家で使っていた携帯は最新の機種に買い替え、PCも新しいPCに買い替えた、その時どちらにも秘密裏にGPSを仕掛けられているのは確認済み(どこにいてもすぐに誰か駆けつけてたから)。PCはいちおうそのまま真白家で使っていたPCを、携帯はすぐにおじいちゃんたちが用意してくれた。
さてこれからの予定は時々変装前の姿で監視カメラに写ったり、Xで立ち寄った場所の写真を更新したりして探索側に痕跡を残してあげる。そして約1か月後、予定通りいけば・・・。それ以外は変装して岡山の暮らしを楽しもう。向かう場所は岡山の陶芸品などが置かれているお店。
「これが備前焼のお皿か。一つ一つ模様が違うし表面もざらざらしてるね」
「本来焼き物は粘土を練って形を作り、乾燥させた後素焼きを行います。乾燥させただけだと空気中の水分を粘土が吸収してひび割れることがあるので、一度焼くことで粘土中の水分を飛ばし形付けます。これを素焼きと言い、素焼きを終えた焼き物に釉薬と呼ばれる薬液を浸します。この釉薬は土と反応し焼き物の表面に光沢や独特な色合いが付与されます。この反応は高温でのみ進むため、釉薬を塗った焼き物をもう一度今度は高温で焼成します。これを本焼きといい、本焼きを終えた焼き物に絵の具などで色付けをし完成させます」
「でも備前焼では釉薬を塗らずに色付けもしないから、一つ一つの模様が違うからそこも愛好家に喜ばれてるんだって備前焼はもっとも古い焼き物の技術の一つなんだって」
二人の説明を聞きながら様々な形の備前焼を見渡す。あ、このおちょこおじいちゃんたちにいいかも。
「ねえ、じいちゃんたちは備前焼のおちょこって持ってる?」
「いえ、お持ちに放っていないですね」
「だったらこのおちょこ買っていこうかな」
「いいですね。お二人ともお酒が好きですしお喜びになります」
他の商品を見いると
カタカタ
と首を揺らす虎のおもちゃが目に入る。これ、いろんな場所で見るよね?
「これは張り子の虎ですね。岡山県で有名なお土産品の一つです」
「へぇ、これって岡山の名物だったんだ」
「そうね。ことわざの『張り子の虎』から作れたとか、ことわざから作られたとか諸説があるみたい。ほら、場所によっては巨大な張り子の虎も作ってるみたい」
ロアがiPadで画像を見せてくれる。へぇ、お祭りとかで飾ったり、展示会で作品として出してるんだ。あと売ってるんだね、これ。値段はなかなかしてるけど。
「これが岡山名物デミカツ丼か」
俺たちの目の前にはご飯の上にサクサクのトンカツ・濃厚なデミグラスソース・飾りのグリーンピースが一つ置かれているデミカツ丼が置かれている。早速トンカツにかじりつく。
サクッ
上からデミグラスソースをかけることで衣のサクサク感を維持しつつ濃厚なデミグラスの味が広がる。そこへ茹でキャベツとご飯を一緒にかきこむ。
「カツ丼とは違う。これはこれでおいしいね」
「トンカツも揚げたてなのはもちろんしっかりと歯ごたえはあるけど柔らかいわ。いいお肉を使ってるのはもちろんきちんとした処理できている証拠ね。それにこの衣、少し大きめで自分で作ってるわね」
「そうですね。それにこのデミグラスソース、ハンバーグの時に使うような味付けではなくトンカツのお肉の味が引き立つように調整されています。素晴らしいです」
「さすが料理がうまいだけあるね、二人とも。目の付け所が違うね」
ポリポリ
付け合わせの黄ニラのお浸しもおいしいね。
さて少し遅めの昼食をとった後、これから1か月間泊まる場所へ向かう。二人がいない時の計画では名取家が経営する以外のホテルやネットカフェで過ごすつもりだったがおじいちゃんの伝手で貸し出し可能なコテージを借りることができた。別に以前の計画通りホテルとかでもよかったんだけど警備や料理など家事の点でコテージがいいらしい。
「今探索隊は岡山駅を中心に捜索を進めてるみたいね。新幹線で界様が岡山駅に着いたことや、あの動画の場所が岡山駅の近くのホテルのレストランだとは気づいたみたい。で今は岡山駅周辺の名取グループのお店の監視カメラを確認中ってところね。これならまだまだ大丈夫そうね」
俺が今後の作戦の確認をしていると、周囲に監視カメラとセンサーを取り付けたロアが正面に座りPCを操作して現代の捜査状況を教えてくれる。俺の捜査状況だが名取家のメイドなら誰でも知りうることができる。これは数多くの情報を集めるために公開してるらしい。
「これも予想通りかな。雄一さん達も俺が一人で行動してると思ってるだろうし、二人みたいに付いてくるほど関係が深いメイドはいないと考えてるんだろうし。つまり、まだ舐めているってわけだ」
「あとメディア関連や婚約者候補についてもいろいろ裏で雄一様が動いてるみたい。界様のことに関しては鈍いけど、仕事に関して嗅覚はいいから何かリカバリー案考えてるんでしょ」
「二人とも、そろそろ夕食できるのでテーブルの上片付けてください」
キッチンで夕食の準備を進めていたネクロさんが声を掛けてくる。テーブルの上を片付けるとネクロさんとロアが夕食の準備を進めていく。
「今日の夕食はお刺身がメインの魚尽くしです。岡山は海に近く新鮮な魚がたくさん手に入りました。特にタコや牡蠣は名産品なので味わってください」
これはおいしそう。いただきます。
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