第二部 北部編 北風
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北から。
風が吹いていた。
冷たい。
けれど。
どこか懐かしい風だった。
巡礼路は。
静かだった。
少し離れた場所。
ケッヒル大佐が。
アルスと向き合う。
「後は任せる」
アルスは。
真っ直ぐ。
ケッヒル大佐を見つめた。
「了解」
それだけだった。
二人は。
固く握手を交わす。
もう。
言葉は要らなかった。
ドルガンが。
豪快に笑う。
「帰って来い」
「その時は」
「酒だ」
俺も笑う。
「ああ」
フィオが。
少し寂しそうに。
小さく手を振る。
「エイゼン君」
「気をつけて」
「ありがとう」
シンが。
静かに言う。
「行け」
それだけ。
俺は。
静かに頷いた。
カイゼルは。
腕を組んだまま。
鼻を鳴らす。
「面倒事ばかり」
「増やすなよ」
「おう!」
思わず。
笑みが漏れる。
その様子を。
レオンは。
馬の横で。
静かに見ていた。
「忘れ物はないな」
短い。
それだけだった。
「ない」
俺も。
短く返す。
グリードが。
肩に剣を担ぐ。
「こんな終わり方とはな」
苦笑する。
「ますます」
「面白くなってきた」
ヴェルナが。
ため息をつく。
「面白いで済ませるのは」
「あんたくらいよ」
ルーは。
優しく微笑む。
「行きましょう」
その笑顔に。
少しだけ。
肩の力が抜けた。
「シュトック」
振り向く。
リシェルだった。
少しだけ。
困ったように笑う。
「行こう」
「……ああ」
俺は。
最後に。
巡礼路を見た。
崩れた鐘楼。
積み上がった瓦礫。
昨日まで。
確かにあったものが。
もう。
そこにはない。
『おかえり』
もう。
あの声は。
聞こえなかった。
老人が。
ゆっくり歩み寄る。
俺の前で。
深く頭を下げた。
「どうか」
「ご無事で」
「シュトック様」
俺は。
何も答えない。
ただ。
静かに。
一礼を返した。
老人は。
穏やかに微笑む。
クレイスが。
全員を見渡す。
「参りましょう」
「まずは」
「王都ヴァルクレインです」
「北へ向かう支度を」
「整えます」
俺たちは。
巡礼路を後にした。
崩れた鐘楼は。
もう。
見えなかった。
冷たい北風が。
正面から。
吹きつける。
俺たちは。
その風の中を。
歩き続ける。
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