北へ
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
老人は。
門を見つめたまま。
静かに頷く。
「巡礼路では。」
「初めてではございませぬ。」
「私は。」
「同じような出来事を。」
「見たことがございます。」
風が吹く。
誰もが。
言葉を失っていた。
レオンが。
静かに尋ねる。
「……いつだ。」
老人は。
目を閉じる。
「私が。」
「まだ若かった頃でございます。」
少しだけ。
視線を落とす。
「私の知ることは。」
「そこまででございます。」
「ですが。」
皆が。
老人を見る。
「北には。」
「旧王国の記録を。」
「今も守り続ける方々が。」
「おられます。」
「私より。」
「詳しい方も。」
「おられるでしょう。」
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
地面が揺れる。
ドルガンが。
顔を上げる。
「何だ?」
轟音。
巡礼路の奥。
鐘楼が。
大きく軋んだ。
石壁に。
亀裂が走る。
「まずい!」
レオンが叫ぶ。
次の瞬間。
鐘楼が。
崩れた。
轟音。
土煙。
石が。
雪崩のように落ちる。
入口は。
完全に埋まった。
誰も。
動けない。
俺は。
崩れた鐘楼を見る。
あの部屋。
壁画。
本。
全部。
失われた。
クレイスが。
静かに言う。
「現場は失われました。」
「これ以上。」
「ここで検証することはできません。」
老人を見る。
「ですが。」
「北には。」
「まだ調べる術があります。」
少しだけ。
考え。
静かに。
結論を告げた。
「私は。」
「北部へ向かいます。」
誰も。
口を開かない。
「エイゼンシュタイン。」
俺を見る。
「君にも。」
「同行してもらいます。」
「今回の出来事は。」
「君自身に関わっています。」
「君がいなければ。」
「この調査は成り立ちません。」
俺は。
崩れた鐘楼を見る。
もう。
戻れない。
なら。
答えを。
探しに行くしかない。
小さく。
頷いた。
レオンが。
短く言う。
「俺も行く。」
「最後まで。」
「見届ける。」
リシェルが。
迷わず頷く。
「私も。」
「シュトックと。」
「一緒に行きます。」
その時だった。
「……なら。」
低い声。
ケッヒル大佐だった。
腕を組み。
しばらく考える。
やがて。
アルスを見る。
「アルス。」
「第七軍は。」
「お前が預かれ。」
アルスの目が。
大きく開く。
「大佐……。」
「異論は認めん。」
短く。
それだけだった。
アルスは。
深く敬礼する。
「了解。」
その様子を見ていた。
グリードが。
口元を緩める。
「面白ぇ。」
「ここまで来たら。」
「最後まで付き合うぜ。」
ヴェルナが。
ため息をつく。
「……まったく。」
「放っておけるわけ。」
「ないじゃない。」
ルーが。
くすりと笑う。
「旅は。」
「賑やかな方が。」
「楽しいものよ。」
誰も。
もう。
迷ってはいなかった。
俺は。
崩れた鐘楼を。
最後に見上げる。
鐘は。
もう鳴らない。
だけど。
あの声だけは。
今も。
胸の奥に残っていた。
『おかえり』
俺たちは。
北へ向かう。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク
・評価(☆☆☆☆☆)
・感想
などいただけるととても励みになります!
今後も更新していくので、よろしくお願いします!




