前例
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突破隊が。
戻ってきた。
兵士たちが。
左右へ道を開ける。
レオン。
ドルガン。
ヴェルナ。
フィオ。
ルー。
アルス。
俺は。
思わず。
駆け寄る。
その前に。
ドルガンが叫んだ。
「おい!」
「エイゼンシュタイン!」
「お前!」
「足止め隊じゃなかったのか!」
俺は。
思わず立ち止まる。
「……は?」
「何言ってる。」
ドルガンが。
目を見開く。
「何言ってるじゃねぇ!」
「鐘楼まで!」
「俺らと一緒だったろ!」
その瞬間。
リシェルが。
声を上げた。
「シュトックは!」
「ずっとここにいました!」
全員が振り向く。
シンが。
静かに言う。
「ここだ。」
「倒れたのも。」
「目を覚ましたのも。」
突破隊が。
息を呑む。
レオンが。
ゆっくり。
俺を見る。
「……エイゼン。」
「あの時。」
「聞いたな。」
思い出す。
鐘楼へ向かう途中。
「お前。」
「何で足止め隊にいない。」
確かに。
聞かれた。
でも。
俺は。
答えなかった。
答えられなかった。
ドルガンが。
頭を抱える。
「じゃあ!」
「俺らと一緒にいた!」
「あいつは誰だったんだよ!」
誰も。
答えられない。
沈黙を破ったのは。
クレイスだった。
「一つ。」
「整理しましょう。」
全員が。
クレイスを見る。
「足止め隊は。」
「エイゼンシュタインが。」
「終始ここにいたと証言しています。」
「突破隊は。」
「エイゼンシュタインと。」
「鐘楼へ入り。」
「地下まで進んだと証言しています。」
「二つの証言は。」
「明らかに食い違っています。」
「ですが。」
「私には。」
「どちらも。」
「体験したことを。」
「そのまま話しているように思えます。」
「そうであるなら。」
「私たちが調べるべきは。」
「証言ではなく。」
「巡礼路で起きた現象です。」
静かな風が吹く。
誰も。
すぐには口を開かなかった。
レオンが。
ゆっくり。
老人を見る。
「あんた。」
老人が。
顔を上げる。
「以前。」
「エイゼンを。」
「シュトック様と呼んだ。」
「理由を聞こう。」
老人は。
静かに目を閉じた。
長い沈黙。
やがて。
小さく首を振る。
「……申し上げられませぬ。」
ドルガンが。
思わず声を荒げる。
「何でだ!」
老人は。
ゆっくり答えた。
「私が。」
「申し上げることでは。」
「ございませぬ。」
レオンの目が鋭くなる。
「知っているんだな。」
老人は。
否定もしない。
肯定もしない。
ただ。
俺を見る。
その目は。
さっきまでとは違っていた。
怯えでも。
驚きでもない。
確かめるような目。
やがて。
小さく口を開く。
「一つだけ。」
「申し上げられます。」
皆が。
老人を見る。
「巡礼路では。」
「初めてではございませぬ。」
「私は。」
「同じような出来事を。」
「見たことがございます。」
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