名前
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リシェルが。
俺の顔を覗き込む。
「もう」
「動いて大丈夫?」
頷く。
身体は重い。
でも。
立てないほどじゃない。
テントを出る。
冷たい風。
巡礼路は。
静かだった。
兵士たちが。
黙々と陣地を築いている。
門は。
開いたまま。
黒甲冑も。
白甲冑も。
動かない。
まるで。
世界だけが。
息を止めているみたいだった。
俺は。
門を見る。
頭が痛んだ。
鐘。
壁画。
白い外套。
『おかえり』
思わず。
頭を押さえる。
「まだ痛むのか?」
クレイスだった。
「……少し」
嘘だ。
少しじゃない。
俺は。
俺のはずなのに。
あそこでは。
違う誰かだった。
「突破隊は」
「まだですか?」
クレイスは。
門を見る。
「ああ」
「まだ戻らない」
胸がざわつく。
レオン。
ドルガン。
ヴェルナ。
フィオ。
ルー。
アルス。
あれは。
夢だったのか。
それとも。
本当に。
俺は。
あそこにいたのか。
その時。
門の方から。
兵士が駆けてきた。
「伝令!」
「突破隊です!」
「突破隊が戻ります!」
思わず。
胸が鳴る。
生きていた。
よかった。
そう思ったはずなのに。
安心より先に。
別の感情が湧いた。
怖い。
俺は。
レオンに。
何を聞けばいい。
いや。
違う。
本当に怖いのは。
レオンが。
俺に。
何を聞くかだった。
その時。
「シュトック」
リシェルが。
俺を呼ぶ。
返事をしようとして。
止まる。
シュトック。
その名前が。
急に。
遠く感じた。
俺は。
リシェルを見る。
「……どうしたの?」
心配そうな顔。
俺は。
小さく首を振る。
「いや」
「何でもない」
嘘だった。
今。
呼ばれたのは。
本当に。
俺だったのか。
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