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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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知らない記憶

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

俺は。


その場に立ち尽くしていた。



白い外套。


長い髪。


知らない身体。



だけど。


不思議と。


重くない。


むしろ。


馴染んでいる。


それが。


気持ち悪かった。



「おい」


ドルガンが顔を覗き込む。


「本当に大丈夫か?」



「……分からない」


それしか。


言えなかった。



「何が?」



「全部」



そう言うと。


ドルガンが笑った。


「そりゃそうか」



何が「そうか」なんだ。


こっちは意味が分からない。



レオンが近づく。


真っ直ぐ。


俺を見る。


「エイゼン」


低い声。


「ここへ来る途中」


「お前、何か言ってたぞ」



「俺が?」



「ああ」



覚えてない。



そう顔に書いてあったんだろう。


レオンが少し眉をひそめる。


「鐘が鳴っている間は」


「急げと言っていた」



「止まった瞬間」


少し言葉を選ぶ。



「……懐かしい」



「そう言った」



は?


俺が?



知らない。


言った覚えなんてない。



「それから」


ヴェルナが続ける。


「急に歩き出したのよ」


「まるで」


壁画を見る。


「ここを知ってるみたいに」



俺も。


壁画を見る。



白甲冑。


黒甲冑。



そして。


中央。


一人の男。



長い髪。


白い外套。



俺と。


似ている。


嫌になるくらい。


似ていた。



俺じゃない。


絶対に。



なのに。


他人とも思えない。



そんなはず。


ないのに。



「エイゼン君」


フィオが袖を引く。


「名前」


「下に書いてあるよ」



見る。


古い文字。


読めない。



でも。


何故か。


読める気がした。



嫌な予感。


胸がざわつく。



読め。


誰かが言う。


頭の奥。


知らない声。


読め。



嫌だ。


読むな。



読め。



指が。


勝手に動く。


文字をなぞる。



口が。


勝手に開いた。



「シュ――」



止まる。



冷たい汗。



今。


何て言おうとした?



「シュ?」


ルーが首を傾げる。


「何?」



「……知らない」



嘘だった。



知らないはずなのに。


知っている。


知っているはずなのに。


思い出したくない。



レオンが。


俺の顔を見る。


「読めるのか?」



首を振る。


「読めない」



即答。


本当に?


自分でも分からない。



その時。



ズキッ――。



また。


頭。


違う。


今度は。


胸。



懐かしい。


寂しい。


会いたかった。


そんな感情が。


突然。


溢れてきた。



俺のものじゃない。


絶対に。


違う。



壁画の男。


その顔だけが。


ぼやけている。


見えそうで。


見えない。



でも。


分かった。


あいつは。


俺を知っている。



俺も。


あいつを知っている。



なのに。


思い出せない。


俺は。


拳を握る。



嫌な予感がした。


もし。


あいつの顔を見たら。



俺は。



シュトック・エイゼンシュタインじゃなくなる気がする。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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