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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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鐘楼

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

鐘が。


完全に。


止まった。



静寂。


風だけが吹く。



黒甲冑。


動かない。


白甲冑も。


剣を下ろしたまま。


まるで。


時間が止まったみたいだった。



グリードが呟く。


「……終わった?」



誰も答えない。


シンは。


門の奥を見ている。


クレイスも。


老人も。



とにかく、何もかもが止まった。


訳が分からない。



「何が起きたんだ?」



老人が震える。


「鐘が……」


掠れた声。


「止まった」



その目。


俺を見る。


いや。


俺の向こう。


もっと。


遠い何かを見るみたいに。



「ようやく……」


涙。


「ようやく……」


言葉にならない。



その時。



頭の奥が。



ズキッ――。



「っ!」


膝をつく。



視界が揺れる。


黒甲冑。


白甲冑。


門。


全部が。


滲む。



リシェルが振り向く。


「シュトック?」



返事ができない。


痛い。


違う。


頭痛じゃない。


何かが。


流れ込んでくる。



白い旗。


雪。


吹き荒れる風。


鐘。



誰かの声。


『見つけた』



黒甲冑?


違う。


もっと。


昔。



もっと。


懐かしい。



誰かが。


笑っている。



『久しぶりだな』



誰だ。


お前。



『俺だよ』



知らない声。


なのに。


知っている。



頭が。


割れそうになる。



老人が叫ぶ。


「いけません!!」



クレイスが駆け寄る。


「エイゼンシュタイン!」



シンが。


初めて顔色を変えた。


「おい!」



俺は。


門を見る。



黒い。


巨大な門。


開いている。



向こう側。


誰かいる。


長い髪。


白い外套。


顔は見えない。


なのに。


笑った気がした。



次の瞬間。


意識が落ちた。




静かだった。


鐘の音が。


消えている。



……あれ?


俺は。


どこにいる?



巡礼路じゃない。


巨大な部屋。


黒い鐘。


壁画。


見覚えのない場所。



なのに。


何故か。


懐かしい。



俺は。


自分の手を見る。


白い。


指が長い。



……俺の手じゃない。



「レオンよぅ」


ドルガンが笑う。


「なんでコイツは鳴り止んだんだ?」



レオン?


思わず振り向く。



いた。


レオン。


ドルガン。


アルス。


ヴェルナ。


ルー。


フィオ。



突破隊!


なんで?


なんでこいつらがここに?



「おい!」


思わず声を上げる。



全員が振り向いた。



ドルガンが目を丸くする。


「お?」



フィオが首を傾げる。


「あれ?」



ルーが笑う。


「あらぁ」



ヴェルナが目を細める。


「どうした?」



レオンだけが。


固まっていた。


じっと。


俺を見る。


「……エイゼン?」



は?


何言ってる。



「お前」


レオンが眉をひそめる。


「髪」



髪?



触る。


長い。


肩まである。


茶色。


さらりと。


指の間を流れた。



フィオが嬉しそうに言う。


「わー」


「エイゼン君」


「そんな服持ってたんだね」



服?


見る。


白い外套。


銀の刺繍。


見たこともない。



だけど。


妙に。


似合っている気がした。



いや。


待て。


何でだ。



「貴族みたい」


フィオ。



「いや」


ヴェルナが首を傾げる。


「違うな」



俺を見る。


じっと。


観察するみたいに。



「貴族っていうより」


少し考える。


「王子?」



「馬鹿言え」


思わず言った。



ルーが笑う。


「あらぁ」


「でも」


「男っぽくなったわよ?」


「いい感じ」


「イケメン君」



「うるさい」


何なんだ。


さっきから。


みんな。


何を言ってる。



「てか!」


思わず叫ぶ。


「俺!」


「なんでここにいるんだ!?」



皆黙り込む。



ドルガンが。


レオンを見る。



レオンが。


俺を見る。



アルスまで。


珍しく。


真面目な顔をしていた。



「……何言ってる?」


レオン。


低い声。


「お前が」


「俺たちを連れてきたんだろ」



は?



「は?」


同じ言葉が。


そのまま出た。



「何言ってんだ」



「俺」


「さっきまで巡礼路に――」



そこまで言って。


止まる。



巡礼路。


黒甲冑。


白甲冑。


鐘。



……鐘?



頭が。


痛い。



ズキッ――。



思わず額を押さえる。



白い旗。


雪。


吹き荒れる風。


剣。


叫び声。


白甲冑。


倒れていく。



その中央。


誰かが立っている。


長い髪。


白い外套。



俺?


違う。


俺じゃない。


でも。


知っている。



その男が。


ゆっくり振り返る。


顔は見えない。


だけど。


笑った。


俺の声で。


「久しぶりだな」



「っ!!」


飛び退く。


息が荒い。



何だ。


今の。



ドルガンが目を丸くする。


「おい」


「大丈夫か?」



フィオも。


少し心配そう。



ルーも笑っていない。



レオンだけが。


ずっと。


俺を見ている。



その目。


警戒。


困惑。


そして。


ほんの少し。


恐れているようにも見えた。



「……お前」


「誰なんだ?」



嫌な汗が流れる。



俺は。


俺だ。



シュトック・エイゼンシュタイン。



なのに。


今。


初めて。



そう言い切れない気がした。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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