譲れない
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黒甲冑が。
消えた。
そう見えた。
次の瞬間。
カイゼルの前。
杭が振り下ろされる。
「っ!」
カイゼルが跳ぶ。
間に合わない。
ドォォォン!!
石畳が砕けた。
破片が舞う。
カイゼルが吹き飛ぶ。
転がる。
起き上がる。
速い。
でも。
顔色が変わっていた。
「は?」
初めて。
本気で驚いた顔。
「速すぎだろ」
黒甲冑は止まらない。
二撃目。
横薙ぎ。
カイゼルが受ける。
ガギィィィン!!
剣が悲鳴を上げた。
足が滑る。
押し負ける。
「くっ……!」
シンが叫ぶ。
「下がれ!」
珍しい。
怒鳴り声。
カイゼルが反応する。
直後。
杭が。
地面を薙ぎ払った。
ドォン!!
石畳が爆ぜる。
破片が。
嵐みたいに舞い上がる。
さっきまで。
カイゼルがいた場所。
そこだけ。
地面が抉れていた。
グリードが青ざめる。
「何だよあれ……」
「人間じゃねぇ」
クレイスが呟く。
「……違和感があります」
銀のレンズ。
黒甲冑を追う。
「速い」
「ですが」
少し考える。
「それだけじゃない」
首を振る。
「説明できません」
黒甲冑が。
止まる。
ゆっくり。
首を傾げた。
まるで。
考えているみたいに。
その視線。
カイゼル。
白甲冑。
そして。
俺。
順番に見て。
最後に。
また。
俺で止まった。
理由もなく。
背筋が寒くなる。
白甲冑が動く。
ザッ――。
俺の前。
さらに。
何体も。
白い鎧。
白い剣。
傷だらけ。
砕けた肩。
割れた胸甲。
それでも。
誰一人。
退かない。
カイゼルが舌打ちした。
白甲冑を見る。
「こいつら」
少し笑う。
「勝てねぇくせに」
「やりやがる」
返事はない。
当然だ。
でも。
誰一人。
退かない。
シンが呟く。
「ああ」
みんなが見る。
シンは。
白甲冑を見ていた。
「本気だ」
短く。
それだけだった。
鐘が鳴る。
ゴォォォォォン――。
黒甲冑が。
杭を持ち上げる。
白甲冑が。
剣を構える。
シンが前へ出た。
いつの間にか。
刀の切っ先が。
黒甲冑へ向いている。
低い声。
「カイゼル」
「三回」
「避けろ」
カイゼルが眉をひそめる。
「四回目は?」
シンが答える。
「右脇」
グリードが顔をしかめる。
「は?」
「開く」
短く。
断言する。
「一瞬だけ」
カイゼルが笑った。
「見えんのか?」
シンは首を振る。
「癖だ」
黒甲冑を見る。
「三回」
「全部同じ」
「四回目だけ」
「違う」
空気が変わった。
グリードが固まる。
俺も。
クレイスも。
シンを見る。
初めてだった。
シンが。
戦いの流れを。
迷いなく言い切ったのは。
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