白き壁
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ゴォォォォォン――。
鐘の音が響く。
突破隊の背中が。
門の奥へ消えていく。
レオン。
ドルガン。
アルス。
ヴェルナ。
フィオ。
ルー。
振り返らない。
振り返る余裕なんて。
誰にもない。
黒甲冑が。
一歩。
踏み出す。
ドン――。
また地面が揺れた。
俺へ。
真っ直ぐ。
白甲冑が迎え撃つ。
三体。
同時。
白い剣が閃く。
速い。
さっきより。
明らかに。
速い。
黒甲冑の杭が振られる。
轟音。
一体。
吹き飛ぶ。
二体目。
剣を折られる。
三体目。
胸を貫かれる。
なのに。
止まらない。
白甲冑は。
倒れても。
壊れても。
また立ち上がる。
グリードが顔を引きつらせた。
「嘘だろ……」
カイゼルが。
小さく舌打ちする。
白甲冑を見たまま。
「何なんだよ」
「こいつら」
クレイスが首を振る。
「私にも分かりません」
珍しく。
即答だった。
銀のレンズが。
白甲冑を追う。
「生命反応はない」
「ですが」
「明確な意志がある」
白甲冑が。
また俺の前へ立つ。
傷だらけ。
片腕がない。
それでも。
剣を構える。
俺を見ることなく。
黒甲冑だけを見ている。
カイゼルが鼻を鳴らした。
「勝てねぇって分かってんだろ」
白甲冑を見る。
「なのに前に出るか」
少し笑う。
「嫌いじゃねぇ」
グリードが目を丸くする。
「お前」
「そういうの好きだったの?」
「嫌いだ」
即答。
白甲冑が。
また吹き飛ぶ。
壁へ叩きつけられる。
それでも。
立ち上がる。
カイゼルが小さく舌打ちした。
「だからムカつく」
グリードが呆れる。
「どっちだよ」
カイゼルは剣を肩へ担いだ。
「負けるって分かってて」
「前に出る奴は」
少しだけ。
顔をしかめる。
「見てて腹立つ」
俺は思わず。
カイゼルを見る。
前にも思った。
こいつ。
口は悪いけど。
意外と。
いい奴なんじゃないかって。
カイゼルが俺を睨む。
「何見てんだ」
「いや」
慌てて目を逸らす。
「別に」
「気持ち悪ぃ」
何だよそれ。
グリードが吹き出した。
その時。
黒甲冑が。
杭を振り上げる。
狙いは。
俺。
白甲冑が飛び込む。
杭。
剣。
火花。
轟音。
白甲冑が砕ける。
でも。
その一瞬。
黒甲冑が止まった。
シンの目が細くなる。
「今!」
低い声。
カイゼルが飛び出した。
速い。
黒甲冑の懐。
剣。
一閃。
ガギィィィン!!
火花。
黒い装甲が。
ほんの少し。
欠けた。
全員が目を見開く。
カイゼルが笑った。
「悪ぃ」
剣を肩へ担ぐ。
「ちょっと」
「こっち向いた」
黒甲冑。
初めて。
俺から目を離していた。
グリードが叫ぶ。
「おい!」
「エイゼンから目を逸らしたぞ!」
「そうだな」
カイゼルは笑う。
黒甲冑を見る。
「なら」
「少しは時間稼ぎになる」
グリードが頭を抱えた。
「そういう問題かよ!」
「そういう問題だろ」
少しだけ。
口元が上がる。
「非戦闘員は」
「守らねぇとな」
俺は頭数に入ってねぇのかよ。
だけど。
改めてカイゼルを見る。
……やっぱり。
いい奴だ。
カイゼルが俺を睨む。
「何見てんだ」
「いや」
慌てて目を逸らす。
「別に」
カイゼルが。
嫌そうな顔をした。
「気持ち悪ぃ顔すんな」
「してねぇよ!」
グリードが笑う。
その声が。
一瞬だけ。
恐怖を忘れさせた。
黒甲冑が。
杭を握り直す。
狙いは。
カイゼル。
シンが呟く。
「……まずい」
初めてだった。
シンの声に。
焦りが混じったのは。
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