突破
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錆びた鉄が擦れるような。
低い声。
「――見つけた」
俺のことを。
そう言った気がした。
黒い甲冑が。
また一歩。
前へ出る。
ドン――。
地面が揺れる。
白甲冑が迎え撃つ。
剣。
杭。
火花。
轟音。
でも。
止まらない。
黒い甲冑は。
ただ。
真っ直ぐ。
俺へ向かってくる。
「やはりな」
ケッヒル大佐が呟く。
その声に。
迷いはなかった。
「突破隊」
「レオン」
「ドルガン」
「アルス」
「ヴェルナ」
「フィオ」
「ルー」
レオンを見る。
「鐘を壊せ」
「私はここで指揮を取る」
レオンが頷く。
「了解」
ドルガンがニヤリ。
「ようやく仕事か」
アルスは無言。
細剣をくるりと回す。
ヴェルナが。
ちらりと俺を見る。
何か言いたそうだった。
でも。
何も言わなかった。
「足止め隊」
ケッヒル大佐が続ける。
「シン」
「カイゼル」
「グリード」
そして。
俺を見る。
「エイゼンシュタイン」
「お前もだ」
「は?」
思わず声が出た。
「俺も突破した方が――」
「バカちんが!!」
巡礼路に響く怒声。
思わず背筋が伸びる。
ケッヒル大佐が。
本気で怒っていた。
「あれを見ろ!」
黒甲冑を指差す。
白甲冑が。
また吹き飛ばされる。
それでも。
黒甲冑は。
俺から目を離さない。
「お前が動けば」
「あれも動く!」
「突破隊の後ろへ回られたら終わりだ!」
言葉を失った。
グリードが肩を叩く。
「諦めろ」
「今回は囮役」
「嫌な言い方すんな!」
「事実だろ」
カイゼルが鼻で笑う。
「気にすんな、負傷者」
……うっ、何にも言えねぇ。
抜かれている剣を肩へ担ぐ。
「俺らが死ぬ気で守る」
「だから」
「お前は死ぬな」
……カイゼル。こんなこと言う奴だったんだ。
少しうるっとくる。
その時。
リシェルが。
俺の前へ出る。
「シュトックは」
小さな背中。
だけど。
「私が守ります」
カイゼルが吹き出す。
「お前」
「戦力に入ってねぇぞ」
「うるさいです!」
顔を真っ赤にする。
グリードが笑った。
少しだけ。
空気が軽くなる。
その時だった。
ゴォォォォォン――。
鐘。
巡礼路の奥。
重い音が響く。
シンの顔が変わった。
「急げ」
短い言葉。
レオンが頷く。
「行くぞ」
ドルガン。
アルス。
ヴェルナ。
フィオ。
ルー。
突破隊が駆け出す。
黒甲冑が。
そちらを見る。
ほんの一瞬。
だけど。
次の瞬間。
首が戻る。
俺を見る。
俺だけを。
シンが目を細める。
「やはりな」
ゾッとした。
白甲冑が。
ザッ――。
俺の前へ並ぶ。
一体。
また一体。
さらに。
次々と。
白い壁。
俺を囲むように。
守るように。
クレイスが。
銀のレンズを押し上げる。
「護衛対象はーー」
その声は。
少しだけ震えていた。
「間違いなくエイゼンシュタインです」
黒甲冑が。
杭を持ち上げる。
白甲冑が。
剣を構える。
鐘が鳴る。
突破隊は。
もう門の奥へ消えかけている。
俺は。
剣を握りしめた。
戦えない。
逃げられない。
なのに。
戦いの中心にいる。
聞いてない。
こんなの。
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