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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「……俺か?」


思わず口から漏れた。



老人は頭を垂れたまま動かない。


まるで。


それが当然であるかのように。



誰も喋らない。


いや。


何を言えばいいのか分からなかった。



最初に口を開いたのはグリードだった。


「待て」


「待て待て待て」


「意味が分からねぇ」



それは全員同じだった。



レオンが老人へ視線を向ける。


「今、何と言った」



老人はゆっくり答えた。


「お帰りなさいませ」


「シュトック様」



レオンの眉が動く。


「その者の名はシュトック・エイゼンシュタインだ」



老人は首を振った。


「存じませぬ」



空気が凍る。



「いや」


グリードが思わず声を上げる。


「目の前にいるだろ!?」


「それ!」


「そいつがシュトックだよ!」



老人は静かに首を振る。


「違います」



全員が固まった。



今度は本当に。


言葉を失った。



リシェルの手が、俺の袖を強く握る。



「違うって……」


ミオが呟く。



老人は俺を見ていた。


真っ直ぐ。


迷いなく。



「お待ちしておりました」



その声に。


背筋が寒くなる。



クレイスが静かに口を開く。


「質問を変えましょう」



銀のレンズが光る。


「あなたは誰を待っていたのですか」



老人は即答した。


「シュトック様です」



「だから誰だよ」


思わず声が出た。


「俺は確かにシュトックだけど」



老人は初めて不思議そうな顔をした。


まるで。


俺の方が理解できないことを言ったみたいに。



その時だった。



ケッヒル大佐が前へ出た。



全員の視線が集まる。



大佐は老人を見ている。


老人も大佐を見ている。



数秒。


誰も動かなかった。



そして。



初めてだった。


あの老人の表情が動いたのは。



わずかに。


目が見開かれる。



乾いた唇が震えた。


「……」


言葉は出ない。



だけど。


その顔は見覚えのある誰かを見た顔だった。



第7全員がケッヒルを見る。



ケッヒル大佐は答えない。


ただ。


老人を見返していた。



俺は息を呑む。



初めてだった。


あのケッヒル大佐が。


ほんの少しだけ。


驚いた顔をしたのは。



「大佐?」


思わず声が出る。



ケッヒル大佐は答えない。


その視線は。


老人から離れなかった。



やがて。


老人がゆっくり頭を垂れる。



「申し訳ございません」


掠れた声だった。


「お側におられるとは思いませんでした」



全員が老人を見る。



お側?


誰のだ。


何の話だ。



レオンの眉がひそめられる。



クレイスの銀のレンズが静かに光った。



ケッヒル大佐は短く息を吐く。


「話せ」


低い声だった。



老人の肩がわずかに震える。


「鐘が鳴りました」



誰も反応できない。


いや。


意味が分からない。



老人は続けた。


「三度」



その瞬間だった。


ケッヒル大佐の目が細くなる。


ほんのわずかに。



でも。


確かに空気が変わった。



「どこまで見た」



老人は答える。


「門が開きました」


「白き騎士たちも」



その言葉に。


ドルガンが顔をしかめた。



カイゼルも舌打ちする。



レオンは無言だった。


ただ。


剣だけは下ろさない。



「待て」


グリードが割って入る。


「さっきから何なんだよ」


「鐘だの門だの」


「白き騎士って白甲冑のことか?」



老人はグリードを見ない。


視線はずっと俺へ向いたままだった。



背筋が寒くなる。



「シュトック様」



まただ。


その呼び方。



老人の声が震える。



恐怖なのか。


歓喜なのか。


それすら分からない。



「もう時間がありません」



その時だった。



ゴォォォォォン――。



鐘が鳴る。



今までで一番近く。


今までで一番重く。



巡礼路全体が震えた。



老人の顔から血の気が引く。


「来ます」



老人が怯えている。


その事実が。


何より恐ろしかった。



そして。


その理由はすぐに分かった。



門の奥から。


金属が擦れる音が響いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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