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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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巡礼者

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

重い足音が響いた。



視線が一斉に門へ向く。



門の向こう。


闇の奥から。


ゆっくりと何かが近付いてくる。



石を踏む音。


一定の歩幅。


迷いがない。



まるで。


最初からここへ来ると決まっていたみたいに。



レオンが剣を構える。



ドルガンが大剣を肩から下ろした。



カイゼルも無言で前へ出る。



アルスの細剣が、いつの間にか突きの構えへ変わっていた。



本軍兵士たちが息を呑んだ。



黒甲冑。



そう思った。



俺も。


全員そう思ったはずだ。



だが。



現れたのは。



違った。



「……人?」


ミオが呟く。



門の奥から現れたのは。


一人の老人だった。



痩せている。


異様なほど。


骨と皮だけみたいな身体。



古びた灰色の法衣。


裸足。


長い白髪が胸元まで垂れている。



そして。


顔を覆うほど伸びた髭。



巡礼者。


そんな言葉が頭をよぎった。



老人はゆっくり歩いてくる。


白甲冑たちの間を。


まるで当然のように。



「待て」


レオンが低く言う。



老人は止まらない。



ドルガンが眉をひそめた。


「なんだこりゃ」



カイゼルも剣を下ろさない。


「気味が悪ぃ」



シンだけが動かなかった。


その目は。


最初から老人を見ていた。



「シン」


フィオが呼ぶ。



返事はない。


ただ。


警戒だけが強くなっている。



俺にも分かった。


この人。


普通じゃない。



老人は歩く。



ただ歩く。



敵意はない。


殺気もない。



なのに。


全身が警鐘を鳴らしていた。



クレイスが静かに呟く。


「おかしいですね」



また始まった。


今さら何がおかしいんだよ。



「呼吸をしていません」



全員が固まった。



「……は?」


グリードが変な声を出す。



クレイスは老人から目を離さない。


「胸が動いていない」


「歩行速度も一定です」



「そして」


銀のレンズが淡く光る。


「瞬きをしていません」



空気が凍った。



老人は歩く。


変わらない歩幅で。


変わらない速度で。



ただ。


こちらへ。



「生きていない」


シンが言った。


短く。


断定するように。



老人は止まった。



俺の前で。


ぴたりと。



全員が構える。



リシェルの手が俺の袖を掴んだ。



老人が顔を上げる。



その瞬間だった。



ズキッ――。



頭の奥が痛む。



視界が揺れる。



白い海。


鐘の音。


空。


どこまでも白い光。



知らない景色。



知らないはずなのに。


懐かしい。



『――シュトック』



声が聞こえた。



フィナじゃない。



もっと遠い。


もっと古い。



老人の唇が動く。


乾いた唇。


声にならない声。



それでも。


聞こえた気がした。



『……やっと』



心臓が跳ねる。



何だ。


何なんだ。



老人の目が。


真っ直ぐ俺を見る。



そして。


ゆっくりと片膝をついた。



全員が息を呑む。



白甲冑たちも動かない。



鐘も鳴らない。



世界が止まったみたいだった。



老人は頭を垂れる。



まるで。


王へ礼を捧げる臣下のように。



そして。


震える声で言った。



「お帰りなさいませ」



――シュトック様。

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