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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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石門

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

頭の奥が痛んだ。


ズキッ――。



思わず石門から目を逸らす。



その瞬間だった。



白い影が見えた。


白甲冑じゃない。



門の向こう。


誰かが立っていた。



瞬きをする。



消えている。


気のせいだったのか。



白甲冑たちが並ぶ道を。


第7は進んでいた。



左右。


白い甲冑。


無数の視線。



なのに。


誰も襲ってこない。



……気味が悪い。


本気で。



グリードも落ち着かないらしい。


何度も左右を見ている。



「なぁ」


小声だった。


「これ絶対おかしいだろ」



「今さらかよ」


俺も小声で返す。



「いや今さらじゃねぇよ」


グリードが俺を指差した。


「前に白甲冑に刺されてただろ!?」


「なんで今は襲われねぇんだよ!?」



知らねぇよ。


俺が聞きたい。



その時。


少し前を歩いていたクレイスが口を開いた。


「ええ」


銀のレンズが静かに光る。


「私も気になっています」



グリードが振り向く。


「分かるんですか!?」



「まだ」


クレイスは即答した。


「ですが」


そこで言葉を切る。



クレイスの視線は白甲冑に向いていた。


「前回と今回で、何かが変わっています」



何か。


って何だよ。



聞こうとした時だった。



先頭を歩いていたシンが立ち止まる。



フィオが首を傾げた。


「シン?」



シンは答えない。


じっと前を見ている。



ルーも眉をひそめた。


「どうしたの?」



しばらくして。


シンが呟く。


「聞こえる」



クレイスが反応した。


「鐘ですか」



シンは首を振る。


「違う」


短い返答。



それだけなのに。


なぜか背筋が冷えた。



「声だ」



風が吹く。


巡礼路の奥から。


冷たい風。



誰も喋らない。


いや。


喋れなかった。



シンは冗談を言う人じゃない。


だから怖い。



やがて。



先頭のケッヒル大佐が足を止めた。


全員が止まる。



その先。


霧の向こうに。


巨大な石門が立っていた。



崩れかけた古い門。


蔦が絡み。


苔が張り付き。


誰も読めない文字が刻まれている。



そして。


門の中央。


赤黒い染みが見えた。



クレイスが近付く。


指先で触れる。



銀のレンズが細くなった。


「新しい」



レオンが目を細める。


「血か」



「そのようです」


クレイスが立ち上がる。



「警備隊でしょうか」


ミオが小さく呟く。



けど。


クレイスは首を振った。


「違います」



全員の視線が集まる。



クレイスは門の前の地面を見ていた。


「足跡が多すぎる」



風が吹く。



門の向こうは見えない。


霧しかない。



その時だった。



シンの目が細くなる。


初めて。


明確な敵意が宿った。


「いた」



フィオが振り向く。


「何が?」



シンは門の向こうを見たまま答える。


「黒い方だ」



フィオが目を見開く。


「黒い方って……」



シンは答えない。


ただ。


石門の向こうを見ていた。


まるで。


そこに何かいることを確信しているみたいに。



冷たい風が吹く。


門の隙間から流れてくる風が。


妙に冷たかった。



クレイスが石門へ近付く。


古びた文字を指でなぞる。


銀のレンズが静かに光った。



「妙ですね」


小さな声だった。



レオンが振り向く。


「何がだ」



「削られています」


クレイスが石門の中央を指した。



そこだけ。


不自然に傷が走っている。


まるで。


誰かが文字を消したみたいに。



「読めるのか?」


グリードが聞く。



「いえ」


クレイスは首を振った。


「ですが」


「隠したかったのでしょう」



ぞくりとした。


なんでそんなことが分かるんだよ。



クレイスは石門を見上げる。


「文字を消す理由は二つです」


「知られたくないか」


「思い出されたくないか」



風が吹く。



誰も口を開かなかった。


なんか嫌な言い方だった。



その時。


頭の奥が痛んだ。



ズキッ――。



思わず眉を押さえる。



まただ。


鐘が近付くほど。


頭が痛くなる。



白い霧。


鐘の音。



そして――


白い影。



門の向こう。


誰かが立っていた。



白い。


人影。



俺は息を呑む。



いた。


間違いない。


あの時見たやつだ。



「――」



声が出ない。


瞬きをする。



次の瞬間。


消えていた。



誰も反応していない。



見えていたのは。


俺だけだった。



「シュトック?」


リシェルが心配そうに覗き込む。


「顔色が……」



「いや」


喉が渇く。


「なんでもない」


そう答えるしかなかった。



その時だった。



ゴォォォォォン――。



鐘が鳴る。



今までより近い。


門の向こうから。


直接響いてくるみたいだった。



全員が身構える。



ギギギ……



嫌な音が響いた。



石門が動く。


ゆっくりと。


わずかに開いていく。



グリードが青ざめた。


「おい」


「おいおいおい……」



レオンが剣を構える。



ドルガンが大剣を肩へ担ぐ。



カイゼルが舌打ちした。



アルスも静かに細剣を抜く。



皆が門の向こうを警戒している。


クレイスだけは違った。


銀のレンズ越しに。


門そのものを観察している。


「妙ですね」



いや。


もう全部妙だろ。



門の隙間。


その奥は暗い。


何も見えない。



でも。


目を離せなかった。



何かいる。



シンが一歩前へ出る。


フィオとルーが、反射的にその後ろへ回った。



「来る」


低い声だった。



その直後。


闇の奥から。


重い足音が響いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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