白甲冑
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鐘が鳴る。
低く。
重く。
腹の底まで響く音だった。
ゴォォォォォン――。
その音と同時だった。
白甲冑たちが、一斉に動く。
「来るぞ!」
グリードが叫んだ。
霧の向こう。
白い影が雪崩れるように迫ってくる。
速い。
思ったよりずっと速い。
前に戦った時の一体とは違う。
数がいる。
十。
二十。
いや。
霧の奥には、まだ見えていない影がある。
ケッヒル大佐の声が飛んだ。
「前衛!」
その一言だけだった。
でも、第7は即座に動く。
レオン。
ドルガン。
カイゼル。
三人が前へ出た。
まるで最初から決まっていたみたいに。
先頭の白甲冑が飛び込んでくる。
レオンが剣を振るった。
銀閃。
一撃だった。
白甲冑の首が宙を舞う。
だが。
倒れない。
首を失ったまま。
白甲冑は走る。
「なっ――」
思わず息を呑んだ。
その瞬間。
ドルガンが突っ込む。
「邪魔だァ!」
轟音。
大剣が唸る。
白甲冑がまとめて吹き飛んだ。
三体。
四体。
地面を転がり、木へ叩きつけられる。
だけど。
それでも動いている。
まるで痛みを感じていない。
カイゼルが消えた。
そう見えた。
次に見えた時には。
白甲冑の群れの中にいる。
一閃。
二閃。
三閃。
白い影が次々と崩れていく。
速すぎて見えない。
グリードが呆然と呟いた。
「なんだよあれ……」
アルスが笑った。
「相変わらず綺麗だね」
そう言った本人も動く。
白銀の細剣。
最小の動き。
最短の軌道。
白甲冑の関節だけを正確に貫いていく。
まるで戦っているんじゃない。
解体しているみたいだった。
だけど。
違和感があった。
倒れた白甲冑が。
立ち上がる。
また一体。
さらに一体。
レオンが眉をひそめた。
「おかしい」
ドルガンも笑っていない。
「おいおい」
「勘弁しろよ」
鐘が鳴る。
ゴォォォォォン――。
その瞬間だった。
倒れていた白甲冑が。
また動いた。
まるで。
鐘に呼ばれたみたいに。
クレイスの目が変わる。
銀のレンズが、白甲冑ではなく巡礼路の奥を見ていた。
「……なるほど」
小さな声だった。
けど。
その声をケッヒル大佐は聞いていた。
「気付いたか」
クレイスが顔を上げる。
「まだ確証はありません」
「ですが――」
そこで言葉を切った。
銀のレンズが細くなる。
「何かがあります」
「鐘の向こうに」
ケッヒル大佐は頷いた。
驚きはなかった。
まるで。
最初から分かっていたみたいに。
その時。
白甲冑たちが、一斉にこちらを向く。
全員。
同じ動きだった。
ぞっとするほど揃っていた。
人間じゃない。
兵士でもない。
何か別のもの。
兵士が震える声を出した。
「来る……」
「見つかった……」
リシェルが肩を押さえる。
「大丈夫です」
けど。
兵士は首を振った。
血の気のない顔で。
巡礼路の奥を見ている。
「あれが……」
「あれが起きた……」
鐘が鳴る。
ゴォォォォォン――。
霧が揺れる。
そして。
巡礼路の最奥。
誰もいないはずの場所で。
巨大な影が。
ゆっくりと立ち上がった。
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