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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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巡礼路の鐘

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

――ゴォォォォォン。



鐘の音は。


一度だけじゃなかった。


霧の奥から。


重い音が何度も響く。



兵士は震えていた。


まるで。


その音を聞くだけで壊れてしまうみたいに。



「来る」


「来る」


「来る」



壊れたように繰り返す。



リシェルが必死に肩を押さえる。


「大丈夫です」


「もう大丈夫ですから」



でも。


兵士の目は。


別の何かを見ていた。



クレイスが静かに口を開く。


「巡礼路の鐘は廃されています」


「記録上、百年以上前に――」



「クレイス」


低い声。


ケッヒル大佐だった。



クレイスが言葉を止める。


銀のレンズが向く。



「知っているのですか」



真っ直ぐだった。


逃がさない目。



だけど。


ケッヒル大佐は答えない。



ただ。


霧の奥を見ている。



その横顔を見て。


初めて思った。



この人。


本当に知らないんじゃない。


知っていて言わないんだ。



ローグ将軍と話していた時もそうだった。



白甲冑。


王殺し。


そして巡礼路。



全部どこかで繋がってる。



「大佐」


今度はレオンだった。


珍しく。


強い声。



「説明を求めます」



空気が変わる。



レオンがそう言うなら。


聞く権利がある。


そんな雰囲気だった。



ケッヒル大佐は。


短く答えた。



「今は戦場だ」


それだけ。



クレイスの眉がわずかに動く。



レオンも黙った。



納得したわけじゃない。



でも。


これ以上は聞けない。


そういう声だった。



その時。



「おい」


ドルガンが言った。



酒瓶は持っていない。


完全に本気の顔。



「見ろ」



全員の視線が前を向く。



霧。



その向こう。



白い影。


まだいる。



いや。



増えていた。



一つ。


二つ。


三つ。



違う。


もっとだ。



アルスの笑顔が消える。


「……あれ」


珍しく声が低い。


「動いてない」



確かに。


影は立っている。


ただ立っているだけ。



こっちを見て。


じっと。



「気味が悪いな」


ミオが小さく呟く。



フィオが首を振る。


「違う」



東嶺の双剣使い。


その目が細くなる。


「見てるんじゃない」



ぞわり。


背筋が冷えた。



「じゃあ何だよ」


グリードが聞く。



フィオは答えた。


「待ってる」



誰も喋らなかった。


その言葉が。


妙に嫌だった。



待っている。


何を。


誰を。



その時。


シンが空を見た。



東嶺最強。


ほとんど喋らない男。


そのシンが。


ぽつりと言う。



「遅い」



「何が?」


俺が聞く。



シンは霧の奥を見たまま。



答えた。


「鳥がいない」



――。



全員が空を見る。



いない。


一羽も。



さっきまで気付かなかった。



森なのに。


鳥の声がしない。


風の音しかしない。



クレイスの目が変わる。


銀のレンズが細められた。



「なるほど」



何かに気付いた顔だった。



そして。



巡礼路の入口。


崩れた石門。



その上に。


誰かが立っていた。



白い甲冑。



今度こそ。


誰が見ても。


白甲冑だった。



鐘の音が鳴る。



――ゴォォォォォン。



白甲冑は動かない。



だが。


その背後。



霧の奥から。



さらに。


さらに。


さらに。



白い影が現れ始める。



まるで。


呼ばれたみたいに。



そこで。


ケッヒル大佐が。


静かに剣を抜いた。



ガシュ。



重い音。



第7の空気が変わる。



「陣形を組め」


低い声。


「敵だ」



鐘の音が。


霧の中へ響いていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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