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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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巡礼路の霧

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

王都を出てから、三時間ほど経った。


太陽は昇っている。



なのに。


霧だけが消えなかった。


いや。


むしろ濃くなっている。



白い靄が街道を覆い。


遠くの景色を飲み込んでいく。



「……気持ち悪ぃな」


グリードが呟いた。



同感だった。



普通じゃない。


見通しが悪いとか、そういう話じゃない。


何かが隠れている気がする。


そんな霧だった。



先頭を進むケッヒル大佐は、速度を落とさない。



ローグ将軍の言葉が頭をよぎる。



――死体がない戦場は、普通の戦場じゃない。



あの時は意味が分からなかった。


今も分からない。



でも。


なんとなく嫌な予感だけはしていた。



「前方、集落!」


斥候の声が飛ぶ。



全員の視線が前を向いた。



霧の向こう。


小さな村が見えてくる。



木造の家。


畑。


井戸。



どこにでもある村だった。


……人がいれば。



「静かだね」


リシェルが小さく呟く。



確かに。


静かすぎた。



犬の声もない。


子供の声もない。


生活の音がしない。



村が。


息をしていないみたいだった。



「警戒」


ケッヒル大佐が短く言う。



第7が自然に散開する。



ドルガンの笑顔が消えた。



カイゼルも。


いつの間にか剣へ手を置いている。



俺たちは村へ入った。



そして。


全員が足を止める。



食卓の上。


まだパンが残っていた。


井戸には桶が下がったまま。


洗濯物が風に揺れている。



なのに。


人だけがいない。



「避難……?」


思わず呟く。



「違うな」


答えたのはレオンだった。



彼は開いたままの家の扉を見る。


「避難なら荷物を持つ」


「これは途中で消えている」



途中で。


その言葉が妙に引っかかった。



クレイスがしゃがみ込む。


銀のレンズが地面を映した。



「足跡があります」



全員が集まる。



でも。


クレイスは首を傾げた。



珍しい。



「おかしいですね」


銀のレンズが細くなる。



「裸足です」



クレイスは続けない。


銀のレンズだけが地面を追っていた。



「……は?」


グリードが声を漏らした。



俺も同じ気持ちだった。



裸足?


村人?



いや。


数が多すぎる。



クレイスは地面を指した。



「こちらも」


「こちらもです」



見れば。


無数の足跡。



全部。


南へ向かっていた。



旧アルヴェリア巡礼路。


またそこだ。



その時だった。



「見られてる」


フィオだった。



空気が変わる。


東嶺の三人が同時に周囲を見る。



ルーの表情から笑みが消える。



シンは黙ったまま霧の奥を見ていた。


「いる」


短い声だった。



カイゼルの手が剣を握る。



アルスも細剣へ指を添えた。



そして。


ドルガンが初めて酒瓶を下ろした。



ガコン。


鈍い音。



その瞬間。


全員の緊張が一段上がる。



俺でも分かった。


あの人が本気になる時なんだ。



「おい」


ドルガンが顎をしゃくる。



村の入口。


古い石碑。


巡礼路の道標だった。



表面に新しい傷がある。



誰かが。


剣で刻んだ文字。



クレイスが石碑へ近づく。


指先で傷をなぞる。



銀のレンズが、刻まれた文字を追った。



やがて。


静かに口を開く。



「帰れ」



風が吹く。


白い霧が揺れた。



その時。


ケッヒル大佐が初めて足を止めた。



視線は石碑じゃない。


その向こう。


霧の奥だった。



「全隊停止」


低い声。



一瞬で第7が止まる。



誰も喋らない。



そして。



霧の向こう。


何かが立っていた。



白い。


人影。



いや。


人にしては大きい。



それは微動だにせず。


こちらを見ていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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