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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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動き出す第7

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「第7歩兵隊、全隊出征」



その瞬間。


本軍兵士たちの顔つきが変わった。



「急げ!」


「南門側へ装備搬送!」


「騎馬班、先行準備!」



怒号が飛び交う。



うわ。


なんか本当に始まったんだけど。



フィナは、まだ俺の袖を掴んでいた。


「……行くの?」


小さな声だった。



いや。


そんな顔されると困る。



セレーナが、静かにフィナの肩へ手を置く。


「フィナ」



フィナは、小さく首を振った。


「やだ」



レオンの目が、わずかに細くなる。


クレイスの銀のレンズが、静かにこちらを向いた。



フィナは、ぎゅっと俺の袖を掴む。


「シュトック、またいなくなる」



――。



一瞬。


頭が真っ白になった。



……また?



え?



セレーナの表情が変わる。


「フィナ」



珍しく。


少し強い声だった。



フィナ自身も、はっとした顔をする。


「あ……」



まるで。


自分でも、何を言ったのか分かってないみたいに。



クレイスが、静かに目を細める。


銀のレンズが淡く光った。



ケッヒル大佐は、何も言わない。


ただ。


鋭い目だけが、フィナを見ていた。



やがて。


セレーナが、そっとフィナを抱き寄せる。


「疲れてるの」


「少し休みましょう」



フィナは、まだ俺を見ていた。


不安そうな目。



……なんなんだよ。



「行くぞ」


低い声。


ケッヒル大佐だった。



リシェルが俺の手を引く。



フィナ……。


胸の奥が、妙にざわつく。




本軍装備区画は、まるで別世界だった。


大量の鎧。


並ぶ長剣。


軍旗。


松明の匂い。


武器が擦れる音が、あちこちで響いている。



「うわ……」


思わず声が漏れた。



グリードも、完全に圧倒されている。


「マジかよ……」


「本軍ってこんなんなのか……」



ドルガンは、樽みたいな酒瓶を片手に笑った。


「ビビってんじゃねぇぞ坊主ども!」



「また酒か」


近くの本軍兵士が、呆れた顔をする。



ドルガンは、ガハハッと笑った。


「飲んでる方が調子いいんだよ!」



……そうなんだ。



本軍兵士たちが、慣れた様子で道を開けていく。


ドルガンが通るたびに。


みんな距離を取っていた。



……なんなんだこの人。



その時だった。



「止まりなさい」


女の声。



振り向く。


……美人だ。



長い黒髪を後ろで束ねた、本軍剣士。


背は高い。


鋭い目。



なんか怖ぇ。



その女性は、真っ直ぐ俺へ近づいてくる。



その目が、俺の脇腹へ向いた。


まだ。


リシェルの回復光が、薄く残っている。



「傷口」


「まだ開いてるじゃない」


「何してるのよあなた」



「いや、出征なんで――」



「歩くなら巻き直す」


「死にたいの?」



いきなり怖ぇ。



でも。


手つきは妙に慣れていた。



リシェルが、少し安心した顔をする。


「ヴェルナ上級剣士」



上級剣士!?



その女性剣士が、呆れたように息を吐く。


「ケッヒル隊は毎回これ」


「怪我人まで前線に連れてくんだから」



そう言いながら。


手際よく包帯を巻き直していく。



痛ぇ。



でも。


さっきより動きやすい。



「無理したら、次は縫うわよ」



最後に包帯の固定を確かめる。


ヴェルナはようやく俺から離れた。



やっぱり怖ぇ。




その横で。


アルスが、腰の細剣を軽く抜いた。


白銀の刀身が、松明の光を滑る。



「へぇ」


「やっぱり本軍の研ぎ師は違うね」


軽い口調だった。



アルスは、刃へ指先を添える。



「これなら、人も鎧もまとめていくらでも斬れそうだ」


さらっと言った。



……すげぇ。



レオンが、深々とため息を吐く。


「その顔やめろ」


「剣見てる時のお前、誰でも両断しそうだ」



アルスは、爽やかに笑った。


「褒め言葉かな?」



「違う」




その時だった。



「……チッ」


低い舌打ち。



入口の壁へ寄りかかる男がいた。


でかい剣。


鋭い目。



周囲の本軍兵士たちですら、微妙に距離を取っている。



カイゼルだった。


露骨に嫌そうな顔をしている。



ドルガンが、大笑いする。


「お、来たか!」



「うるせぇ」


短い返答だった。



グリードが、小さく肩をすくめる。


「うわ、機嫌悪ぃ」



カイゼルが、ちらっとこちらを見る。


「役に立たない怪我人まで混ぜるのか」



「うっ」


何も言い返せねぇ。



その時だった。



奥の通路から。


規則正しい軍靴の音が響いた。



本軍兵士たちが、一斉に姿勢を正す。


空気が張る。



……この感じ。


見なくても分かる。



レオンが、小さく息を吐く。


「ローグ将軍か」



やっぱり。



現れたのは。


本軍将軍、ローグ・ハイゼンだった。

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