出征命令
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「ドルガン・バレスだ」
「第7で一番強ぇ」
うわ。
自分で言ったよこの人。
しかも。
誰も否定しねぇ。
本当に強いのかよ……。
ドルガンは、豪快に笑いながら近づいてくる。
その途中で。
ふと。
俺の両手を見た。
右。
リシェル。
左。
フィナ。
……あ。
ドルガンの眉が、ぐいっと上がる。
「おいおい」
ニヤリと笑った。
「なんだ坊主」
「なかなかやるじゃねぇか」
嫌な予感しかしない。
ドルガンは、ガハハッと笑った。
「剣士見習いのくせに、両手にベッピンとはなァ!」
「ちょっ――」
「べ、別にそういうのじゃ――」
リシェルの顔が、一気に赤くなる。
フィナは、きょとんとしていた。
たぶん意味分かってない。
助かった。
……いや助かってない。
ドルガンは、さらに笑う。
「しかもそっちは、王家のお姫様だろ?」
部屋が止まった。
え?
俺も止まった。
セレーナの目が細くなる。
「ドルガン」
静かな声だった。
でも怖ぇ。
ドルガンは、まるで気にしていない。
「おー怖ぇ怖ぇ」
「そんな睨むなよ姉ちゃん」
ね、姉ちゃん!?
この人、王家相手にその態度なの!?
レオンが、深々とため息を吐く。
「……相変わらずだな」
ケッヒル大佐が、低く言った。
「ドルガン」
その一言だけで。
ドルガンが、肩をすくめる。
「へいへい」
……従うんだ。
なんなんだ、第7って。
その時。
クレイスが、静かに資料を閉じた。
銀のレンズが光る。
「大佐」
「私も同行します」
ケッヒル大佐は、即答した。
「好きにしろ」
「ありがとうございます」
へぇー。
ついて来るんだ。
銀のレンズが、こちらへ向く。
……いや。
なんか怖ぇんだけど。
「俺のこと、見張ってたりしないですよね?」
クレイスは、一瞬だけ沈黙した。
「見張る?」
わずかに首を傾げる。
「君は重要な観察対象です」
おいおいおい。
やっぱり見張るのかよ。
クレイスは、そのまま続けた。
「旧アルヴェリア巡礼路」
「白甲冑」
「そして、王殺し」
銀のレンズが、わずかに細められる。
「現地で繋がる可能性があります」
ケッヒル大佐は答えない。
ただ。
視線だけが、静かにクレイスを見る。
……まただ。
この二人。
会話してるのに。
全然違うもの見てる感じがする。
その時だった。
「バルツァー」
低い声。
グリードが、慌てて姿勢を正す。
「は、はい!」
ケッヒル大佐が短く言う。
「お前も準剣士として第7へ編入する」
「装備を受領しろ」
グリードの目が、一瞬見開かれる。
だが、すぐに。
ニヤリと笑った。
「……了解っす」
なんか嬉しそうだなお前。
「東嶺の三名については、こちらで話を通しておく」
ケッヒル大佐の言葉に。
ミオが、ほっと息を吐いた。
アルスは、軽く肩をすくめる。
「いやぁ、国際問題にならなくて良かったねぇ」
レオンが呆れた顔をする。
「少しは緊張感を持て」
爽やかな笑顔で、アルスは言葉を送り出す。
「持ってるよ」
「これでもね」
……全然そう見えねぇ。
フィナは、まだ俺の隣から動かなかった。
セレーナも、その後ろに立っている。
なんかもう。
このまま一緒に来そうなんだけど。
ケッヒル大佐が、ゆっくり口を開く。
「出発は夜明け前だ」
低い声だった。
「第7歩兵隊、全隊出征」
その瞬間。
本軍兵士たちの顔つきが変わった。
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