王殺し
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「……記憶封鎖か」
低い声だった。
意味が分からない。
「いや待ってください」
「記憶封鎖ってなんですか」
ケッヒル大佐は答えない。
代わりに。
クレイスが、静かに口を開いた。
「重大な案件において、ごく稀に用いられる処置です」
銀のレンズが、淡く光る。
「特定記憶の封印」
「あるいは改変」
ちょっと待て。
さらっと怖ぇこと言うな。
ミオの顔が引きつる。
「いやいやいや」
「そんなこと、本当に出来るんですか?」
「理論上は」
クレイスは淡々としていた。
理論上で済ませる話じゃねぇだろ。
レオンが、低く聞く。
「だが、誰がそんなことをする」
その瞬間だった。
ケッヒル大佐の目が、わずかに細くなる。
……初めてだった。
この人が。
露骨に何かを嫌がったの。
クレイスも気づいたらしい。
銀のレンズが、静かにそちらを向く。
「大佐」
「あなたは、何を知っているのです?」
短い沈黙。
やがて。
ケッヒル大佐が、低く口を開いた。
「……二十年前」
「旧王都陥落の際、“王殺し”と呼ばれた男がいた」
部屋が静まり返る。
グリードが、小さく呟く。
「王殺し……」
ケッヒル大佐は続けた。
「旧王家最後の王を討った重臣だ」
「だが――」
そこで言葉が切れる。
レオンが、腕を組んだまま低く聞く。
「聞いたことがない話だな」
「記録から消えた」
ケッヒル大佐が答える。
「自ら消した」
誰も、すぐには口を開かなかった。
いや。
待て。
待て待て待て。
なんでそんな話になってんだ。
クレイスが、静かに聞く。
「その人物が、今回の件と関係していると?」
アルスが口を開く。
「エイゼン君が、旧王家の血統ってことなんじゃないの?」
「王殺し?」
「話が見えないなぁ」
ケッヒル大佐は、しばらく黙っていた。
鋭い目だけが、こちらを見る。
……なんだよ。
その目。
怖ぇぇよ。
やがて。
「……まだ早い」
低い声だった。
クレイスの銀のレンズが、わずかに細められる。
レオンも、何かを考え込んでいる。
フィナは、まだ俺の手を握ったままだった。
小さな手が、少し汗ばんでいる。
リシェルまで、不安そうに俺を見ていた。
……いや。
俺のことじゃ?
完全に置いてかれてるんだけど。
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