消えた採掘区
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いや。
待て待て待て。
「俺、そこに住んでましたけど……」
思わず言い返す。
ケッヒル大佐は、ゆっくりこちらを見た。
鋭い目。
その視線だけで、変な汗が出る。
クレイスが、静かに確認する。
「記憶違い、という可能性は」
「ないです」
即答。
「採掘区の坑道も覚えてますし」
「冬はクソ寒くて」
「食糧は少ねぇし」
「両親と、あと姉と妹と、あそこで暮らしてました」
言いながら。
少しずつ、気味が悪くなってくる。
……なんだよ。
なんでそんな顔する。
レオンが、低く呟いた。
「壊滅後に再建された可能性は?」
クレイスが首を振る。
「記録上、第五採掘区は封鎖されたままです」
「住民の再定住記録も存在しません」
ミオの顔が青くなる。
「じゃ、じゃあ……」
ちょ、ちょっと待て。
頭が回らない……。
夢かこれは。
グリードまで、笑えなくなっていた。
「……おい」
「マジでどうなってんだよ」
フィナは、まだ俺の手を握ったままだった。
その小さな手は。
少しだけ震えていた。
リシェルまで、不安そうに俺を見ていた。
セレーナが、小さく息を吐く。
「……シュトック」
「あなた、自分の家族のこと覚えてる?」
「は?」
なんだその質問。
「覚えてますよ」
「姉と妹がいて――」
そこまで言って。
言葉が止まる。
……あれ?
ふと。
違和感が走った。
「どうしました」
クレイスの声。
俺は、無意識に額を押さえる。
「いや……」
思い出せる。
思い出せる、はずなのに。
「顔が……」
全員の視線が集まる。
喉が乾く。
「姉貴と妹の顔、うまく思い出せねぇ……」
誰も、すぐには口を開かなかった。
クレイスの銀のレンズだけが、静かにこちらを見ている。
その時だった。
ケッヒル大佐が、低く呟く。
「……記憶封鎖か」
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