北部の少年
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「……アルヴェリア聖潮国」
その声だけが。
妙に重く響いた。
ケッヒル大佐は、しばらく資料を見たままだった。
やがて。
低い声で呟く。
「本来なら、とうに歴史から消えている国だ」
レオンが、腕を組んだまま低く聞く。
「だが、白甲冑は存在した」
ケッヒル大佐が、短く答える。
「そうだ」
クレイスは、静かに資料を整理している。
銀のレンズが、淡く光った。
「確認する必要があります」
「エイゼンシュタイン」
「北部の出身地は」
「ノルデン外縁です」
「第五採掘区の近く」
クレイスの手が止まる。
レオンの目も、わずかに細くなった。
……なんだよ。
今度はなんだ。
「その辺、なんかあるんですか」
クレイスが、静かに資料をめくる。
「旧王国末期」
「王都陥落直前、一部王族が北方へ逃れた記録があります」
やめろやめろやめろ。
嫌な繋がり方すんな。
グリードが、小さく呟く。
「……マジかよ」
アルスまで、珍しく黙っていた。
その時だった。
コンコン。
扉が叩かれる。
本軍兵士が、一枚の書簡を持って入ってきた。
「ケッヒル大佐」
「北部方面の追加報告です」
ケッヒル大佐が、封を切る。
その瞬間。
表情が、わずかに変わった。
初めてだった。
この人の顔が動いたの。
クレイスが静かに聞く。
「何がありました」
数秒後。
ケッヒル大佐が、低く呟く。
「……ノルデン外縁第五採掘区」
レオンの目が細くなる。
ケッヒル大佐は、手元の書簡から目を離さない。
「十数年前の大火で、壊滅している」
……は?
思わず、言葉が漏れた。
「いや、待ってください」
「俺、そこに住んでましたけど……」
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