地下へ
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王城へ戻る道中。
誰も、あまり喋らなかった。
本軍兵士たちだけが、淡々と動いている。
巡回。
封鎖。
伝令。
さっきまでの混乱が嘘みたいだった。
……本当に別世界だな。
「シュトック」
隣から、小さな声。
リシェルだった。
まだ、俺の手を離していない。
「本当に歩ける?」
「……まぁ、なんとか」
正直。
全然なんとかなんかじゃない。
やっと歩いてるわ。
でも。
今止まる方が、なんか嫌だな。
フィナも、反対側で俺の服を掴んだまま歩いている。
セレーナが、ちらりと俺を見る。
「シュトック」
「あなた」
「昔から、こういうことがあったの?」
「は?」
急に何言ってんだ、この人。
「いや、ないですけど」
「……そう」
短い返事。
でも。
まだ何か考えてる顔だった。
前方では。
クレイスがケッヒル大佐と小声で話している。
聞こえない。
ただ。
空気だけで分かる。
かなり重い話だ。
その時。
前を歩いていたアルスが、振り返った。
「で?」
「実際どうだった」
「どうって?」
「その白いのだよ」
軽い口調。
でも。
目は笑っていなかった。
「……分かんねぇっす」
「人っぽいのに、人じゃない感じで」
アルスが、少しだけ真顔になる。
「気味悪ぃな」
さっきまでの軽さが、消えていた。
王城正門が見えてくる。
巨大な城壁。
夕暮れの光。
いつも見てる景色のはずなのに。
今日は、妙に冷たく見えた。
門を抜ける。
本軍兵士たちが、一斉に敬礼した。
ケッヒル大佐が通るだけで、空気が変わる。
すげぇ……。
クレイスが振り返った。
「こちらです」
案内されたのは。
中央宮じゃなかった。
もっと奥。
古い石造りの回廊。
空気が冷たい。
人気もない。
「おいおい……」
グリードが周囲を見回す。
「なんだここ」
ミオも、不安そうに辺りを見た。
「こんな場所、初めて来ました……」
石廊下に、足音が響いていた。
やがて。
古びた鉄扉の前で止まった。
古い紋章が刻まれている。
レオンの表情が変わる。
「その紋章……」
クレイスが静かに答えた。
「旧王家の紋章です」
レオンの目が、わずかに細くなる。
俺は、その紋章を見つめていた。
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