残影
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風だけが、南門外を抜けていく。
誰も、すぐには動かなかった。
アルスが、ゆっくり眉をひそめる。
「……二人には何か見えていたのか?」
「……はい」
答えたのは、フィナだった。
小さな声。
まだ俺の服を掴んでいる。
セレーナが、そっと妹の肩を抱き寄せた。
「フィナ」
「落ち着いて」
でも。
セレーナ自身も、緊張していた。
レオンが低く呟く。
「空気が変わったのは分かった」
「だが、姿は見えない」
クレイスが静かに目を伏せる。
「過去の記録と一致する」
また、その言葉。
「だから何なんです?」
ミオが、不安そうに聞いた。
クレイスは少しだけ黙る。
それから。
「“白を視認した兵”に異常が確認されている」
「精神錯乱、高熱、幻覚症状」
なんだよ、それ。
俺も見たけど……。
グリードが顔をしかめた。
「おいおい……」
「笑えねぇぞ」
精神錯乱?
マジで笑えねぇ。
クレイスの銀レンズが、こちらを向く。
「だが」
「君は、比較的正常だ」
比較的ってなんだよ。
「いや全然正常じゃないですけど」
「傷めちゃくちゃ痛ぇし」
脇腹が熱い。
ズキズキする。
あの白いの見てから、ずっとだ。
クレイスが静かに聞く。
「白は、君を見ていたか?」
喉が詰まる。
思い出す。
赤い光。
首を傾げる仕草。
あれは。
完全に。
「……見られてた気がします」
レオンが黙り込む。
シンだけが、目を細めたままだった。
「妙だな」
低い声。
「敵意とも違う」
アルスが肩をすくめる。
「余計気味悪ぃよ」
その時。
ケッヒル大佐が、一歩前へ出た。
「本軍は周辺警戒を継続」
「エイゼンシュタインは王城へ同行」
短い指示。
でも。
本軍兵士たちが、一瞬で動き始める。
……すげぇ。
空気が切り替わるのが分かる。
クレイスが静かに続けた。
「地下記録庫を開きます」
レオンが反応した。
「地下記録庫?」
ミオも目を丸くする。
「そんな場所あるんですか?」
「旧王城時代の記録区画です」
「現在は封鎖されています」
嫌な予感しかしねぇ。
アルスが、少し楽しそうに笑った。
「面白くなってきたじゃねぇか」
いや。
全然面白くねぇよ。
俺の服を強く掴み直したフィナが、小さく呟いた。
「……まだ、嫌な感じがする」
セレーナの目が、少しだけ鋭くなる。
リシェルは、ずっと俺の手を握ったまま、黙って様子を見ていた。
……剣士になって。
姉ちゃんたち、取り戻すだけだったんだけどな。
なんでこんなことになってんだ、俺。
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