地下記録庫
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巨大な鉄扉が、低い音を立てながら開いていく。
冷たい空気が流れ出てきた。
地下へ続く石階段。
薄暗い。
壁には古い傷みたいな跡が残っていた。
クレイスが先頭を歩いていく。
ケッヒル大佐が、その後ろ。
本軍兵士たちが周囲を固めていた。
完全に機密扱いって感じだ。
「うわ……」
ミオが、小さく声を漏らす。
グリードも辺りを見回した。
「こんな場所があるんだな……」
「正式記録には存在しません」
クレイスが淡々と答える。
ヤベぇ場所じゃん。
石階段を降りる。
足音が、やけに響いた。
リシェルは、まだ俺の手を握ったままだった。
フィナも、服を掴んだまま離れない。
なんか俺、両側から捕まってるんだけど。
その時。
「……シュトック」
フィナの声。
掴んだ俺の服を引っ張る。
見ると。
顔色が悪い。
「どうした?」
フィナが、小さく首を振る。
「下」
「なんか、嫌……」
セレーナの目が細くなる。
そのまま、一行は地下の奥へ進んでいった。
やがて。
最奥へ辿り着く。
そこには、大量の棚が並んでいた。
古い書物。
巻物。
封印箱。
長い年月の匂いがする。
レオンが、小さく息を呑む。
「これは……」
クレイスが静かに口を開いた。
「旧記録区画です」
「現在は、王家管理下の封鎖区画となっています」
王家管理。
……いや、完全に場違いだろ、俺。
アルスだけは、少し面白そうだった。
「いいねぇ」
「こういうの、嫌いじゃない」
グリードが呆れた顔をする。
「あんたのんきだなぁ」
クレイスの手が、一冊の古い報告書を抜き取った。
革張りの表紙。
そこには、王国紋章が刻まれている。
クレイスが、報告書を開く。
紙をめくる音。
銀のレンズが、記録を追っていく。
そして。
クレイスの動きが止まった。
ケッヒル大佐の目が、鋭く細まる。
「……あったか」
低い声だった。
レオンが眉をひそめる。
「何が書かれている」
クレイスは、しばらく黙っていた。
それから。
「“白い存在を視認した”という報告です」
フィナと俺は、思わず息を呑む。
クレイスが続きを読む。
「複数名が精神異常を発症」
「高熱、幻覚、錯乱」
「視認条件は不明」
ページをめくる音だけが響く。
その時だった。
クレイスの指が、ぴたりと止まる。
銀のレンズが、わずかに細められた。
「……妙ですね」
ケッヒル大佐が低く聞く。
「どうした」
クレイスは、開いたページを見つめたまま答えた。
「該当箇所だけ、抜き取られています」
レオンの表情が変わる。
「誰がそんなことを……」
クレイスは答えない。
ケッヒル大佐の目が、わずかに細くなる。
銀のレンズだけが、欠けたページへ向いていた。
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