中央宮
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
王城中央宮。
遠くから見るのと、実際に立つのとでは、まるで違った。
でかい。
白い石壁が、空へ突き刺さるみたいに伸びている。
「……うわ」
思わず声が漏れた。
その横を、ミオがぴょこぴょこ歩いていく。
「ほらほらー!」
「止まると置いてくよー!」
「待てって……!」
脇腹がまだ痛い。
無理に動くたび、傷が軋む。
でも。
立ち止まるわけにもいかなかった。
中央宮へ続く通路。
その両脇には、本軍兵士たちが並んでいる。
誰も喋らない。
重い鎧。
鋭い目。
それだけで分かる。
強い。
守備隊とは違う。
本物の戦場を越えてきた兵たちだ。
その空気に、自然と背筋が伸びる。
「緊張してる?」
ミオが振り向く。
「……そりゃするだろ」
「だいじょぶだいじょぶ!」
「たぶん殺されないから!」
「怖えこと言うな!!」
思わず叫ぶ。
ミオがけらけら笑った。
……なんなんだこいつ。
だけど。
少しだけ、肩の力が抜ける。
その時だった。
前方。
巨大な扉が見えた。
黒鉄の装飾。
ヴァルクレインの紋章。
「着いたよ」
ミオが言う。
その声だけで。
急に喉が乾いた。
扉の前。
二人の近衛兵が立っている。
槍を持ったまま、微動だにしない。
「伝令ミオ!」
「エイゼンシュタインを連れてきました!」
近衛兵が頷く。
重い音と共に、扉が開いた。
ギィィ――。
冷たい空気が流れてくる。
広い。
思わず息を呑む。
長い赤絨毯。
高い天井。
巨大な円卓。
そして。
並ぶ視線。
「……っ」
空気が重い。
そこにいたのは。
ヴァルクレインの中枢、そのものだった。
まず目に入ったのは。
灰銀の髪。
ケッヒル隊長だった。
いや。
違う。
今日は隊長じゃない。
黒い軍装。
肩章。
鋭い目。
完全に、“本軍の男”だった。
「来たか」
低い声。
その隣。
巨大な男が腕を組んでいる。
赤茶の髪。
無数の古傷。
獣みたいな威圧感。
「そいつか」
声が低い。
空気が震えるみたいだった。
ケッヒルが短く言う。
「ローグ将軍だ」
……将軍。
つまり。
この人が。
ケッヒル隊長の叔父。
ローグ・ハイゼン。
ローグが、じろりとこっちを見る。
「まだガキだな」
「叔父上」
ケッヒルの声が少し低くなる。
ローグが鼻で笑った。
「だが」
「死地で女を庇った根性は嫌いじゃねぇ」
一瞬。
言葉が詰まる。
なんで知ってる。
その時。
部屋の奥。
静かに椅子へ座っていた老人が、目を開いた。
白髪。
深い皺。
だけど。
その目だけは、異様に鋭い。
空気が変わる。
誰も喋らない。
老人が、静かにこっちを見た。
「……エイゼンシュタインか」
低い声だった。
でも。
不思議と、部屋中へ響く。
レオンでさえ、姿勢を正している。
ミオまで黙っていた。
分かる。
この人だ。
ヴァルクレイン本軍総司令官。
ガルド・ヴァルゼン。
王国最強軍の頂点。
ガルドが、しばらく黙ったまま俺を見る。
まるで。
中身まで見られてるみたいだった。
やがて。
静かに口を開く。
「……よく生き残った」
その一言だけだった。
なのに。
胸の奥が、妙に熱くなる。
その時だった。
「おじいさま」
澄んだ声が響く。
視線が動く。
窓際。
白いドレスの少女が立っていた。
陽の光を受けて、髪が輝いている。
プラチナブロンド。
人形みたいな顔。
でも。
その瞳だけが、不思議なくらい真っ直ぐだった。
少女が、こっちを見る。
じっと。
見つめる。
そして。
小さく笑った。
「シュトック、だ」
……は?
部屋の空気が、一瞬止まった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク
・評価(☆☆☆☆☆)
・感想
などいただけるととても励みになります!
今後も更新していくので、よろしくお願いします!




