王女
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部屋の空気が、止まっていた。
「シュトック、だ」
白い少女が、じっと俺を見る。
プラチナブロンドの髪。
透き通るみたいな肌。
人形みたいに整った少女だった。
その瞳からは、妙に目を離せなかった。
「……フィナ様」
レオンが、小さく眉を寄せる。
フィナ。
つまり。
第二王女。
少女――フィナが、ゆっくりこっちへ歩いてくる。
足音が小さい。
なのに。
なぜか、部屋中の視線が集まっていた。
ガルド総司令官ですら、黙って見ている。
フィナが、俺の目の前で止まる。
じっ。
近い。
「……えっと」
何言えばいいんだこれ。
フィナが、小さく首を傾げる。
「シュトック」
また言った。
その瞬間。
後ろから、冷たい声が飛ぶ。
「フィナ」
第一王女セレーナだった。
鋭い視線。
でも。
フィナは全然気にしていない。
「だって、シュトックだもの」
意味が分からない。
「おいレオン、どういう――」
「私にも分からん」
即答だった。
珍しく本気で困っている顔をしている。
その時だった。
フィナが、そっと俺の服を掴んだ。
小さな手。
「……まだ、痛い?」
真っ直ぐな目だった。
一瞬。
言葉が詰まる。
「いや、まあ……ちょっとは」
そう答える。
フィナが、少しだけ安心したみたいに笑う。
その笑顔が、妙に可愛かった。
ミオが、後ろで「うわぁ……」って顔をしている。
セレーナの目が細くなる。
なんで空気悪くなってんだ。
その時だった。
ドンッ!!
突然。
巨大な音が部屋へ響いた。
「がっはっはっは!!」
ローグ将軍だった。
豪快に笑いながら、こっちを見ている。
「お前、王女殿下に気に入られたなァ!!」
「いや、意味分かんねえですって!」
「分からんままでいい!」
「若ぇな!!」
笑い声がでかい。
空気が揺れる。
でも。
その豪快さのおかげで、張り詰めていた空気が少し崩れた。
ケッヒルが、小さく溜息を吐く。
「叔父上、話が進みません」
「硬ぇんだよお前は!」
ローグが笑う。
その横で。
ガルド総司令官が、静かに口を開いた。
「……エイゼンシュタイン」
部屋の空気が変わる。
自然と背筋が伸びた。
「はい」
ガルドの目が、真っ直ぐこっちを見る。
「お前たちは、第二城郭区を守り抜いた」
低い声だった。
一言一言がめちゃくちゃ重い。
「本来なら、王都は落ちていた」
誰も喋らない。
「ヴァルクレインは、お前たちの働きを正式に認める」
胸が、熱くなる。
グリード。
リシェル。
レオン。
みんなの顔が浮かぶ。
死にかけながら。
守った。
あそこを。
ガルドが続ける。
「よって」
「守備隊選抜組を、本軍所属準剣士として迎える」
息が止まる。
準剣士。
それって――。
「正式採用ってことだよ」
ミオが小声で囁く。
頭が真っ白になる。
俺たちが?
本軍?
その時。
ガルドの声が、さらに低くなった。
「……だが」
空気が冷える。
「これは褒賞だけではない」
ガルドの目が、細くなる。
「白甲冑について」
「王国は、調査を開始する」
ぞくりとした。
「そして、お前たちには」
「その任に加わってもらう」
傷の痛みを一瞬忘れる。
次の瞬間。
レオンの目が、わずかに動いた。
……知ってたのか?
ガルドが、静かに言う。
「これは、戦争では終わらん」
「国家の問題だ」
遠くで。
重い角笛が鳴った。
ボオォォォ――。
ヴァルクレインが。
動き始めていた。
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