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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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召命

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

王都は、静かだった。


三日前まで。



あれだけ悲鳴と怒号に包まれていたとは、思えないくらいに。



窓の外。


朝の光が、石畳を照らしている。



崩れた壁。


折れた槍。


焼け焦げた跡。


第二城郭区は、まだ傷だらけだった。



それでも。


人が動いている。


兵士。


職人。


荷車。


止まりかけていた王都が、また動き始めていた。



「……ほんとに、生き残ったんだな」


思わず漏れる。


自分でも変な言葉だった。



でも。


まだ少し、信じられなかった。


あの白甲冑。


黒甲冑。


押し潰されるみたいな絶望。


あれを。


本当に、生きて越えたのか。



窓の横。


レオンが腕を組んだまま立っている。


「生き残った、か」


小さく呟く。


その横顔は、少し疲れて見えた。



「……お前も寝てないだろ」


言うと。



レオンが、少しだけ目を細める。


「誰かさんが三日も起きなかったからな」



「うっ」


返せない。



その時。


ベッドの横で、こくり、と小さく頭が揺れた。


リシェルだ。


椅子に座ったまま。


また眠っていた。


さっき起きたばかりなのに。


細い指が、まだ俺の服の端を掴んでいる。



……どんだけ心配してたんだよ。


胸の奥が、少しだけ苦しくなる。



レオンも、それを見ていた。


「シュトックが死ぬんじゃないかって、ずっと泣いてたぞ」



「おい、言うなよ……」


思わず小声になる。



レオンが、珍しく少し笑った。


「熱も下がらなかった」


「治癒術を使い続けて、自分の方が倒れかけていた」



視線が、自然とリシェルへ向く。


金色の髪。


小さな寝息。


その顔は、少しやつれて見えた。



……馬鹿だろ。


いや。


馬鹿なのは俺か。


無茶して。


心配かけて。



その時だった。


遠くで、重い角笛が響く。


ボオォォォ――。


窓ガラスが、びり、と震える。


腹の奥へ落ちてくるみたいな音だった。



「……本軍か」



レオンが頷く。


「ああ」


「北方遠征軍だ」



窓の外を見る。


城壁の向こう。


赤と黒の軍旗が見えた。


数が違う。


整列した重騎兵。


巨大な荷馬車。


長槍隊。


守備隊とは、空気そのものが違った。



「すげぇな……」


自然と声が漏れる。



レオンが静かに言う。


「ヴァルクレイン本軍」


「王国最強の軍だ」



その声には。


少しだけ、誇りが混じっていた。


「間に合わなかったら、王都は落ちていた」


空気が重くなる。


自然と。



三日前の光景が蘇る。


崩れる盾列。


止まらない白甲冑。


押されるカイゼル。



そして。


黒甲冑の赤い光。


ぞくりとした。



「……なあ」


喉が少し乾く。


「結局、あいつら何だったんだ」



レオンが黙る。


数秒。


視線を窓の外へ向けたまま。


「まだ分からない」


短い返事だった。


「だが」


「王家も、本軍も動き始めてる」



その言葉に。


胸の奥がざわつく。


守備隊だけの話じゃない。


もっと大きな何かが、動いている。



その時だった。


コンコン!!



静かな部屋に、場違いなくらい元気な音が響く。


「失礼しまーーす!!」



返事を待たずに、扉が開いた。


飛び込んできたのは、小柄な少女だった。


栗色の髪。


大きめの軍帽。


ぶかぶかの軍服。


歳は、俺たちより少し下くらいか。



「いた!!」


「エイゼンシュタイン発見!!」


びしっ、と指を差される。



「……誰だ?」



「ミオ!」


「本軍伝令隊所属!」



元気がうるさい。


少女――ミオが、ずかずか部屋へ入ってくる。



「いやー、探した探した!」


「総司令部、今めちゃくちゃピリピリしててさー!」



レオンの眉が、ぴくりと動く。


「……総司令部?」



「そ!」


「王城中央宮!」


ミオが、ぐっと顔を近づけてくる。


「総司令官!」


「将軍!」


「王族!」


「それに、ケッヒル大佐までいるよ!」



……今、なんて?


「大佐?」



「そりゃそーでしょ!」


「元・本軍所属だもん!」



頭が追いつかない。


ケッヒル隊長が。


本軍?


しかも。


大佐?



ミオが、にっと笑う。


「で!」


「その大物たちが、君を呼んでる!」



俺を?


なんで。


嫌な予感しかしない。



その時。


窓の外で、再び角笛が鳴った。


ボオォォォ――。


重い音だった。


まるで。


王都そのものが、動き始めたみたいに。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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