統率
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白甲冑の列が、乱れる。
ほんの一瞬。
その隙へ。
カイゼルの大剣が叩き込まれた。
ドォンッ――!!
白甲冑が、まとめて吹き飛ぶ。
壁へ激突する。
石片が舞う。
「押せぇぇぇ!!」
グリードが吠える。
中央の兵が、一気に前へ出た。
今度こそ。
崩れる。
――そう思った。
だが。
白甲冑は、また立ち上がる。
ギギ……ッ。
嫌な音だった。
まるで。
壊れた人形みたいに。
「……まだ立ち上がるのかよ」
兵士の声が震える。
その時だった。
シンが前へ出る。
黒外套が剣を構える。
ギィンッ――!!
火花が散る。
速い。
だが。
今度は違った。
シンの剣筋が、変わっている。
白甲冑へ視線を向けていた。
観察している。
黒外套が目を細める。
「気づいたか」
シンは答えない。
踏み込む。
連撃。
速い。
黒外套が受ける。
だが。
三撃目。
剣が、わずかに止まった。
「……!」
その瞬間。
シンの刃が、白甲冑の槍を叩いた。
ズレる。
後列の槍が噛み合わなくなる。
ガギンッ!!
白甲冑同士の槍がぶつかる。
「そこか」
初めて。
シンが口を開いた。
次の瞬間。
踏み込む。
剣閃。
乱れた白甲冑の首元へ、刃が走る。
ザンッ――!!
白甲冑が、崩れ落ちた。
今度は。
立たない。
「倒した……!」
兵たちの顔が変わる。
行ける。
その空気が走る。
黒外套が、じっとシンを見ている。
「やはり厄介だな」
低い声。
その横を。
ケッヒル隊長が進む。
静かに。
無駄なく。
兵たちが、自然に道を開ける。
誰も叫ばない。
だが。
全員が前へ出る。
それだけの背中だった。
隊長が剣を上げる。
「中央、三歩」
たった、それだけ。
兵列が動く。
盾が前へ。
槍が揃う。
白甲冑の乱れた隙間へ。
寸分違わず、突き込まれる。
ドンッ――!!
初めて。
白甲冑の列が、大きく下がった。
「……す、すげえ」
思わず漏れる。
違う。
強いだけじゃない。
この人。
戦場そのものを動かしている。
その時。
レオンの顔色が変わった。
「待て……」
視線の先。
門の奥。
暗い回廊。
そこに。
白甲冑が、並んでいた。
まだいる。
――だけじゃない。
全員。
微動だにしていない。
「なんで、動かない……?」
嫌な汗が落ちる。
その中央。
ひとつだけ。
黒い甲冑が立っていた。
白ではない。
黒。
そいつだけ。
ゆっくりと、顔を上げる。
空気が、変わった。
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