突破
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少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
カイゼルが笑った。
それだけで。
中央の空気が、変わる。
敵兵が一歩引く。
味方兵が息を呑む。
ケッヒル隊長だけが、静かに前を見ていた。
「中央、押し上げる」
低い声だった。
その一言で、兵列が動く。
「行くぞォ!!」
グリードが吠える。
大剣が石畳を砕きながら振り抜かれる。
ドォンッ!!
前にいた敵兵が、まとめて吹き飛ぶ。
その隙を、カイゼルが進む。
歩くだけだった。
だが。
その一歩ごとに、敵の列が割れていく。
黒装束の二人が左右から飛び込む。
速い。
鋭い。
だが。
ブォンッ――!!
片手で振られた剣が、二人まとめて薙ぎ払った。
壁へ叩きつけられ、動かない。
「……なんなんだ、あれは」
敵兵の声が震える。
中央が崩れた。
「今だ! 前へ!」
ケッヒル隊長の声が響く。
槍列が伸びる。
盾列が押す。
ヴァルクレイン兵が、一気に前へ出た。
その右列。
青い影が走る。
ルー・シャウだった。
敵兵の槍を紙一重でかわし、懐へ滑り込む。
「遅いって言ったでしょ」
首元へ刃が走る。
敵が崩れる。
その背後。
双剣が光る。
フィオ・グランネル。
交差した二本の刃が、敵の剣だけを弾き飛ばす。
「武器は丁寧に扱いましょう」
笑ったまま、肩で押し倒す。
右列の兵たちが勢いづく。
「続けぇ!!」
列が前へ伸びる。
左列では。
「そこ、詰めろ!」
レオンの声が飛ぶ。
兵たちが即座に動く。
崩れかけていた隙間が埋まる。
その前へ、敵兵二人。
エイゼンが踏み込む。
刃を受け流す。
ズラす。
「――フィネア!!」
ザンッ――!!
一人の体勢が崩れる。
そのまま肩をぶつけ、もう一人を押し返す。
「通さねえ!」
左列の兵が吠える。
流れが繋がる。
中央。
ギィンッ――!!
シンと黒外套。
剣戟の火花が絶えない。
黒外套が笑う。
「面白い」
「だが、中央が割れたぞ」
シンは答えない。
踏み込み、連撃。
黒外套が初めて半歩下がる。
その瞬間。
カイゼルが横を通った。
黒外套の目が、わずかに細くなる。
「……なるほど」
初めてだった。
あの男が、警戒を見せたのは。
リシェルは走る。
左列へ。
中央へ。
右列へ。
傷兵へ光を送る。
「まだ立てます!」
兵士が立ち上がる。
槍を握り直す。
各列に、声が戻っていく。
だが。
門の奥から現れた増援は、まだ尽きない。
十。
二十。
さらに続く。
レオンの表情が険しくなる。
「切りがない……」
ケッヒル隊長が剣を上げた。
「なら、道を断つ」
中央を見る。
カイゼルを見る。
カイゼルは肩に剣を乗せたまま、前を見ていた。
「壊せばいいんだろ」
次の瞬間。
地面が、鳴った。
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