総攻勢
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
カイゼルが、一歩出た。
それだけで。
前線の空気が変わった。
敵兵が息を呑む。
味方兵が顔を上げる。
巨躯が進む。
石畳が鳴る。
黒装束の三人が、同時に飛び込んだ。
速い。
鋭い。
迷いがない。
だが。
カイゼルは止まらない。
振るう。
ただ、それだけだった。
ブォンッ――!!
空気が裂ける。
一人が宙を舞う。
二人目が壁へ叩きつけられる。
三人目は剣ごと地面へ沈んだ。
「……うそだろ」
兵士の声が漏れる。
「前へ出ろ」
カイゼルが言う。
低く。
短く。
それだけで、兵たちの足が動いた。
「おおおおお!!」
ヴァルクレイン兵が吠える。
止まりかけていた槍列が進む。
盾列が押し返す。
戦線が、前へ動いた。
「ははっ!!」
グリードが笑う。
「そうでなくちゃなァ!!」
大剣を振り下ろす。
ドォンッ!!
敵兵がまとめて崩れる。
レオンがすぐに叫ぶ。
「右列、詰めろ! 中央、押し込め!」
声が走る。
兵が動く。
乱れていた列が、生き物みたいに整っていく。
「すげえ……」
思わず漏れた。
違う。
強いだけじゃない。
一人入っただけで、全部が繋がっていく。
これが、本物か。
その時。
ギィンッ――!!
中央で火花が爆ぜた。
シンと黒外套。
まだ終わっていない。
黒外套が笑う。
「面白い」
「戦場を戻したか」
シンは答えない。
踏み込む。
連撃。
速い。
だが、黒外套も止める。
「エイゼン!」
レオンの声。
振り向く。
「左から回る敵を止めるぞ!」
「無茶言うな!」
叫びながら走る。
でも。
足は軽い。
今なら、やれる。
敵兵二人が突っ込む。
踏み込む。
刃を流す。
ズラす。
「――フィネア!!」
ザンッ――!!
一人の体勢が崩れる。
その隙に、もう一人の懐へ入る。
肘で押す。
足を払う。
倒れる。
「通さねえ!」
自分でも驚く声が出た。
兵たちが続く。
左列が持ち直す。
右列、青い影が滑った。
ルー・シャウだった。
敵の懐へ潜り込み、喉元へ刃を置く。
「遅いわね」
一閃。
敵が崩れる。
その横では、双剣が踊っていた。
フィオ・グランネル。
二本の刃が交差するたび、敵の武器だけが宙を舞う。
「怖い顔は似合いませんよ」
笑ったまま、蹴り飛ばす。
「戦いは、少し優雅に」
「うるせえ!」
敵兵の怒声ごと、次の一撃で沈めた。
リシェルが駆ける。
傷兵へ光が走る。
「まだ立てます!」
兵士が叫ぶ。
立ち上がる。
また槍を握る。
戦場に声が戻る。
その時。
ケッヒル隊長が、中央へ進んだ。
剣を低く構える。
「前へ」
たった二文字。
それだけで、兵列が伸びる。
誰も迷わない。
この人の背中が、道そのものだった。
だが。
黒外套の男は、まだ笑っていた。
「良い」
「だが、遅い」
その背後。
開いた門の奥。
暗い回廊から、新たな黒装束たちが現れる。
十。
二十。
三十――
まだいる。
兵たちの顔色が変わる。
グリードが舌打ちする。
「ふざけんな……」
レオンの目が細くなる。
「増援か」
カイゼルだけが、前を見ていた。
剣を肩に乗せる。
「……ちょうどいい」
初めてだった。
カイゼルが。
笑ったのは。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク
・評価(☆☆☆☆☆)
・感想
などいただけるととても励みになります!
今後も更新していくので、よろしくお願いします!




