変調
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ギィンッ――!!
火花が散る。
シンの剣と、黒外套の刃が噛み合っていた。
石畳にひびが走る。
押し合っている。
だが。
わずかに。
シンが下がる。
「……っ」
初めて、あいつの足が乱れた。
黒外套の男は笑っている。
「良い」
「だが、まだ浅い」
弾く。
シンの身体が半歩流れる。
そこへ、追撃。
速い。
ギィンッ!!
横から割って入ったのは、ケッヒル隊長だった。
低く、鋭い一閃。
黒外套の男が初めて距離を取る。
「ほう」
笑みが深くなる。
「ようやく本物か」
隊長は答えない。
ただ、前へ出る。
その背中だけで、兵たちが息を吹き返した。
「押し返せ!!」
叫びが上がる。
右列が前へ出る。
中央も続く。
だが。
その時だった。
――ゴォンッ!!
――ゴォンッ!!
――ゴォンッ!!
鐘が、三度鳴った。
さっきまでとは違う。
短く、鋭く、続けざまに。
兵たちの顔色が変わる。
レオンの目が細まる。
「……第二警報か」
グリードが吐き捨てる。
「なんだそりゃ」
「内門だけではない」
レオンの声は低い。
「さらに奥で、何か起きた」
嫌な汗が背中を伝う。
まだ、あるのかよ。
その隙を、敵は逃さない。
左右の黒装束が一斉に入る。
兵列が乱れる。
一人、倒れる。
二人、崩れる。
「中央、下がるな!」
レオンが叫ぶ。
その横で、グリードが受ける。
重い一撃。
膝が沈む。
「っ、ぐ……!」
リシェルが治癒へ走る。
そこへ敵が抜ける。
「危ねえ!」
踏み込む。
間に合わない。
敵の刃が、リシェルへ伸びる。
ギィンッ!!
シンの剣が割って入る。
だが。
そのシンの背へ、黒外套が迫る。
「シン!!」
ケッヒル隊長が動く。
敵二人が足止めに入る。
隊長でも、一瞬止まる。
黒外套の剣が振り下ろされる。
間に合わない。
誰もがそう思った。
その瞬間。
――ドォン。
低い音がした。
剣戟ではない。
もっと重い。
建物の奥。
石壁の向こう。
全員の動きが、わずかに止まる。
黒外套の男だけが、眉を動かした。
もう一度。
――ドォン。
今度は近い。
床の砂が跳ねる。
兵たちが顔を見合わせる。
「……何だ?」
誰かが呟く。
三度目。
――ドォンッ!!
内門の巨大な扉が、軋んだ。
敵も、味方も、振り向く。
黒外套の笑みが消えていた。
シンが剣を下げずに目だけ向ける。
ケッヒル隊長の視線が細くなる。
誰も、まだ見えていない。
だが。
何かが来る。
それだけは、わかった。
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