格上
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
押し上がった前線が、止まる。
「……は?」
さっきまで押していた兵が、弾かれる。
一人。
前に出てきた。
重装でもない。
大柄でもない。
黒い外套。
細い剣。
ただ、立っているだけなのに。
空気が、違う。
「下がれ!」
レオンの声。
兵が引く。
遅い。
スッ――
見えなかった。
次の瞬間。
三人、同時に崩れる。
「……なんだよ、それ」
グリードが顔をしかめる。
初めてだ。
「格上だな」
レオンが短く言う。
その声も、低い。
シンが前に出る。
無言。
黒外套の男を見る。
「知ってる顔か?」
思わず出る。
シンは答えない。
ただ。
剣を構える。
ルー・シャウが舌打ちする。
「最悪ね」
フィオの笑みが消える。
「来るとは思いませんでした」
……誰だよ。
聞く前に、動いた。
黒外套。
速い。
いや。
速さじゃない。
無駄がない。
ギィンッ!!
シンが受ける。
初めて。
シンが、押された。
「……マジか」
地面が裂ける。
ルー・シャウが横から入る。
斬る。
浅い。
流される。
フィオの双剣。
二連。
三連。
全部、届かない。
「冗談だろ」
グリードが笑う。
乾いた笑いだ。
「おい、エイゼン」
レオンが言う。
目は前。
「見ろ」
短い。
「……何を」
「全部だ」
無茶言うな。
でも。
見る。
足運び。
呼吸。
目線。
力の入る瞬間。
剣先の沈み。
「……っ」
わかるか、こんなの。
黒外套がシンを崩す。
そこへ。
俺が入る。
踏み込む。
ズラす。
「――フィネア!!」
ザンッ――!!
弾かれる。
軽く。
終わりかける。
その瞬間。
見えた。
右足。
ほんのわずか。
踏み直した。
「……そこか」
口から漏れる。
もう一度、踏み込む。
今度は深く行かない。
浅く。
触れるだけ。
ギィンッ。
反応した。
やっぱりだ。
「シン!!」
初めて叫ぶ。
シンが動く。
同時。
俺が外から崩す。
シンが正面から割る。
ドォンッ!!
初めて。
黒外套が、一歩下がった。
空気が変わる。
「……おいおい」
グリードが笑う。
「やれるじゃねえか」
レオンの口元が、わずかに上がる。
「見えたな」
短い。
……ああ。
全部じゃない。
でも。
一つは、見えた。
黒外套が初めて、こっちを見る。
「面白い」
低い声。
初めて喋った。
背筋が、冷える。
その時。
王城側から、鐘が鳴る。
ゴォン――
重い音。
兵の顔色が変わる。
レオンが振り向く。
「……やはりか」
何がだよ。
次の瞬間。
伝令が駆け込んでくる。
「報告!!」
「敵、本隊――王城内門へ!!」
空気が凍る。
黒外套が笑う。
「遅い」
レオンが剣を返す。
「全員、走るぞ」
シンがもう動いている。
「……はぁ」
息を吐く。
めんどくせえ。
でも。
止まれない。
足を踏み出す。
次は、城の中だ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク
・評価(☆☆☆☆☆)
・感想
などいただけるととても励みになります!
今後も更新していくので、よろしくお願いします!




