届かない
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「――次」
名前が呼ばれる。
「レオン・ヴァルハルト」
ざわっ――
空気が揺れる。
「来たな」
グリードが低く言う。
「……ああ」
俺も目を離さない。
レオンが前に出る。
迷いがない。
いつも通り。
ブレてない。
「対――」
東の剣士。
シンじゃない。
でも。
“同じ側”のやつ。
「……」
静かだ。
会場全体が。
さっきのカイゼルの試合の余韻。
まだ残ってる。
「始め」
――速い。
レオンが踏み込む。
先手。
迷いなし。
カンッ!!
重い音。
ぶつかる。
互角。
いや。
「……押してる」
グリードが言う。
その通り。
レオンの剣。
強い。
正確。
無駄がない。
東の剣士を、押してる。
「いける……!」
思わず呟く。
このまま――
「……いや」
違う。
次の瞬間。
ズレる。
ほんの少し。
レオンの剣が。
「っ!?」
カンッ!!
弾かれる。
体勢が崩れる。
「……なに?」
おかしい。
さっきまで押してたのに。
「……合わせられてる」
レオンの動き。
読まれてる。
いや。
“固定されてる”
「……っ」
レオンも気づいたはずだ。
でも。
止まらない。
止まれない。
踏み込む。
カンッ!!
受けられる。
返される。
速い。
「くっ……!」
初めて、声が漏れる。
レオンから。
「……」
静かに。
確実に。
削られてる。
「……やばい」
グリードが呟く。
俺も同じだ。
嫌な感じがする。
「っ!」
レオンが踏み込む。
強引に崩しに行く。
その瞬間。
スッ――
入られる。
最短で。
「……っ!!」
カンッ!!
弾く。
でも。
遅い。
一瞬。
足が止まる。
そこに。
「――」
入る。
止まる。
首元。
終わり。
「……そこまで」
静かに告げられる。
……負けた。
「……」
レオンが動かない。
そのまま。
数秒。
「……はぁ」
ゆっくり息を吐く。
剣を下ろす。
「完敗だ」
あっさり。
でも。
悔しさは隠せてない。
「……」
戻ってくる。
こっちへ。
「……どうでした」
思わず聞く。
レオンが止まる。
少しだけ考える。
「……強い」
それだけ。
「だが」
一瞬だけ、目が鋭くなる。
「届かないわけじゃない」
……は?
「どこがっすか」
思わず出る。
「……」
レオンが、俺を見る。
まっすぐ。
「お前なら」
それだけ言う。
は?
「いやいやいや」
思わず笑う。
「無理っすよ」
「そうか?」
グリードが横から言う。
「さっきの、お前ならもう少しやれただろ」
……やめろ。
そういうの。
「……」
言葉が出ない。
でも。
頭の中で。
さっきの動きが、再生される。
レオンの剣。
崩された瞬間。
あれは。
「……変わらなかったからか」
ぽつりと出る。
「……」
レオンが、わずかに頷く。
「固定される」
「だから、合わせられる」
……またそれか。
リシェルの言葉。
重なる。
「……っ」
手を握る。
強く。
悔しい。
でも。
それだけじゃない。
「……やれる」
小さく呟く。
根拠はない。
でも。
さっきより。
少しだけ。
見えてる。
「次、呼ばれるぞ」
グリードが言う。
「ああ」
立つ。
足は、止まってない。
むしろ。
さっきより。
前に出てる。
「……行くか」
静かに言う。
今度は。
軽口じゃない。
本気で。
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