格
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「――次」
名前が呼ばれる。
「カイゼル・ラント」
ざわっ――
空気が変わる。
さっきまでの試合とは、明らかに違う。
「……来たな」
グリードが呟く。
「見とけ」
レオン。
短い言葉。
でも、重い。
「対――シン・ルォ」
……来た。
完全に。
「……マジかよ」
思わず出る。
本命同士。
会場の空気が、一段落ちる。
音が消える。
「始め」
――動かない。
またか。
でも。
前と違う。
“重い”
空気そのものが、押し潰してくる。
「……」
見てるだけで、息が詰まる。
「……来るぞ」
レオンの声。
次の瞬間。
消えた。
カンッ!!!
音。
遅れて来る。
速すぎる。
「……っ」
目で追えない。
なのに。
何かがぶつかってるのはわかる。
カンッ!!
カンッ!!
連続。
でも。
荒れてない。
整いすぎてる。
「なんだよ、これ……」
グリードが呟く。
同じだ。
俺もそう思う。
戦ってるのに。
“乱れてない”
「……」
シン。
表情が変わらない。
でも。
ほんのわずか。
動きが速くなる。
一段。
上がる。
その瞬間。
「……っ」
空気が裂ける。
カイゼル。
一歩、踏み込む。
スッ――
無駄がない。
そのまま。
最短で。
「……」
止まる。
剣。
シンの首元。
終わり。
「……そこまで」
静かに告げられる。
ざわっ――!!
遅れて、会場が揺れる。
「嘘だろ……」
グリード。
「……いや」
レオン。
「当然だ」
……当然?
「今の、見えたか」
グリードが聞く。
「見えてねえよ」
即答。
でも。
一つだけ、わかる。
「……無駄がなさすぎる」
ぽつりと出る。
レオンが、少しだけ頷く。
「完成度が違う」
そのとき。
シンが立ち上がる。
何も言わない。
ただ。
カイゼルを見る。
「……」
ほんの一瞬。
目が交差する。
言葉はない。
でも。
わかる。
“まだ終わってない”
「……」
カイゼルは動かない。
ただ、静かに構えを解く。
余裕。
それだけが、残る。
「……なんだよ、あれ」
グリードが吐き出す。
「人間か?」
「人間っすよ」
たぶん。
でも。
「……同じじゃない」
小さく呟く。
あそこには。
まだ届かない。
全然。
「……」
手を見る。
さっき勝ったばかりなのに。
もう、遠い。
「……はぁ」
息を吐く。
でも。
目は離さない。
あれを見た。
見ちまった。
「……行くしかねえな」
誰にも聞こえない声で。
呟く。
その言葉だけが。
やけに重かった。
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