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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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崩すということ

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


「……で?」


棒を構えながら、ぼそっと言う。


「どうやって崩すんすか、これ」



朝から呼び出された場所。


いつもの訓練場じゃない。


少し奥まった、静かな場所だ。



目の前には――


ケッヒル隊長。



「振れ」



はい出た。


「いや、だからそれじゃ昨日と同じ――」



「いいから振れ」



……はぁ。


これ、リシェルのやつ、絶対話したな。



振る。


スッ――


いつも通り。


無駄なく。


綺麗に。



「止めろ」



ピタッ。


「……ほら」


思わず言う。


「これ、崩れてないでしょ」



「当然だ」


即答。


「お前は“そう振る”ように出来上がっている」



「……リシェルから聞いた」


「壊せ、と言われたんだろう」



「……はい」


……やっぱりかよ。


あいつ、ほんと余計なことを。



でも――


リシェルの言葉が、頭に残る。




“壊せる人だけが変われる”




「ならやることは一つだ」



来たよ。



「崩せ」



「だからそれをどうやって――」



「適当に振れ」



……は?



「力任せでもいい。雑でもいい。形を捨てろ」



いやいやいや。


それ一番やりたくないやつなんだけど。



「……マジで?」



「マジだ」



うわぁ。


一番気持ち悪いやつ来た。



「……はぁ」


仕方ねえ。



振る。


ガッ――


……なんだこれ。



めちゃくちゃやりにくい。



「気持ち悪っ」


思わず口に出る。



「もう一度」



「いや今の見ました?」



「見た」



「クソみたいな動きでしたよね」



「そうだな」



ですよね。



「続けろ」



鬼かよ。



もう一回。


ガンッ――


軌道がブレる。


手応えもない。



「……なんだこれ」



いつもの感覚がない。


あの“通る感じ”が。


全部、ズレてる。



「おい」


隊長の声。


「今、何を考えた」



「変にならないようにって」



「だろうな」


即バレ。



「それをやめろ」



「無理っすよ」



「気持ち悪いんすよ、これ」



「だからいい」



は?



「お前は“正しく振る”ことに慣れすぎている」


「だから外れろ」


「崩れろ」



雑すぎるだろ。



そのとき。



遠くで鐘が鳴った。


カン――……カン――……



いつもの合図じゃない。


少し重い音。



「……なんすか、これ」



「訓練中断の合図だ」



え?


「珍しいんすか」



「最近はな」



……最近は?


ざわ、と空気が変わる。


奥の方で、教官たちが動き始めている。


見習いじゃない。


もっと上の連中だ。



「……なんかあったんすか」



「さあな」


そう言いながらも、隊長の目は少し鋭い。



「他国の動きが、少し騒がしい」


ぽつりと。



「……他国?」



「東の連中だ」



ああ。


なんか聞いたことあるな。


詳しくは知らないけど。



「お前には関係ない」


「今はな」



……今は、ね。


その言い方、やめてほしい。


絶対そのうち関係あるやつじゃん。



「集中しろ」



「はいはい」



でも。


少しだけ、頭の片隅に残る。


“他国”


“動き”


……めんどくさい匂いしかしねえ。



「振れ」



「……はい」



もう一回。


ガッ――


ズレる。


弱い。


遅い。



「っ……!」



思わず歯を食いしばる。



イライラする。


できてたことができない。


それが一番ムカつく。



「おい」



横から声。


グリード。



「何やってんだそれ」



「見りゃわかるでしょ」



「わかんねえよ」



「崩してんの」



「……は?」


そりゃそういう顔するよな。



「隊長命令」



「マジかよ」



「最悪」



「だろうな」


笑ってやがる。



「お前、昨日まで調子乗ってた顔してたのに」



「乗ってねえよ」



「乗ってたろ」



……まあ、ちょっとは。



「でもよ」



グリードが少しだけ真面目になる。


「それ、やるってことは」


「あいつとやる気なんだろ」



視線の先。


カイゼル。


離れた場所で、別のやつと組手してる。



……やっぱり目がいく。



「……まあ」



否定はしない。


したくない。



「ならいいじゃねえか」



軽く言うなよ。



「こっちもやるぞ」



「は?」



振り向くと。


レオン。


いつの間にか来ていた。



「崩した状態で、受けてみろ」



「いや無理っす」


即答。



「無理かどうかは関係ない」



「やる」



このタイプほんと嫌いだわ。


でも。



「……はぁ」


逃げられない。



「軽くでいい」


レオンが構える。


その時点で軽くないんだよな。



「来るぞ」



速い。


……でも。


さっきと違う。


見えるのに、体がついていかない。



「っ!」



カンッ!!


弾かれる。


バランスが崩れる。



「ほらな」


レオンの声。


「それが今のお前だ」



……くそ。


何も言い返せねえ。



「もう一度だ」



やめろ。


ほんとやめろ。



でも。



体は動く。


ガンッ――


ズレる。


崩れる。



「……あ?」



ほんの一瞬。


さっきより。


“ズレ方が違う”



「今の」


ぽつりと漏れる。



「感じたか」


ケッヒル隊長。



「……ちょっとだけ」


ほんの少し。


形じゃない動き。



次は。


ガンッ――


戻る。



「……ダメだ」



「当たり前だ」


即答。



「一日でできるなら苦労はない」



……それもそうか。



「続けろ」



はいはい。


でも。


さっきのあれ。


消えてない。


どこかにある。



「……めんどくせえけど」


ぼそっと呟く。



それでも。


「やるしかねえか」



もう一度、棒を振る。


今度は。


少しだけ。


“ズラす”ことを意識して。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、


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今後も更新していくので、よろしくお願いします!

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