ほんの一瞬だけ
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少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
「……はぁ」
腕が重い。
何回振ったかわからない。
崩す。
雑に振る。
また崩れる。
……できねえ。
「おい、止まるな」
ケッヒル隊長。
「やってますよ」
「口が動いている」
うるせえな。
もう一回。
ガンッ――
ズレる。
弱い。
遅い。
「……クソ」
思わず吐き捨てる。
これ、何が正解なんだよ。
「考えるな」
「考えないと無理でしょ」
「だから崩れない」
……はいはい。
その理屈はもう聞いた。
でもな。
考えないと、何もできねえだろ。
そのとき。
ふと。
頭に浮かぶ。
――“壊せる人だけが変われる”
「……あーもう」
ほんと余計なこと言いやがって。
でも。
「……ちょっとだけ」
力を抜く。
ちゃんと振らなくていい。
綺麗じゃなくていい。
当たらなくてもいい。
――崩す。
振る。
スッ――
……あ?
さっきより。
軽い。
「もう一回」
ガンッ――
ズレる。
でも。
「……なんか違う」
手応えがある。
弱いけど。
今までと違う。
「……おい」
グリード。
「それ、さっきよりマシじゃねえか?」
「マシってなんだよ」
「なんつーか、動いてる」
動いてる?
「前は固かった」
「今は、なんか……気持ち悪い」
褒めてんのかそれ。
でも。
「……まあ、そんな感じっす」
自分でもそう思う。
「来い」
レオン。
またかよ。
「今の状態でやる」
「いや無理っす」
「やる」
はい強制。
「軽くでいい」
それ、絶対軽くないやつだろ。
「来るぞ」
速い。
相変わらず。
でも。
――見える。
問題は。
動けるかどうか。
来る。
右。
「っ……!」
スッ――
避ける。
ギリギリ。
「……!」
レオンの目が一瞬動く。
そのまま。
振る。
ガンッ!!
当たった。
浅いけど。
確かに当たった。
「……今の」
思わず呟く。
「もう一度だ」
やめろって。
でも。
もう一回。
来る。
今度は左。
「……っ!」
スッ――
避ける。
振る。
ガンッ!!
今度は――
止められる。
「甘い」
レオンの声。
弾かれる。
体勢が崩れる。
ドンッ!!
地面。
「……っは」
息が漏れる。
でも。
さっきとは違う。
「……今の」
もう一回、呟く。
「一瞬だったな」
レオン。
「だが」
少しだけ、間を置く。
「悪くない」
……珍しいな。
「だろ?」
グリードが笑う。
「動いてた」
「……まあ」
否定はしない。
したくない。
「だが続かない」
レオン。
「それが今のお前だ」
はいはい。
わかってますよ。
「……でも」
立ち上がる。
さっきの感覚。
消えてない。
どこかにある。
「……いける気はする」
ぽつりと出る。
ケッヒル隊長が、少しだけ笑った。
「それでいい」
「今はな」
……今は、ね。
その言い方ほんとやめてほしい。
でも。
さっきより。
少しだけ。
「……面白くなってきた」
棒を構える。
もう一回。
今度は。
ほんの少しだけ。
“ズラす”ことを意識して。
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