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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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消された場所

お読みいただきありがとうございます!


第二部の北部編に入りましたが、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

俺たちは。


顔を見合わせる。



そして。


誰からともなく。


その足跡の先へ。


歩き始めた。



小さな足跡は。


森の奥へ。


迷いなく。


続いている。



カラン。



遠くで。


鈴が鳴った。



姿は。


見えない。


それでも。


足跡だけは。


途切れない。



森の中は。


不気味なくらい静かだった。


風が。


枝を揺らす音だけが。


耳に残る。



しばらく歩くと。


木々の間から。


光が差した。


森が。


ゆっくり開ける。



俺たちは。


足を止めた。



そこには。


崩れた石垣があった。



折れた柱。


苔むした石畳。


建物だったものが。


長い年月をかけて。


森へ飲み込まれている。



「遺跡……?」


リシェルが。


小さく呟く。



クレイスは。


黙ったまま。


ゆっくりと中へ入る。



俺たちも続いた。



小さな足跡は。


石畳を横切り。


広場の中央で。


消えていた。



その先には。


一枚の石碑。


半分ほど。


苔に覆われている。



クレイスが。


しゃがみ込む。


指先で。


静かに苔を払う。



古い文字。


ほとんど読めない。



だが。


上の方に。


見覚えのある印があった。



槌。


坑道。


山。



「……採掘区の印だ」


思わず。


口をついて出る。



クレイスが。


こちらを見る。


「分かるのですか?」



「ああ」


石碑へ近づく。


胸の奥が。


ざわついていた。


「坑道の入口に」


「同じ印があった」



「第五採掘区にも?」



「ああ……」


答えながら。


違和感が走る。



見た。


確かに見た。



でも。


いつ。


どこで。


どうして。



そんな当たり前のことが。


急に曖昧になる。



リシェルが。


小さく呟く。


「どうして」


「第五採掘区の印が」


「こんな場所に……」



クレイスは。


石碑の周囲を見る。



崩れた壁。


折れた柱。


古い石畳。



そして。


削られた文字。



銀のレンズへ。


静かに指を添える。


「第五採掘区に」


「関係する場所だった」


「可能性があります」



少し。


間を置く。



「ですが」


「何のための場所かは」


「まだ分かりません」



俺は。


もう一度。


石碑を見る。



ノルデン外縁。


五。


採掘区の印。



そんなもの。


一つしかない。



「第五採掘区……」


俺の声が。


震えた。



存在しないはずの場所。


十数年前の大火で。


壊滅した場所。


再建も。


再定住も。


記録にはない。



それなのに。


俺は。


そこで育った。



姉貴と。


妹と。


家族と。


暮らしていた。



はずだった。



頭の奥が。


じわりと痛む。



思い出せる。


そう思うたびに。


何かが。


そこだけ。


霧に包まれる。



その時だった。



ズキッ――。



「っ……!」



膝が。


わずかに揺れる。



リシェルが。


すぐに俺を支えた。


「シュトック!」



石碑が。


滲む。


森が。


遠ざかる。



一瞬だけ。


別の景色が見えた。



雪。


燃える建物。


泣いている子ども。


誰かの背中。


黒い外套。


長い剣。



そして。


男の声。



『見るな』


『全部』


『忘れろ』



「……誰だ」


思わず。


声が漏れる。



景色が。


戻った。



リシェルが。


俺の腕を掴んでいる。



クレイスは。


何も言わず。


俺を見ていた。


「今」


「何を見ました?」



息が。


整わない。


それでも。


答える。


「男がいた」



「顔は?」



首を振る。


「見えない」


「でも」


「忘れろって」


「そう言った」



クレイスの表情が。


初めて。


わずかに動く。


銀のレンズの奥で。


何かが。


一つ。


繋がったようだった。



その時。



カラン――。



鈴の音。



三人が。


同時に振り向く。



石碑の向こう。


白い服の子どもが。


立っていた。



今度は。


逃げない。


消えない。



ただ。


じっと。


俺を見つめている。



その小さな手が。


ゆっくりと。


石碑の裏を指さした。



誰も。


言葉を発しなかった。



クレイスだけが。


静かに。


一歩。


前へ踏み出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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