表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/31

届かない一歩

嫌な予感って、当たるんだよな。


ほんとに。


「次」


教官の声が響く。


「カイゼル・ドラクス」


ざわ、と場の空気が揺れた。


あ、やっぱりあいつ名前あるんだ。


いや当たり前か。


「……」


その男――カイゼルが、静かに前に出る。


足音が小さい。

でも、妙に耳に残る。


「エイゼンシュタイン」


……はい来た。


「は?」


普通に声出たわ。


なんでだよ。


なんでいきなりそこ当てるんだよ。


「おい、マジか」

「初日だぞ……」


周りがざわつく。


だよな?

そうだよな?

俺だけじゃないよな?


「……最悪」


思わず漏れる。


横でグリードが低く言った。


「やめとけ」


「やめられるならやめたいっすよ」


「無理だな」


知ってる。


レオンは黙っていた。

でも、目だけはこっちを見てる。


なんだよ。

応援しろとまでは言わないけど、もうちょっと何かないのか。


「前へ」


教官が促す。


足が重い。


いやほんとに。


でも行くしかない。


で、目の前に立って、改めて思う。


近くで見ると余計に嫌だ、こいつ。


威圧感があるわけじゃない。

怒ってるわけでもない。

見下してる感じですらない。


なのに怖い。


「……よろしくっす」


とりあえず言ってみる。


返事はない。


いや、ないんかい。


「始め」


教官の声。


その瞬間――


……来ない。


「……は?」


カイゼルは動かなかった。


ただ立ってる。


剣を下げもしない。

構えもしない。


何それ。


「来い」


一言。


低くて、平らな声。


「お前からだ」


……はあ?


いや、舐めてんのか。


「……上等っすよ」


だったら行く。


こういう時、考えすぎる方がよくない。

たぶん。


踏み込む。


速く。

最短で。

無駄なく。


いつも通りだ。


見える。

入れる。

当たる。


そう思った。


カンッ


軽い音が鳴る。


……軽い?


止まっていた。


俺の剣が。


まるで最初からそこに壁があったみたいに。


「……は?」


押しても、抜けない。

崩れない。

動かない。


なんだこれ。


重いわけじゃない。

強引に受けられたわけでもない。


ただ、そこにある。


それだけで、こっちの一撃が死んでる。


「遅い」


ぞくっとした。


一瞬で、目の前から消えた。


いや、消えたように見えた。


「っ!?」


次の瞬間には、喉元に剣があった。


ぴたり、と。


寸前で止まってる。


「……」


声が出ない。


なに今。


見えなかった。


ほんとに、何も。


「そこまで」


教官の声。


ようやく息ができる。


遅れて、一歩下がる。


心臓がうるさい。

気持ち悪いくらいに。


カイゼルは何も言わず、剣を下ろした。


それだけ。


勝った、みたいな顔もしない。

見下す感じもない。


ただ、当然みたいに終わらせた。


それが余計に腹立つ。


「……なんだよ、それ」


思わず呟く。


見えてたはずだった。


俺の剣は、ちゃんと入ってたはずだった。


なのに。


何一つ、届いてない。


「言っただろ」


横に戻ると、グリードが低く言う。


「別格だ」


「……」


悔しい。


くそほど悔しい。


でも、悔しいって言う前に、まず頭が追いつかない。


「これが上だ」


今度はレオンだった。


静かな声。


でも、刺さる。


「お前の剣は確かに鋭い。だが、まだ“読める剣”だ」


……昨日と同じこと言うんだな、お前。


いや、違うか。


昨日は俺に負けた。

今日は俺が、何もできなかった。


その差を、こいつはちゃんと見てる。


「……っ」


拳を握る。


情けない。

めちゃくちゃ情けない。


さっきまで少しだけ、「いけるかも」なんて思ってた自分ごと殴りたい。


「おい」


グリードが肩を軽くぶつけてくる。


「その顔、嫌いじゃねえぞ」


「うるせえ」


「ははっ」


笑うな。


でも、少しだけ救われる。


「……もう一回」


自然に口から出ていた。


「やる」


自分でも驚くくらい、すぐだった。


怖かったはずなのに。

悔しさの方が勝ってた。


レオンがわずかに目を細める。


「そうでなくては困る」


困るのはこっちだよ。


でも。


そうだな。


困ってるだけじゃ終われない。


姉ちゃんと妹を助ける。

剣士になる。

そのためにここまで来た。


こんなところで、ぽかんとして終わってたまるか。


「……はぁ」


深く息を吐く。


めんどくさい。


ほんと、めちゃくちゃ面倒だ。


でも。


「やるしかねえか」


小さく呟くと、グリードがまた笑った。


「それでいい」


その向こうで、カイゼルはもう次の相手と向き合っていた。


こっちなんて、まるで眼中にないみたいに。


……ああ、くそ。


ああいうの、一番むかつく。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、


・ブックマーク

・評価(☆☆☆☆☆)

・感想


などいただけるととても励みになります!


今後も更新していくので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ