小さな足跡
お読みいただきありがとうございます!
第二部の北部編に入りましたが、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
森は。
再び。
静けさを取り戻していた。
「……聞こえました」
リシェルが。
小さく呟く。
「でも」
「どこからだったのか……」
クレイスは。
森の奥を見つめたまま。
動かない。
やがて。
静かに口を開く。
「追いません」
俺は。
思わず。
クレイスを見る。
「追わない?」
「はい」
短く。
それだけだった。
「相手が」
「人かどうかも」
「分かりません」
「不用意に」
「森の奥へ入るのは」
「危険です」
確かに。
その通りだった。
だけど。
「もし」
「本当に」
「助けを求めてたら?」
思わず。
口にしていた。
クレイスは。
俺を見る。
「その可能性もあります」
「ですが」
「私たちが」
「全員」
「帰れなくなっては」
「意味がありません」
返す言葉が。
なかった。
リシェルも。
静かに俯く。
誰かを。
助けたい。
でも。
飛び込めば。
自分たちも。
消えるかもしれない。
重い空気が。
三人を包む。
その時。
リシェルが。
小さく声を上げた。
「これ……」
俺とクレイスが。
振り向く。
リシェルは。
荷馬車の後ろを。
見つめていた。
落ち葉の上。
小さな。
本当に。
小さな。
足跡。
裸足だった。
子どものものだ。
俺は。
しゃがみ込む。
「子ども……?」
リシェルも。
頷く。
「たぶん」
その足跡は。
荷馬車から。
森の奥へ。
真っ直ぐ。
続いていた。
「さっきまで」
「足跡は」
「なかったのに……」
俺は。
思わず。
息を呑む。
クレイスも。
初めて。
目を見開いた。
静かに。
足跡を見つめる。
そして。
小さく。
呟く。
「……現れた?」
風が吹く。
落ち葉が。
舞い上がる。
だが。
小さな足跡だけは。
消えなかった。
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