北部
お読みいただきありがとうございます!
第二部の北部編に入りましたが、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
昼過ぎ。
荷馬車は。
緩やかな坂を。
進んでいた。
レオンが。
前を見据える。
「見えてきた」
俺も。
顔を上げる。
坂の向こう。
一本の石碑が。
立っていた。
その横には。
古びた木の柵。
風に揺れる。
旗。
クレイスが。
静かに口を開く。
「ここから先が」
「北部です」
荷馬車は。
そのまま。
石碑の前を通り過ぎる。
気づけば。
景色が。
少し変わっていた。
広がっていた麦畑は。
いつの間にか。
姿を消している。
背の高い針葉樹が。
街道の両側へ。
続いていた。
吹き抜ける風も。
王都とは。
まるで違う。
冷たい。
グリードが。
腕をさする。
「急に」
「寒くなったな」
ルーが。
空を見上げる。
「空の色も」
「違うわね」
ヴェルナも。
頷いた。
「なんだか」
「静か……」
確かに。
静かだった。
鳥の声も。
人の気配も。
ほとんどない。
俺は。
思わず。
巡礼路を思い出す。
あの時も。
静けさの先で。
全てが。
始まった。
「エイゼンシュタイン」
クレイスだった。
「どうしました」
「いや」
「何でもない」
そう答える。
だが。
胸の奥に。
小さな違和感だけが。
残っていた。
荷馬車は。
止まることなく。
北部の大地へ。
静かに。
踏み込んでいった。
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