帰る場所
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フィナは。
まだ。
俺の服を離さなかった。
「フィナ」
俺は。
少し困ったように笑う。
「もう」
「大丈夫だ」
フィナは。
何度も。
首を横へ振る。
「違うの」
震える声。
「ずっと」
「分かってたの」
「シュトックなら」
「帰ってくるって」
一度。
言葉を切る。
「でも……」
「会うまでは」
「怖かった」
静かだった。
王都の喧騒だけが。
遠くで聞こえている。
俺は。
そっと。
フィナの頭へ手を置いた。
「ただいま」
フィナは。
泣きながら笑う。
「おかえりなさい」
その一言で。
胸の奥に残っていた。
あの声が。
ふと重なった。
――『おかえり』
俺は。
思わず。
巡礼路の方角を見た。
もう。
見えるはずもない。
「……シュトック?」
リシェルが。
不思議そうに俺を見る。
「いや」
「何でもない」
俺は。
小さく首を振った。
その時だった。
「フィナ」
静かな声。
フィナの肩へ。
そっと手が置かれた。
フィナが。
振り向く。
「お姉様……」
セレーナだった。
穏やかに。
フィナを見る。
「もう」
「そのくらいにしておきなさい」
フィナは。
少し照れたように。
俺から離れた。
セレーナは。
今度は。
俺へ向き直る。
王女らしく。
静かに一礼した。
「改めまして」
「ご無事で何よりです」
「エイゼンシュタイン殿」
俺も。
頭を下げる。
「ありがとうございます」
セレーナは。
小さく微笑む。
「詳しいお話は」
「後ほど伺います」
その言葉に。
クレイスが。
一歩前へ出た。
「殿下」
「私からも」
「お願いがあります」
「巡礼路で起きたことを」
「皆様へ」
「お話ししたく存じます」
セレーナは。
静かに頷く。
「承知しました」
「城へ参りましょう」
ケッヒルが。
腕を組む。
「ちょうどいい」
「俺も」
「聞いておきたいことがある」
レオンも。
黙って頷いた。
俺たちは。
王城へ向かった。
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