探偵塾始動 1
「ニュースを見て貰ったら分かると思うがやはり抵抗があってね……しかも今の警察は警察であって警察ではない」
東都ハイアットホテルの201号室で待っていた止々呂美修也は翔が訪れると開口一番そう告げた。
「カヤ土建のザイ・カヤとモーリス・チャンの指紋採取とゲソ痕確認の申し入れをしたが人権侵害を理由に拒否されニュースになっている。あの岩尾の前まではそれでも強制捜査に踏み切れていたが……今は許可も下りなければ上からの圧力で採取することすらできない状態にある」
つまり松田貴子の時にも山形優一の時にも不審なザイ・カヤとモーリス・チェンが写っていても証拠として取り調べにすら応じさせることができないということだ。
止々呂美修也は固く両手を組み合わせ
「警察庁長官である岩尾としおが警察を私物化し何者かと繋がってそれに関わる事件を隠蔽するように圧力をかけている」
と言い
「私はそういう人間には警察から退いてもらおうと思っている。そのために君の力を借りたい」
翔は息を呑み込みジッと止々呂美修也を見つめた。
本気なのか? それとも罠か?
三人が向き合う室内で静寂が広がった。
翔は冷静に
「それで? 俺にどうしろ?」
と聞いた。
止々呂美修也は翔を見つめ
「探偵チューバ―サークル。若しくは探偵チューバ―塾を作って君一人ではなく才能あるSNS探偵を誕生させて現場を見守ってもらいたい」
と告げた。
「情けない話だが」
翔は目を細めて
「それって警察の荒探しにもなるかと」
と告げた。
止々呂美修也は笑むと
「もし探偵が間違い警察が正しければ警察はそのまま続行するしそれを証明できる。だが、警察が『業と誤った場合』のセーフティネットに探偵がなる方が現段階では大切だと思っている。それがいつか障害になった時はその時に考えようと思う」
と告げた。
「今は何よりも岩尾によって握りつぶされる事件を一つでも公にして隠蔽を減らすことを優先にしたい」
……警察は私兵ではない。権力者の道具になってはならない。国民や市民を法で守る正義の盾でなければ社会は崩壊する……
「そう考えている警察官は少なくはないが警察は縦社会だ。上の圧に勝てない現実もある」
翔は4年前に唯一『すみません』と言った有明正一の姿を思い出した。彼もその一人だったのだ。だからこそ、隠蔽される翔の父親の事件の手掛かりを彼なりに精一杯用意してくれたのだ。
あの日の隣の家の防犯カメラの映像提供がそれだった。
翔が唯一信頼する警察官であった。
だが、彼は新しい人生を歩み始めている。
今の警察には信頼できる人間がいない。
その警察の人間が自身の組織を悔い手を伸ばそうとしている。
それが本気か、罠か、今はまだ判別できない。
しかし。
翔は止々呂美修也を見つめ
「貴方を信じようと思う。もし貴方が唯の口先だけだったら俺はやっぱり見る目がなかったということになるが」
と苦みを含んだ笑みを浮かべて言い
「山形優一の暗号は羽田空港の1130番のコインロッカーだ」
と告げた。




