運命の接触者 8
止々呂美修也は翔を見ると携帯を出し
「顛末を君に知らせようと思うので互いの連絡先を交換してもらいたい」
と告げた。
翔は警戒したものの目の前で署を動かしたのだ。
「分かりました」
そう答えて連絡先を交換した。
現場からガイシャの山形優一とは別の人物二人の指紋とゲソ痕が室内の床や荒らされた本棚などから採取され、それが松田貴子の事件でも採取された不明指紋であることが判明した。
また、松田貴子のマンションの防犯カメラにもカヤ土建のザイ・カヤとモーリス・チェンが写っており、今回のマンションの防犯カメラにも犯行時刻前後に二人の姿があった。
だが。
防犯カメラに映っていたことを理由に指紋とゲソ痕の協力に行くとカヤ土建の社長であるアル・カヤから依頼を受けたという大間正明が
「防犯カメラに映っていたという理由だけで指紋を採取するのは人権侵害にあたる。まして言葉の通じない海外の人間だからと罪をきせようとしているんではないのか!」
と拒否したのである。
その日の夜には中東京テレビで『警察が不当捜査、外国人排除主義の現れ』と題して偶々マンションに訪れていたという外国人を犯人としてゲソ痕や指紋採取に無理やり応じさせようとしたと流し始めたのである。
翔は自宅のマンションでテレビに映る大間正明を睨み
「とうとう正体を見せたって事か。どちらにしても決定的な証拠が無ければ今回も逃げられてしまう。だが、きっと松田貴子と同様に襲われるだけの何かを手に入れたに違いない。そして、あれだけ荒らされているということはまだ見つかっていない可能性が高い」
と呟いて山形優一の携帯電話の画面を思い出して立ち上がった。
『4むなやや1130』
「犯人は全く違う名前だった。だとすれば……襲われそれでも犯人以外の誰かに伝えたいと思うものは恐らくは何かの証拠」
例えば松田貴子のUSBメモリの中の動画のようなものだ。
翔は自身の携帯を出した。
「彼は携帯にこの文字を入れたまま意識を失った」
そう言って『4むなやや1130』と打ち込むために画面を開いて息を呑み込んだ。
「そうか、あの画面自体がヒントだったのかもしれない」
『4むなやや1130』とメモに打ち込まれ、画面は英数字12キーだ。
12キーは特別な仕様ではない。
だが。
だが。
「むなややは日本語だから本来は『日本語』の12キーだ。だが、あの12キーは『英語』になってた」
翔は英語の文字盤にして入力すると息を呑み込んだ。
『4RJTT1130』
RJTTは羽田空港のICAO4レターコードである。
つまり、犯人の名前ではやはりないということだ。そう考えると犯人以外に気付いた人に受け取ってもらいたいモノ、そして、その場所ということになる。
「羽田空港の1130番……それはきっとコインロッカー番号だ」
そう呟いた瞬間、携帯が着信を知らせる音楽を鳴らした。
『止々呂美修也』
警視庁刑事部捜査一課第三係長の止々呂美修也であった。
翔は固唾を飲み込んで応答ボタンを押すと
「まさか本当に連絡をしてくるとは思いませんでしたよ」
と告げた。
止々呂美修也は翔に
「ニュースを見ただろうか?」
と言い
「君に頼みたいことがある。東都ハイアットホテルへ来てもらいたい」
と告げたのである。
その東都ハイアットホテルには止々呂美修也ともう一人島本蓮司が待っていたのである。




